1990年後半から抗体医薬品が次々と認可され、これら認可された多くの抗体医薬は新しい医療として定着しつつある。しかし、現行の抗体医薬の臨床効果は必ずしも充分なものではなく、また、投与量が多いため薬剤費が高いといった課題が残されている。医薬として開発されている抗体のほとんどは分子量約150kDaのヒトIgG1であり、そのFc領域に2本の
N-グリコシド結合複合型糖鎖が結合する糖タンパク質である。Fc領域はFc受容体や補体などが結合する領域であり、この部分を通じて抗体依存性細胞傷害活性 (antibody-dependent cellular cytotoxicity; ADCC) や補体依存性細胞傷害活性 (complement-dependent cytotoxicity; CDC) といったエフェクター活性が発揮される。最近の抗体医薬の臨床成績では、乳癌、大腸癌、血液癌といった多くのヒト悪性腫瘍において、延命や病態悪化に至るまでの期間延長といった効果が観察されている (1-4)。また、癌患者Fc受容体の多型解析から、非ホジキンリンパ腫治療薬抗CD20抗体 Rituxan
R (リツキシマブ) や乳癌治療薬抗Her2抗体 Herceptin
R (トラスツズマブ) の主たる抗腫瘍メカニズムの一つはADCC活性であることが明らかにされ (5-9)、医薬開発に応用可能なADCC活性増強技術の開発が次世代抗体技術として注目されている。我々は、抗体のFc領域に結合しているN-グリコシド結合複合型糖鎖からフコースを除去することでFc受容体IIIaに対する親和性を向上させADCC活性を大幅に高められることを見出し (10-17)、このフコース修飾を制御する技術を開発した (18、19)。現在、次世代抗体医薬の開発のため、Potelligent
TM と名付けたこの技術の応用を精力的に開始している。
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