Trends in Glycoscience and Glycotechnology
Online ISSN : 1883-2113
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ISSN-L : 0915-7352
20 巻, 111 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
ミニレビュー
  • Mitsuaki Yanagida, Kazuhisa Iwabuchi
    2008 年 20 巻 111 号 p. 1-15
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/03
    ジャーナル フリー
    生体膜マイクロドメイン(リピドラフト)はコレステロールとスフィンゴ糖脂質に富む膜上の微小領域で,細胞の内外をつなぐさまざまな細胞反応に関与している。我々はラクトシルセラミドの集積する細胞膜マイクロドメインに焦点を当て,好中球の機能を研究している。好中球の生体膜マイクロドメインは貪食などの機能に関与することが知られているが,その分子メカニズムはまだ十分には明らかにされていない。この総説では生体膜マイクロドメインが機能する際の分子メカニズムを明らかにするために,その構成タンパク質を網羅的に調べる戦略について概説する。
  • Yoshiaki Miura, Shin-Ichiro Nishimura
    2008 年 20 巻 111 号 p. 17-27
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/03
    ジャーナル フリー
    発生,分化,老化,病態等の様々な生命現象に伴い糖鎖の構造や発現量に変動が見られることが知られている。遺伝子やタンパク質の発現を網羅的に解析するトランスクリプトームやプロテオミクスの技術がある程度規格化され,診断や治療への応用研究が加速しているのに対し,糖鎖の定性・定量的な発現動態(グライコミクス)を同等のスループットで解析する手法は確立すらされていない。糖鎖研究はポストゲノムの重要な課題の一つとして各国で多くの糖鎖関連プロジェクトが推進され,糖鎖の構造解析技術は質量分析を中心に着実に進展しているものの,生体試料から微量の糖鎖を高速・高収率かつ高精度に精製するサンプル調製における優れた戦略が欠落しているのが現状で,血清や組織等の臨床試料を用いて大規模グライコミクスを推進する大きな限界となっている。
    糖鎖の機能を解明し,診断や治療に展開していくためには,規格化された糖鎖の定性的・定量的プロファイル取得法の開発が最重要課題である。近年,glycoblotting 法と呼ばれるケモセレクティブな糖鎖捕捉反応に基づいて,生体試料由来糖鎖の網羅的かつ定量的なプロファイル取得を大幅に高速化する技術が開発された。本法では血清等の生体試料を,自動化可能な工程により多検体処理することが可能で,かつ分析手法にふさわしい糖鎖の修飾・標識さえもが一連の流れのなかで達成される。BlotGlyco ビーズの利用と glycoblotting 法の組み合わせによる革新的な糖鎖試料調製と糖鎖プロファイル解析は,糖鎖生物学のみならず糖鎖バイオマーカー・糖鎖関連創薬への大きな貢献が期待される。
  • Yu-ki Matsuno, Keita Yamada, Kazuaki Kakehi
    2008 年 20 巻 111 号 p. 29-50
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/03
    ジャーナル フリー
    グライコミクスにおける方法論の確立や,糖タンパク質ならびに疾患関連糖鎖バイオマーカーの探索では,タンパク質の糖鎖修飾を迅速かつ高感度に解析できる技術が要求される。我々は,還元末端を保持した O-結合型糖鎖をコアタンパク質から高速に遊離させる装置,AutoGlycoCutter (AGC) の開発を行った(Matsuno et al., Anal. Biochem., 362, 2007, 245-257. Yamada et al., Anal. Biochem., 371, 2007, 52-61)。本総説では,AGC を用いるムチン型糖鎖やプロテオグリカン型糖鎖の解析例を紹介しながら,本法の性能と有用性を紹介する。さらに AGC を応用した最近の研究成果として,培養癌細胞株中のムチン型糖鎖プロファイルの比較解析や,AGC と MS スポッターの連結による分析の高スループット化についても報告する。
  • Sadanori Sekiya, Tetsuo Iida
    2008 年 20 巻 111 号 p. 51-65
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/03
    ジャーナル フリー
    近年の質量分析装置の著しい性能向上によって,プロテオーム解析が飛躍的に進展するとともに質量分析の糖鎖解析への応用も進んだ結果,質量分析は糖鎖解析の主要な分析法になった。しかしながら,質量分析装置の操作性の向上によって多くの研究者が質量分析装置を気軽に扱えるようになったものの,糖鎖解析において質量分析はまだ発展途上の段階であり,解析を行うにあたっては質量分析装置の原理を理解するとともに,得られたマススペクトルを正しく理解することが重要となる。本稿では,実例および留意点等を示しながら MALDI および ESI 質量分析による糖鎖解析について解説する。
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