Notch シグナルは広く細胞の運命決定を制御している。このシグナル経路における新規因子の同定を目的とした遺伝学的なスクリーニングにおいて,我々は温度感受性の新規遺伝子
rumi を発見した。28-30℃ において,
rumi 変異体は調べたすべての組織において本格的な
Notch 表現型を示したが,18℃ においては穏やかな
Notch 表現型が見られた。
rumiに変異をもつ細胞において Notch 蛋白質は,細胞内,および細胞外に蓄積し,Delta に対して野生型と同程度に結合したものの,プロセシングの異常を示した。Rumi は高度に保存された CAP10 ドメインを持つ,小胞体蛋白質であった。Rumi は Notch 蛋白質の細胞外部位の EGF ドメイン中のコンセンサス配列(C
1-X-S-X-P-C
2)のセリン残基に
O-結合型のグルコースを付加する蛋白質グルコース転移酵素であることが判明した。我々の研究により,Rumi は,小胞体において Notch 蛋白質にグルコースを付加することにより,そのフォールディングおよびトラフィッキングを全うなものとし,細胞表面における Notch シグナル伝達を制御していることが明らかとなった。本稿では,Hugo Bellen 博士のグループとの共同研究を通じて,どのように Rumi が発見されたかを紹介すると共に,Notch 蛋白質上の
O-結合型糖鎖修飾の機能的な重要性について論じたい(1)。
抄録全体を表示