Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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21 巻, 119 号
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ミニレビュー
  • Harry Schachter
    2009 年 21 巻 119 号 p. 131-148
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/20
    ジャーナル フリー
    線虫には約 150 種類の N 型糖鎖の存在が判明している。本稿では,無脊椎動物に多く存在し,脊椎動物にないパウチマンノース型 N-グリカンの合成と機能について考察する。線虫の糖鎖はフコシル化とホスフォリルコリン付加により,多様性を呈しており,ホスフォリルコリンは多くの病原菌において抗原決定基として知られている。パウチマンノース型 N-グリカンの合成には,UDP-GlcNAc:α3-D-マンノシド β1,2-N-アセチルグルコサミン転移酵素(GnTI, Mgat1 遺伝子によってコードされる)反応が先行する。線虫では,GnTI に 3 つのアイソザイム(GLY-12, GLY-13, GLY-14)がある。それぞれのアイソザイムは標的蛋白質が異なっており,線虫の病原菌に対する防御において異なった機能を持つ。線虫における GnTI 標的蛋白質の同定により,無脊椎動物及び脊椎動物の感染防御における GnTI 標的糖蛋白質の機能が明らかになるものと期待される。
  • Shuhei Yamada, Shuji Mizumoto, Kazuyuki Sugahara
    2009 年 21 巻 119 号 p. 149-162
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/20
    ジャーナル フリー
    コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸が代謝される際の最初の段階では,エンド型の加水分解酵素によって多糖鎖が低分子化を受けると考えられている。しかし,この反応を触媒するコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸に特異的なエンド型の糖分解酵素はこれまでに見つかっておらず,ヒアルロン酸分解酵素であるヒアルロニダーゼが代わりに作用すると考えられてきた。線虫 Caenorhabditis elegans は多様な基本的生命現象を研究するうえで理想的なモデル生物であり,これまでに線虫を利用して,グリコサミノグリカンの生合成と機能に関する多くの研究が行われてきた。しかし,C. elegans におけるグリコサミノグリカンに関する代謝経路の研究は殆ど行われていない。C. elegans はヒアルロン酸を含まず,硫酸化されていないコンドロイチンを含むため,ヒアルロニダーゼの関与しないコンドロイチン/コンドロイチン硫酸の代謝の研究には理想的である。我々は,C. elegans においてコンドロイチンに特異的なエンド型の加水分解酵素を初めて同定した。この酵素の発見は,哺乳動物においてもコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸に特異的なエンド型の糖分解酵素が存在する可能性を示唆している。
  • Toshihiko Katoh, Hisashi Ashida, Kenji Yamamoto
    2009 年 21 巻 119 号 p. 163-177
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/20
    ジャーナル フリー
    真核生物の細胞質に見られる遊離糖鎖(Free oligosaccharide; FOS)は N 結合型糖鎖の供与体であるドリコール中間体の酵素分解,あるいは小胞体関連分解(ER-associated degradation; ERAD)の過程で peptide:N-glycanaseによる細胞質での糖タンパク質の分解で生じることが近年の研究より分かってきた。FOS は細胞質に局在する endo-β-N-acetylglucosaminidase および α-mannosidase による分解を経て,最終的にリソソームに取り込まれ単糖に分解される。本稿では我々が行ってきた線虫 Caenorhabditis elegansにおける FOS 代謝に関連する酵素あるいは FOS の分析を中心に,FOS の生成と代謝,その生理的意義について概説する。
  • Souhei Mizuguchi, Katsufumi Dejima, Kazuya Nomura
    2009 年 21 巻 119 号 p. 179-191
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/20
    ジャーナル フリー
    硫酸化は生体分子の最も重要な修飾の一つであることが明らかとなり,バクテリアからヒトにいたる様々な生物の生体恒常性の維持や発生,形態形成などで重要な働きをしている。線虫 Caenorhabditis elegansには哺乳類の硫酸化関連遺伝子のほとんどのオーソログが存在しており,単一細胞レベルで硫酸化の働きを研究するための強力な研究手段として最適な生き物である。こうした硫酸化の詳細な解析をハエやマウスなど他のモデル生物で実施することはできない。このミニレビューでは,バイオインフォマティクスで選び出した,硫酸化関連遺伝子と予想される線虫遺伝子をリストアップして,既に私達や他の研究室で実施された遺伝子機能阻害実験(RNAi と遺伝子破壊株の取得による)の結果をまとめることとする。このユニークで優れたモデル生物を使った今後のさらなる研究によって,多細胞生物での硫酸化の重要な役割を批判的に検討する機会が得られると考えられる。
グライコトピック
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