Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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21 巻, 120 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
ミニレビュー
  • Takashi Muramatsu, Hisako Muramatsu
    2009 年 21 巻 120 号 p. 197-206
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/04
    ジャーナル フリー
    胚性幹細胞(ES 細胞)と iPS 細胞は再生医療において重要な役を果たすと期待される。糖鎖がエピトープとなる細胞表面マーカーは,これらの多能性細胞を他の細胞と区別したり,分化の過程を追跡するのに有効である。マウスの ES 細胞のマーカーとして最も確立されているのは SSEA-1 である。SSEA-1 のエピトープは Lewis X,すなわち Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc である。ヒトの ES 細胞のマーカーは SSEA-3, SSEA-4, TRA-1-60 そして TRA-1-81 である。SSEA-3 と SSEA-4 はグロボシリーズの糖脂質上の抗原であり,TRA-1-60 と TRA-1-81 はケラタン硫酸に関連した抗原である。iPS 細胞は同一種の ES 細胞と同じ糖鎖マーカーを発現している。始原生殖細胞由来の多能性細胞である EG 細胞はヒト,マウスいずれでも SSEA-1 を発現している。初期胚細胞の,分岐した高分子量ポリ-N-アセチルラクトサミンであるエンブリオグリカンはマウスの ES 細胞そしてマウスおよびヒトの胚性腫瘍(EC)細胞に発現している。エンブリオグリカンは SSEA-1 など,多くの糖鎖マーカーを担っている。Iβ1,6-N-アセチルグルコサミン転移酵素(IGnT)を欠損した ES 細胞ではエンブリオグリカン合成能が低下し,4C9 抗原が消失するとともに,ラミニンでコートしたプレートへの接着能が低下した。この結果はエンブリオグリカンがインテグリン活性を増強する可能性を示す。
  • Shoko Nishihara
    2009 年 21 巻 120 号 p. 207-218
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/04
    ジャーナル フリー
    細胞表面の糖鎖構造は,発生に従って顕著な変化を示す。多様な糖鎖構造が,胚性幹細胞(ES 細胞)の表面に発現して,ES 細胞の幾つかの特徴を規定している。ある糖鎖構造は,ES 細胞特異的に発現しており,ES 細胞のマーカーとして使われている。また,ヘパラン硫酸など,ES 細胞だけに発現しているわけではないが,ES 細胞で機能している糖鎖構造もある。本稿では,まず,ES 細胞のマーカーとして使われている糖鎖構造について概説する。さらに,ES 細胞で発現している硫酸化糖鎖構造の一つであるヘパラン硫酸を取り上げ,ES 細胞の未分化性と多能性維持への働きについて述べる。
  • Tadashi Suzuki
    2009 年 21 巻 120 号 p. 219-227
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/04
    ジャーナル フリー
    N 型糖鎖の付加(N-glycosylation)は,今や真核細胞にとって最も重要な翻訳後修飾機構の一つとして認識されてきている。実際,糖タンパク質上の N 型糖鎖がタンパク質の可溶性や熱安定性といった物理化学的性質に加え,生理活性や細胞内,あるいは細胞間の輸送に影響を与える例は枚挙に暇がない。最近の糖鎖生物学の急速な発展によって,N 型糖鎖の生合成経路はその殆どが解明されているといってもよいが,一方で N 型糖鎖がどのように代謝されるのか,ということに関してはこの“ポストゲノム”と称される今に至っても不明な点だらけ,といった状態である。本総説では N 型糖鎖の代謝について,これまで分っていること,そして今後明らかにすべき事柄について,私見を交えて概観したい。
グライコデビュー
  • Motohiro Nonaka, Bruce Yong Ma, Toshisuke Kaswasaki
    2009 年 21 巻 120 号 p. 228-236
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/04
    ジャーナル フリー
    樹状細胞上に発現する DC-SIGN (DC-specific intercellular adhesion molecule-3-grabbing nonintegrin) は II 型の膜貫通 C 型レクチンであり,細菌やウイルスなど外来異物表面の糖鎖を認識し,樹状細胞による抗原の取り込み,抗原の提示に関与することが知られている。しかし,これまで DC-SIGN とがんの関連性は明らかにされていない。最近の我々の研究により,DC-SIGN が結腸がん細胞に結合することが示され,結合には結腸がん関連ルイス型糖鎖抗原の関与が示唆された。また,DC-SIGN を介するがん細胞への結合により,樹状細胞からの LPS 刺激による IL-6,IL-10 の分泌が促進され,樹状細胞の成熟およびナイーブ T 細胞の Th1 細胞への分化が抑制されることが明らかとなった。さらに,結腸がん組織において実際に,結腸がん関連ルイス型糖鎖リガンドと DC-SIGN 発現樹状細胞が近接する様子も観察された。これらの結果は,樹状細胞の機能阻害を引き起こすことで,DC-SIGN が腫瘍免疫に対して抑制的に働くことを意味し,がん細胞が免疫監視機構から逃避するメカニズムの一つとなることを示すものである。
  • Yuko Naito
    2009 年 21 巻 120 号 p. 237-246
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/04
    ジャーナル フリー
    糖鎖の最も外側に位置するシアル酸は,その存在位置と陰性荷電に加え,構造が多様性に富むことから,様々な分子による糖鎖認識の標的となる。我々は,活性化 B 細胞および胚中心のマーカーとして,長らく認識エピトープが未知のまま用いられてきたモノクローナル抗体,GL7 が,α2,6 結合のシアル酸を含む糖鎖構造をエピトープとして認識すること,さらにその認識がシアル酸分子種についても特異性を示すことを明らかにした。胚中心は抗体の親和性成熟やクラススイッチが起こる場であり,B 細胞を介した獲得免疫応答にとって欠かすことのできない重要な場である。GL7 エピトープの同定により,マウスの胚中心 B 細胞で,主要シアル酸分子種が N-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)から N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)へと変化すること,そして GL7 がこの活性化依存的なシアル酸分子種の変化を検出していることが明らかとなった。このシアル酸分子種の変化は,胚中心 B 細胞において CD22 の糖鎖リガンドの発現が抑制されることを意味する。さらに,Neu5Gc 欠損マウスの解析から,Neu5Gc が B 細胞の増殖に対し抑制的に働くことが示唆された。
グライコトピックス
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