L-アラビノースは植物細胞の主要な構成糖であり、熱力学的に不安定なフラノース(アラビノフラノース(Ara
f))として存在する。従来、UDP-アラビノピラノース(UDP-Ara
p)が転移するとき、ピラノース型がフラノース型に変換してAra
fが生成すると考えられていた。これを追試するため、UDP-Ara
pを糖供与体としてアラビノオリゴ糖とマングマメ由来ミクロソーム画分を反応させたところ、アラビノピラノースが1つだけ結合したアラビノオリゴ糖が生成し、アラビノフラノースは結合しなかった。そこで、UDP-アラビノフラノース(UDP-Ara
f)を糖供与体として同じ反応を行ったところ、アラビノフラノースが結合したアラビノオリゴ糖が生成した。以上の結果から、アラビノフラノースはUDP-Ara
fから合成されると結論した。次に、UDP-Ara
pをUDP-Ara
fに変換する異性化酵素(UDP-アラビノピラノースムターゼ(UAM))が、植物細胞中に存在すると推測してイネ芽生えからUAMを単離した。さらに、L-アラビノースの機能を検討する目的で、RNAiによりUAM遺伝子の発現を抑制した組換えイネを創出し、野生株と性質を比較した。その結果、組換えイネでは細胞壁中のL-アラビノフラース量が減少し、植物体は矮性になり、不稔性を示した。このことより、L-アラビノースが植物の成長や生殖に必須であることが明らかになった。
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