Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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8 巻, 42 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • Edouard J. Battegay, Regula Thommen, Rok Humar, 浅田 眞弘, 岡 修一
    1996 年 8 巻 42 号 p. 231-251
    発行日: 1996/07/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    血管新生、すなわち既に存在する微小血管から新たな血管を形成する過程は胚発生や創傷治癒、炎症、心臓や末梢血管の虚血性疾患、心筋梗塞、糖尿病性網膜症、そして癌などにおいて重要な機能を果たしている。血小板由来増殖因子 (PDGF) はこれらの過程のほとんどに関与しており、血管網の発達した結合組織の形成を誘導する。
    PDGF-A鎖、-B鎖から成るPDGFのホモあるいはヘテロの二量体と、PDGFレセプターのサブユニット (α型、B型) は、組織の損傷や修復の際には広く発現される。低酸素状態などの血管新生を誘導するような刺激はPDGF-B鎖の発現を促す。PDGFは血管新生を直接制御するような炎症性のあるいは結合組織の細胞を引き寄せ、これによって間接的に血管新生を制御する。また、血管を形成しつつある内皮細胞や微小血管由来の内皮細胞は、β型PDGFレセプターを発現するという特徴ある性質を示し、PDGFはこのような細胞には直接作用する。PDGFを外から投与したり局所的に過剰発現したりすると、血管網の発達した結合組織が形成される。胎盤形成、胚形成、創傷治癒、動脈硬化、癌といった血管新生が関与する過程やその疾患の際には、PDGFとそのレセプターが発現されることからも、血管が形成される際にはPDGFが実際に機能していると考えられる。
    このように、PDGF-BBは血管網の発達した結合組織間質の形成を促す。PDGF-BBに応答した新たな血管の形成は、β型レセプターを発現している内皮細胞に対する直接作用によるものもある。
  • Junichi Shioi, Menelas N. Pangalos, Anfan Wu, Nikolaos K. Robakis, 石原 ...
    1996 年 8 巻 42 号 p. 253-263
    発行日: 1996/07/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    アピカンは分泌型あるいは細胞結合型のコンドロイチン硫酸プロテオグリカンであり、コアタンパク質としてアルツハイマーアミロイド前駆体タンパク質 (APP) を含んでいる。アピカンは脳組織で見いだされ、細胞種や培養条件により培養細胞でも発現する。ラット脳の初代培養細胞では、アピカンは主にアストログリア細胞により発現されている。細胞型のアピカンは、APP全長を含み、細胞表面に見いだされるが、分泌型のアピカンはタンパク質分解酵素により一部切断されたAPPを含んでいる。アピカンの発見に続いて、そのコアタンパク質はAPP遺伝子のエクソン15を欠損したL-APP異性体であることが示された。エクソン14とエクソン16の融合によりグルコサミノグリカン側鎖結合のためのアミノ酸共通配列が生じる。L-APP733の唯一のコンドロイチン硫酸結合位置として、セリン-619が部位特異的突然変異の誘発実験により同定された。L-APPをトランスフェクトされたC6細胞は高いレベルでアピカンを発現するけれども、セリン-619をアラニンに変換したL-APPs/aをトランスフェクトされた細胞はアピカンを発現しない。神経芽細胞腫ニューロ2A細胞や好クロム性細胞腫PC12細胞が気質に接着する際にL-APPをトランスフェクトしたC6細胞は、L-APPs/aをトランスフェクトしたC6細胞に比べて、はるかに良好なマトリックス基質を作り出す。このように、アピカンは神経細胞の細胞接着分子として作用していると思われる。家族性アルツハイマー病と関連する新しい遺伝子が最近、クローニングされ、アピカンがこれらの遺伝子とどう関係しているのか、あるいはアピカンがこの病気の進行にどのような役割を果たしたいるのかを調べるための好機がおとずれている。
  • Peter Gerold, Volker Eckert, Ralph T. Schwarz, 山田 哲寛
    1996 年 8 巻 42 号 p. 265-277
    発行日: 1996/07/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    GPIアンカー化がタンパク質の新たな膜への結合様式として発見されてからこの10年の間に、これらのアンカーに関する研究が劇的に増加してきた。これらの構造、生合成そして機能に関する莫大な量の知識が蓄積された。この知識をより詳細なものにするために、原核生物から酵母、哺乳動物細胞系に至る範囲に渡って研究がなされた。機能レベルの解析によって、GPIは単に膜アンカーとしての機能ばかりでなく、膜タンパク質の成熟や輸送、あるいはシグナル伝達機構における役割、そして病原性の要因といった多様な機能を示すということが明らかとなった。
    いわゆるGPI-トランスアミダーゼによりGPIアンカーをタンパク質に転移させる認識サイトが、生化学的手法と分子遺伝子学的手法を組み合わせることによって決定されてきた。変異株細胞系やGPI生合成系を欠損するという特性を持った酵母菌株を利用することによって、その遺伝子の同定や、そのうちのいくつかの遺伝子のクローニングが可能となった。これらのキーとなる事項がこの本論中で扱われている。
  • 分化依存的な、そして発癌-発生過程で制御される発現
    Franca Serafini-Cessi, 瀬古 玲
    1996 年 8 巻 42 号 p. 279-295
    発行日: 1996/07/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    血液型Sda抗原は優性遺伝をする糖鎖構造より成り、β-結合したN-アセチルガラクトサミンが免疫原糖である。本抗原は赤血球に限定されず主に大腸や腎臓に存在しており、また、尿中に Tamm-Horsfall 糖タンパク質と連結して排出される。Tamm-Horsfall 糖タンパク質から単離された5糖断片、GalNAcβ1,4(NeuAcα2,3) Galβ1,4GlcNAcβ1,3Galが非常に高いSda活性を有することが見い出された。Sda抗原の生合成に関わるβ1,4-N-アセチルガラクトサミン転移酵素 (Sda-βGalNAc転移酵素) はアクセプター分子として、O-3位にN-アセチルノイラミン酸が置換した末端ガラクトース残基を厳格に要求する。この酵素の組織分布はSda抗原が腎、大腸に際立って局在していることと相関している。Sda-βGalNAc転移酵素は新生モルモットの腎臓及び乳飲みラットの大腸ではほとんど発現しておらず、また、ヒトの大腸癌では劇的に減少していることから、その発現量は発癌発生過程で制御されていることが示唆される。ヒト大腸癌由来の培養細胞のうちCaco-2細胞のみが腸細胞分化の程度に平行したレベルでSda-βGalNAc転移酵素を発現している。分化したCaco-2細胞は主に側底面から本酵素を可溶型として多量に放出する。NeuAcα2,3Galβ-単位に特異的に結合し、腸毒素産生や腎炎発症に関わる大腸菌株の感染を阻止することが、腎臓の遠位部の尿管や大腸においてSda-βGalNAc転移酵素が目立って発現していることを説明付け得る淘汰要因であるのかも知れない。
  • 石原 雅之
    1996 年 8 巻 42 号 p. 297-298
    発行日: 1996/07/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
  • 近藤 昭宏
    1996 年 8 巻 42 号 p. 299-300
    発行日: 1996/07/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
  • Iain B. H. Wilson, Barry J. Hardy, 高橋 延行, 斎藤 景子
    1996 年 8 巻 42 号 p. 301-310
    発行日: 1996/07/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    最近は、糖質科学関連の情報がインターネットを通じて紹介されるようになってきた。我々は、その進歩の現状と、現在World Wide Web 経由で得られる情報の利用方法を紹介したい。例えば、糖質科学者人名録や、構造解析システム、クローン化した糖転移酵素のガイドなどが、その例として挙げられ、さらに電子通信糖質科学会議 (the electronic glycoscience conference) では、リアルタイムでの実験データの公開とディスカッションの手段として、インターネットが利用されている。以上の例は、糖質科学がこれから経験するであろう多くのインターネット関連の継続的な進歩へのさきがけにすぎないのである。
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