Trends in Glycoscience and Glycotechnology
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9 巻, 45 号
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  • Samuel H. Barondes, 平林 淳
    1997 年 9 巻 45 号 p. 1-7
    発行日: 1997/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    この特別号のテーマとなっているガレクチンは、今日でこそ大きなタンパク質家系を形成することがわかっているがその研究の歴史を遡れば、より以前になされた植物や細胞性粘菌のレクチンの仕事が、ガレクチン発見にいたる重要な背景となっていたことがわかる。私個人的としては、神経細胞の認識機構に興味をもったのがこの分野に首を突っ込むそもそもの始まりであった。本論文ではいくつかの逸話もまじえ、ガレクチンの初期の研究がどのように展開されてきたのかを概観してみたい。
  • Hakon Leffler, 荒田 洋一郎
    1997 年 9 巻 45 号 p. 9-19
    発行日: 1997/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    ガレクチンファミリーに属するタンパク質は、β-ガラクトシドに対して親和性を持ち、一次配列上に保存された領域を持つ。哺乳類ではこれまでに10種類のガレクチンが知られており、他の種では、鳥類、両生類、魚類、線虫、海綿、菌類などでガレクチンが見つかっている。ガレクチンは他のレクチンと違って細胞質に存在する。細胞質からはゴルジ装置を介さない経路で分泌されるが、核や特異的な細胞内部位に移行することもある。細胞外コンパートメントにおけるガレクチンの役割が注目を集めている。β-ガラクトシドを含む複合糖質を架橋することにより、細胞の接着や情報伝達を調節しているらしい。しかし、細胞質や核でも働いている可能性がある。ゴルジ装置を介さないガレクチンの分泌経路自体も非常に興味が持たれるところであるが、ほとんど何もわかっていない。ガレクチンは当初はβ-ガラクトシド結合活性から発見されていたが、一次構造の特徴がわかるようになり、さらに分子生物学的手法が使えるようになったので、これまでとは異なった興味深い方法で発見され始めている。ガレクチン、ガレクチン阻害剤、抗ガレクチン抗体が、癌や炎症性疾患などで治療薬や診断薬として使える日が近い将来来るかもしれない。
  • Karen E. Pace, Linda G. Baum, 山岡 和子
    1997 年 9 巻 45 号 p. 21-29
    発行日: 1997/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    ガレクチン-1は、β-ガラクトシド結合タンパク質がつくるガレクチン家系の一構成員で、多くの正常細胞や癌細胞で産生されている。ガレクチン-1は、たとえば細胞と細胞の相互作用の仲介、細胞増殖に対する影響など多くの機能を持つことが示されている。
    最近、我々はガレクチン-1の新たな機能として、T細胞のアポトーシスにおける伝達物質としての作用を明らかにした。アポトーシスは、胸腺における免疫適格 (immunocompetent) なT細胞の産生と、末梢リンパ系器官での免疫応答の終結になくてはならない重要な機構である。ガレクチン-1は免疫系の組織としてのヒト胸腺、リンパ節、脾臓に発現している。これらリンパ系器官内にガレクチン-1が存在すること、および胸腺細胞や活性化T細胞のアポトーシスを誘導することは、ガレクチン-1が中枢や末梢部位で自己抗原に対する免疫寛容の維持に重要な役割を果たしていることを示唆する。ガレクチン-1に対するT細胞の感受性は、ガレクチン-1のカウンターレセプターとなる細胞表層糖タンパク質の発現を制御することで調節されていると考えられる。CD45もそのようなカウンターレセプターのひとつで、ガレクチン-1が誘導するアポトーシスの不可欠な引き金になっているようだ。しかし、T細胞のガレクチン-1に対する感受性は、CD45の糖鎖付加の状態や、CD43のような他のカウンターレセプターの存在によっても調節されているらしい。
    またガレクチン-1は、非リンパ系器官における免疫系の制御でも重要な役割を持つと考えられる。ガレクチン-1は胎盤、前立腺、角膜など多くの免疫特権的 (immune priviledged) 部位や組織で発現されている。免疫特権部位、および組織というのは、たとえば角膜などのような重要な器官が、活性化T細胞による炎症反応で損傷されることのないように、免疫反応がやわらげられている生体内部位のことである。アポトーシスは免疫特権を維持するために不可欠な機構であることが示されている。免疫特権的組織でガレクチン-1が発現されることによって、侵入してくる活性化T細胞のアポトーシスが誘導され、その結果免疫特権が維持されると考えられる。我々は、上記リンパ系器官と免疫特権的部位でガレクチン-1が発現されているのは、免疫反応の調節を行う上で重要な役割を果たしているから、という仮説を提唱する。
  • Céline Colnot, Marie-Anne Ripoche, Deborah Fowlis, Virginetta C ...
    1997 年 9 巻 45 号 p. 31-40
    発行日: 1997/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    ガレクチンはβ-ガラクトシドに特異的な糖認識分子のファミリーである。分子量が14から36kDaと小さく、細胞内の分布状況も様々であることから、他の動物レクチンとは区別される。現在のところ、このガレクチン遺伝子ファミリーは10種類が同定されている。
    様々なガレクチンの胚形成における空間的・時間的分布を調べてみると、その発現パターンは絶えず変化しており、発生過程の様々な段階で働いていることが示唆される。
    胚形成におけるガレクチンの機能を解明するため、我々はガレクチン-1とガレクチン-3遺伝子を欠失させた変異体を作った。ガレクチン-1またはガレクチン-3のどちらかの変異をホモで持つ変異体は、生存も可能で繁殖能力も持っていた。子宮内での着床時に、胚の表面にガレクチン-1とガレクチン-3両方が発現されるが、両ガレクチンの二重変異ホモの胚も着床に成功し、目立った表現型もない。現在、二重変異を起こしたマウスについてより詳細な解析を行っている。
  • Brian Key, Adam C. Puche, 荒田 洋一郎
    1997 年 9 巻 45 号 p. 41-45
    発行日: 1997/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    「におい」は嗅神経系により検出される。1次嗅細胞は鼻腔をおおっている嗅上皮上にある。嗅細胞からでている軸索は、嗅球内の糸球体の別々の部位に収束している。おのおのの糸球体では何千もの1次嗅細胞の終末が、2次嗅細胞の樹状突起とシナプスを形成する。嗅細胞から軸索が伸びて嗅球の特定の部位に導かれるのは、どのような分子メカニズムによるのだろうか。軸索の各集団が表面に特異的な糖鎖を発現して、嗅球の特定の部位に向かって伸びていって終結する。おもしろいことに、鼻と脳の間の嗅伝達系の嗅細胞やグリア細胞はガレクチン-1を発現している。神経突起伸展の in vitro アッセイ系を用いて、我々はガレクチン-1とそのリガンドの両方が、神経突起伸展を特異的に促進できることを見出した。ガレクチン-1を欠失した変異体の嗅覚系を調べると、特定の軸索が嗅球の目的の部位へ到達できないことがわかった。これはガレクチン-1欠失変異体で初めて見出された表現型であり、ガレクチン-1が発生において、嗅覚系の特定の軸索の伸展・誘導に働いていることを示している。
  • Moonjae Cho, Richard D. Cummings, 篠原 康郎
    1997 年 9 巻 45 号 p. 47-56
    発行日: 1997/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    ガレクチン-1はガレクチンファミリーの1つであり、糖鎖認識部位を1つ有する14kDaサブユニットの2量体を形成する。本レクチンは哺乳類において細胞質で生合成された後、単量体として蓄積される点で特徴的である。レクチンは積極的に、ただし非常に緩やかに細胞外に分泌されるが (t1/2≈20h)、正しく折り畳まれ安定性を獲得するためにはリガンドとなる複合糖質を必要とする。本レクチンは単量体-2量体間に平衡を有し、平衡定数は約7μMで、平衡にはかなりの時間を要する (t11/2≈10h)。2量体形成の機構を明らかにし、本レクチンの単量体と2量体の機能の違いを明らかにするために、サブユニット間の相互作用に関与するN-末端に特定の変異を導入した。これらの変異体のうち、N-Gal-1およびV5D-Gal-1は60μM以下の低濃度においては大部分レクチン活性のある単量体であったが、高濃度においてはこれらも2量体形成能があった。ガレクチン-1及び変異体をそれぞれ共有結合により架橋することで得た2量体は、非常に強い凝集活性を示した。これに対して単量体は凝集活性を示さなかったが、2量体の結合を競合的に阻害した。
    ガレクチン-1のラクトース (Galβ1-4Glc) やN-アセチルラクトサミン (Galβ1-4GlcNAc) に対するアフィニティーはKdが90~100μMと低いのに対し、ポリラクトサミンを有する複合糖質に対しては高いアフィニティー (Kd≈1μM) を有する。ポリラクトサミンとの相互作用に際しては非還元末端のガラクトース残基は必須ではない。ポリラクトサミンはラミニンやリソゾーム膜タンパク質 (LAMP) のような特定の糖タンパク質上に発現しており、これらの分子とレクチンとの相互作用を通して細胞間接着や情報伝達が制御されている可能性が考えられる。
  • Douglas N.W. Cooper, 荒田 洋一郎
    1997 年 9 巻 45 号 p. 57-67
    発行日: 1997/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    ガレクチン-1はホモ2量体を形成するレクチンで、骨格筋、平滑筋、末梢神経、いくつかの腫瘍細胞で高レベルで発現している。ガレクチンはポリラクトサミン構造を持つオリゴ糖に特異性を示す。ガレクチン-1が通常とは異なるメカニズムで分泌され、その後、細胞外マトリックス中のラミニン、インテグリン、LAMP、あるいは細胞表面のラクトサミン含有糖脂質に結合する。どのマトリックスあるいは細胞表面受容体が発現されるかによって、ガレクチン-1は細胞の接着や移動、神経突起の伸展を促進したり阻害したりできる。このようにして、発生や腫瘍転移の際の細胞間相互作用の変化をガレクチン-1が制御していると考えられる。
  • Shiro Akahani, Hidenori Inohara, Pratima Nangia-Makker, Avraham Raz
    1997 年 9 巻 45 号 p. 69-75
    発行日: 1997/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    かつてIgE結合タンパク、CBP35、CBP30、Mac-2、L-29、L-31、L-34等と命名されてきたガレクチン-3は、内在性のβ-ガラクトシド結合タンパク質で多くの良悪性細胞に認められる。その生物学的機能は未だ謎であるにもかかわらず、多くの研究がその機能を解明すべく成されてきた。その結果、細胞の成長、接着、転移といった生物学的現象においてガレクチン-3の関与が明るみになってきた。ある種の細胞株ではガレクチン-3の発現と悪性形質転換度の間に正の相関を持つことが示された。しかしながら、腫瘍細胞は多元性であり、ガレクチン-3の発現レベルはたとえ同一部位由来の腫瘍であっても異なっているため、臨床での悪性腫瘍の診断には利用できないと考えられてきた。特記すべきことに、最近ある種の悪性腫瘍ではガレクチン-3の発現と悪性度が正の相関を持つことが示された。ここに、ガレクチン-3は信頼性のある腫瘍マーカーとして期待されている。ここではガレクチン-3が腫瘍転移においてどのように関与するか、いくつかの証拠を基に論証する。
  • Ronald J. Patterson, Sue F. Dagher, Anandita Vyakarnam, John L. Wang, ...
    1997 年 9 巻 45 号 p. 77-85
    発行日: 1997/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    ここではガレクチン-1、および-3の新しい核内機能について述べる。これまでに、これらのガレクチンがmRNA前駆体のスプライシングに関わる必須の因子であることがわかっている。HeLa細胞由来の核抽出液を用いた in vitro アッセイでは、ガレクチンの高親和性糖リガンドを加えると、mRNAのスプライシングが阻害されてしまう。ラクトースカラムを用いてガレクチンを除いてしまった核抽出液では、スプライシングが起こらなくなるが、対照となる糖を固定化したカラムを通した抽出液では、スプライシングが正常に行われる。ガレクチンを除いた抽出液に、組み換えガレクチン-1、または-3を加えてやるとその活性が回復する。ガレクチンのスプライシング機能に「だぶつき」があること、ガレクチンの核内リガンドの可能性、さらにスプライシング過程にどのよにしてガレクチンが関与するのか等について、さらに議論を展開する。
  • Michael A. Gitt, Elizabeth T. Jordan, Hakon Leffler, 平林 淳
    1997 年 9 巻 45 号 p. 87-93
    発行日: 1997/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    現在、哺乳類には10種類のガレクチンがあることが示されている。この章ではそのうち5つについて、各ガレクチンの発見の経緯と特徴について述べようと思う。ガレクチン-2はガレクチン-1と同様、14kDaのサブユニットが2量体構造をした分子で、腸上皮細胞に発現している。ガレクチン-5は15kDaの単量体ガレクチンで、赤血球に発現している。最近発見されたガレクチン-9は多くの組織で発現している36kDaのタンパク質で、2つの糖認識ドメイン (CRD) からなり、このうちC-末端側のCRDがガレクチン-5と非常に高い類似性を示す。ガレクチン-4と-6は互いにきわめて似た分子で、それぞれ36kDaと34kDaの分子量を持ち、やはりともに2つのCRDからなり、両者とも消化管の上皮細胞で発現している。
  • Thierry Magnaldo, Michel Darmon, 帯刀 章子
    1997 年 9 巻 45 号 p. 95-102
    発行日: 1997/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    ガレクチン-7はヒトで最近クローニングされたレクチンファミリーの14kDaメンバーである。ヒト表皮でガレクチン-7mRNAとタンパクは上皮の生細胞層に見つかったので、このマーカーの発現がケラチノサイトの分化段階とは無関係な事が判った。培養ケラチノサイトの研究からガレクチン-7の発現はCa濃度すなわち角質化の程度に影響を受けずに総ての表皮に発現することが判った。さらに再構成表皮モデルにおいて、表皮の口腔粘膜上皮への化生がレチノイン酸により誘導されたときに、ガレクチン-7の発現は減少するが抑制されないことが判った。この結果はガレクチン-7が角質化および非角質化重層上皮のマーカーになりうることを示した。この仮説を確かめるために、ヒト、ラット、マウス上皮におけるガレクチン-7の分布を合成ペプチドに対する特異抗体を用いて調べた。さらにcDNAをクローニングしてガレクチンmRNAの分布をラットで調べた。ガレクチン-7は毛包間表皮や毛包の外根鞘で発現されるが、毛のマトリックスや皮脂腺では発現してなかった。食道や口腔上皮、角膜、胸腺のハッサル小体等の重層表皮では発現が見られたが、単層および移行上皮では見られなかった。ガレクチン-7は従ってケラチノサイトの総てのサブタイプのマーカーとみなしうる。さらに、このマーカーは分化程度に影響されないように思われる。その点で、基底層でのみ転写されるケラチンK5-K14や基底層より上層でのみ合成されるインボルクリンとは異なる。ガレクチン-7は総ての上皮や心筋層にあるデスモソームの構成タンパクとも異なる。
  • Yaron R. Hadari, Miri Eisenstein, Rina Zakut, Yehiel Zick, 平林 淳
    1997 年 9 巻 45 号 p. 103-112
    発行日: 1997/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    われわれは最近、ガレクチン家系に属する新しい哺乳類レクチンをクローン化し、これをガレクチン-8と名づけた(Hadari et al., 1995)。ガレクチン-8は約140アミノ酸からなるドメイン (糖鎖認識ドメイン: CRD) を2つ持った35kDaのタンパク質で、2つのドメインは約30アミノ酸からなるリンクペプチドで連結されている。ガレクチン-8は肝臓、心臓、筋肉、腎臓、脳など広い組織にわたって発現ている。天然の状態ではガレクチン-8は単量体として存在し、未知の細胞成分と強く結合している。ガレクチン-8では、糖結合部位の一部を形成しすべてのガレクチンで保存されているArg残基が、C-末端側ドメインでは保存されているが、N-末端側ドメインではIle90に置き換わっている。この置換によって、N-末側CRDの表面状態はより疎水的になることから、疎水性の高い糖鎖に適応したCRDとなっている可能性がある。このように、ガレクチン-8の2つのCRDは異なる構造を持つことから異なる糖と相互作用すると予想される。ガレクチン-8は、2つの異なるタイプの複合糖鎖と結合することのできるユニークな二重機能性の哺乳類レクチンと言えよう。
  • Jun Hirabayashi, Yoichiro Arata, Ken-ichi Kasai
    1997 年 9 巻 45 号 p. 113-122
    発行日: 1997/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    Caenorhabditis elegans で見つかったガレクチンは最初の直列反復型ガレクチンとして記載される32kDaの分子で、16kDaの大きさの類似したドメイン2つからなる。N-、C-両末端ドメインは糖結合に関わるアミノ酸残基のほとんど (すべてではない)を保存しているが、両ドメイン間の配列類似性は約30%と比較的低い。この線虫32kDaガレクチンは強い赤血球凝集活性を示すが、糖に対する特異性は決して単純ではない。N-、C-両末端ドメインをそれぞれ別個に発現させたとき、アシアロフェツイン-アガロースに対する結合力は両者で大きく異なっていた。これらのドメインに対するそれぞれの内在性リガンドはわかっていないが、これらの観察結果は、線虫32kDaガレクチンが等価でない二価性架橋分子として機能している可能性を示す。このガレクチンは成虫クチクラ層に豊富に見出されることから、硬くて不溶性の表皮層の形成に関わっているかもしれない。最近単離された新しい線虫ガレクチン (16kDa) は非共有結合性の2量体を形成し、ラクトースで阻害される赤血球凝集活性を示す。一方、C. elegansのゲノムプロジェクトの進展によって、これら以外にも驚くほど多くのガレクチン関連遺伝子が見つかっている。少なくともさらに4つの直列反復型ガレクチンが存在し(40~75%一致)、いずれも実際に発現されていることが確認された。幾分長いC-末端をもった糖認識ドメイン (CRD) をコードする二つの類似遺伝子も見つかっている。C. elegans ではゲノムの完全構造 (1 x 108bp) が近い将来解読されるという。このモデル生物を有効に使うことで、ガレクチンと糖鎖の相互作用の生物的、進化的意義に関する新しい概念が誕生すると期待できる。
  • Werner E.G. Müller, Barbara Blumbach, Claudia Wagner-Hülsman ...
    1997 年 9 巻 45 号 p. 123-130
    発行日: 1997/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    Geodia cidnium は古くから細胞凝集のモデルとして知られる海綿の一種である。この生物における細胞間相互作用には、凝集因子 (aggregation factor) と呼ばれる複合体の関与が知られていたが、最近、この複合体はある種のレクチンを介して細胞膜に存在する凝集受容体 (aggregation receptor) と結合していることがわかった。このレクチンはβガラクトシド結合性であり、そのcDNAを単離したところ推定アミノ酸配列からガレクチン家系と高い類似性を持つことが示された。ここに、系統発生上、最古の多細胞動物とされる海綿にすでにガレクチンが存在することが明らかになった。
  • Gerardo R. Vasta, Hafiz Ahmed, L. Mario Amzel, Mario A. Bianchet, 松井 太 ...
    1997 年 9 巻 45 号 p. 131-144
    発行日: 1997/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    ガレクチンは、恒温脊椎動物に広く見出され、細胞間や細胞-細胞外マトリクス間の相互作用などの種々の生物現象に関わると考えられるが、細胞外での安定性をはじめ、作用機作の詳細は今なお不明である。さらに、変温脊椎動物や無脊椎動物でもガレクチンが存在するが、それらの性質や内在性のリガンドとなる糖鎖、生理的機能やガレクチン家系における進化系譜など、ほとんど明らかではない。両生類のガレクチンは、ヒキガエルの Bufo arenarum、カエルの Rana tigerinaR. catesbeiana、アフリカツメガエルの Xenopus laevis、アホロートルの Ambystoma mexicanum などから単離されているが、詳細に調べられているのは X. laevisB. arenarum のみである。私たちは最近、ヒキガエル (B. arenarum) 卵巣ガレクチンが、一次構造をはじめ、三次構造や糖特異性に関して、祖先型にあたる X. laevis のガレクチンよりも、むしろウシのガレクチン-1に近いことを示した。この私たちの知見はいくつかの疑問をなげかけている。すなわち、Xenopus 属 (古カエル亜目) のようないわゆる「原始的な」グループに対して、Bufo 属 (新カエル亜目) のような「近代的な」両生類の現存種内で、どれだけ広範にガレクチン-1に似たレクチンが卵母細胞に存在するのか?これらのレクチンが存在するか否かは、その種の生活史や環境要因の結果なのか? あるいは新カエル亜目に存在するガレクチン-1様のレクチンが、その構造や特異性を脊椎動物を通して進化的に系統保存されてきたことは、このレクチンの生理機能が極めて重要であることを示しているのか?といった問題である。X. laevis ガレクチンは、主として成体の皮膚に限られるのに対して、B. arenarum ガレクチンは、卵母細胞や受精後の各段階に存在することから、これらのカエルは系統的には近いが、それぞれのガレクチンは基本的には全く異なる生理機能、たとえば X. laevis では生体防御機構、B. arenarum では発生過程ではたらくことが考えられる。恒温脊椎動物のガレクチン-1は、胞胚期の最も初期に発現し、子宮内膜上への栄養芽胚の着床に関与すると言われている。一方、B. arenarum のガレクチン活性は、卵母細胞から受精卵、胞胚前の発生段階にかけて見つかり、Bufo 属の卵のまわりを被って保護しているゼリー層との接着や、胚発生における細胞間や細胞と細胞間マトリクス間の相互作用に関与していることが考えられる。ガレクチンを系統的に調べたり、その機能を考えるうえで、両生類は非常に良いモデルといえるだろう。
  • Yuri D. Lobsanov, James M. Rini, 平林 淳
    1997 年 9 巻 45 号 p. 145-154
    発行日: 1997/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    ガレクチン-1、-2、およびそれらの糖との複合体のX-線結晶構造が明らかにされた結果、ガレクチンのポリペプチド鎖のたたまれ方、二量体形成に関わる性質、糖結合の分子的基盤について論論できるようになった。糖結合部位を詳細に解析することで、ガレクチンがどのようにポリラクトサミン糖鎖構造に結合し、また、ガレクチン家系のそれぞれのメンバーがいかにして異なる糖結合特異性を示すのかが明らかになた。ガレクチン-3や4のX-線結晶解析結果が最近得られたが、配列データも含め、ガレクチン家系のCRDはガレクチン-1/2とガレクチン-3/4という異なるサブタイプに分類できそうである。これら2つのサブタイプは、三次・四次構造上の組み立てが基本的に異なっており、ガレクチン家系を代表する2つのCRDと言える。
  • C. Fred Brewer, 荒田 洋一郎
    1997 年 9 巻 45 号 p. 155-165
    発行日: 1997/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
    ガレクチンなどのレクチンには、多価の結合活性があるため、多価の糖鎖や複合糖質と1型や2型の架橋複合体を形成する。1型の複合体は、2価のレクチンと2価の糖鎖や複合糖質の間で形成され、1次元的な架橋複合体となる。このタイプの複合体は、ウシ心筋ガレクチン-1と2価のN結合型2分岐複合型糖ペプチドとの間で観察されている (Bourne et al., 1994)。2型の相互作用もレクチンと糖鎖または複合糖質の間で起こるが、それはいずれかの価数が2よりも大きな場合である。このとき、架橋は2次元または3次元的に形成され、規則正しい結晶を作らせるような相互作用があれば、均質な複合体となる。仔ウシ脾臓ガレクチン-1はアシアロフェツインと2型の架橋相互作用をする (Gupta and Brewer, 1994)。ガレクチン-1は糖鎖や複合糖質と1型でも2型でも架橋複合体を作れるが、このような柔軟性がこのレクチン及び他のガレクチンファミリーのメンバーの生物活性と関わりを持っているのだろう。
  • K. Kasai
    1997 年 9 巻 45 号 p. 167-170
    発行日: 1997/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
  • 平林 淳
    1997 年 9 巻 45 号 p. 181-182
    発行日: 1997/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
  • 荒田 洋一郎
    1997 年 9 巻 45 号 p. 183-184
    発行日: 1997/01/02
    公開日: 2010/01/05
    ジャーナル フリー
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