シアル酸はヒトの細胞表面に豊富にあり、負の電荷を持つことにより、好ましくない細胞間相互作用を妨げる働きを助けている。免疫グロブリンスーパーファミリーであるシアロアドヘシンサブセットの最近の発見により (これには、シアロアドヘシン、CD22、ミエリン関連糖タンパク質 (MAG) やCD33が含まれる)、シアル酸が、変化に富んだ生理システムの中で、細胞間相互作用を促進させる手段でもある可能性が出てきた。これら膜タンパク質のそれぞれは、認識されるシアル酸の種類と一つ内側の糖への結合の両方に対して、明確な特異性を表す。これらは、保存されたジスルフィド結合によって保持されるNH
2末端側の二つのIgドメインにおいて、高い度合いで似通った配列を持っている。ドメインの1と2 (NH
2, 末端より数えて) は遺伝子複製を通じて、ファミリーの中の現メンバーを生み出した先祖遺伝子を表しているように思われる。端を切り取った組換えタンパク質作成と、部位特異的変異誘発によって、シアロアドヘシンとCD22のNH
2末端にあるVセットドメインのCFC′C″面が、シアル酸の結合部位を含んでいることが示された。最近になって、リガンドとして用いた3′-シアリルラクトースと複合体を作っているシアルアドヘシンのVセットドメインの構造がX線結晶学によって確かなものになった。シアロアドヘシンとそれ以外のシアル酸結合タンパク質によるシアル酸の認識における類似性及び差異について述べる。
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