抗ウィルス核酸誘導体 (NAs) を肝臓ヘターゲティングさせる目的は、慢性肝炎の際に起こるこれらの薬物の肝臓外での副作用を減らすことにある。このためにNAsをガラクトース末端を持つ高分子に結合させた。この複合体は、肝実質細胞上に多量に存在し、ガラクトースに強い親和性を持つレクチン (アシアロ糖タンパクレセプター) と結合した後、これらの細胞に選択的に取り込まれる。細胞に取り込まれた後はライソソームに運ばれ、そこでキャリアーと薬物の結合が切れ、薬物のみが細胞内に濃縮されることになる。これまでのNAsの肝臓へのターゲティングは主にラクトース化したヒトアルブミンと、B型肝炎ウィルスに有効なリン酸化NAであるアラビノシド-リン酸 (ara-AMP) を使って行われてきた。この複合体はB型肝炎患者に投与すると、フリーのara-AMPの投与で見られるような神経毒性を示すことなく同等な抗ウィルス活性を示した。
肝指向性キャリアーとしてラクトース化したポリ-L-リジン [(Lac-poly (LYS)] を用いた複合体が前臨床段階にある。この新規の複合体はヒトアルブミンを用いたものに比べ、いくつかの利点があげられる。すなわち、(a) 筋肉注射が可能、(b) 完全に化学合成が可能なため、血液を使う際の問題が避けられる、(c) 薬物保持量が多いため、少量の投与ですみ、ライソソームでの分解が容易になる、(d) より多くの薬物を肝実質細胞中に導入できる。2種類の Lac-poly (LYS) 複合体、つまりara-AMPとリバヴィリン (C型肝炎に有効)、を用いた実験結果から、アシアロ糖タンパクレセプターを介した肝臓へのターゲティングの有効性がさらに支持されている。
まとめると、ガラクトース末端を持つキャリアーとNAsのカップリングは肝実質細胞内への有効なデリバリー方法であり、副作用のために使えない薬物の使用を可能にするものであると思われる。
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