学術の動向
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26 巻, 8 号
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特集
新たな地球観への挑戦 ―地球惑星科学の国際学術組織の活動と日本の貢献―
  • 田近 英一
    2021 年 26 巻 8 号 p. 8_9
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー
  • ──国際鉱物学連合 (IMA) の取り組み
    大谷 栄治
    2021 年 26 巻 8 号 p. 8_10-8_12
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

     鉱物は、地球の進化、物質循環の理解に基本的に重要な物質である。それは、大気海洋や生物圏と相互作用するために、鉱物の科学は自然環境の保全、地震や地滑り防災、廃棄物処理、汚染対応などにとっても不可欠なものである。国際鉱物学連合(IMA)はこのような鉱物科学の振興と国際連携の推進を目的としている。本稿ではIMAの組織と歴史、そして日本からの貢献、IMAの学術的・社会的な貢献、特に他の組織に代えがたい重要なミッションである新鉱物の命名と分類、最近話題になっている我が国から見いだされた特異な鉱物、環境保全やアウトリーチ活動などIMAの社会への貢献などについて紹介した。

  • ──国際地理学連合 (IGU) の活動と日本の役割
    氷見山 幸夫
    2021 年 26 巻 8 号 p. 8_13-8_17
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

     国際地理学連合(IGU)は地理学を「サステナビリティのための科学」と捉え、国際学術会議(ISC)のフューチャー・アース、UNESCOのESD(持続可能な開発のための教育)、国連のSDGsなどへの関わりを強めている。関連する研究・教育活動の実施主体は主に各国の国内委員会、テーマ別の研究委員会及びタスクフォースであり、役員会が全体を統括し、地理学全般に関る課題や活動への取組、外部の団体との連携や協働などの要となっている。IGU日本委員会は、2005年の日本学術会議改組後は、新設の地球惑星科学委員会に置かれたIGU分科会がその任を担っている。それによりIGU日本委員会の国際的な立場と評価は強化され、国内的にも地球惑星科学、地域研究、環境学をはじめとする幅広い領域との交流や協働の機会が増え、地理学の発展だけでなく、地理学からの発信や国際プログラムへの貢献、提言作成への参加、社会的関心の高いテーマに関する公開シンポジウムの開催等の社会貢献も進んだ。

  • ──国際組織SCOSTEPを通した研究の取組
    塩川 和夫
    2021 年 26 巻 8 号 p. 8_18-8_21
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

     拡大する人類の宇宙利用の安全・安心な運用と太陽活動変動の地球気候への影響を理解・予測するために、国際学術会議傘下のSCOSTEPを中心としてPRESTO(変動する太陽地球結合系の予測可能性)プログラムが2020-2024年に推進されている。PRESTOでは、太陽・惑星間空間・ジオスペース、宇宙天気と地球大気、太陽活動とその気候影響、という3つの課題に対して国際共同研究が進められている。SCOSTEPは太陽地球系科学の発展のために、国際スクールやオンラインセミナー・講義、若手派遣事業を実施してきた。日本学術会議は日本の代表としてSCOSTEPに加盟し、分担金の拠出やSCOSTEPに対する国内対応の議論・情報交換を行ってきた。日本は、歴代のプログラムの国際会議を主催したり、SCOSTEP会長、副会長、理事やプログラム議長を輩出したりするなど、SCOSTEPの運営に大きく貢献している。

  • ──南極研究科学委員会 (SCAR) の活動, 日本の貢献と南極域から地球システムを見る取り組み
    中村 卓司
    2021 年 26 巻 8 号 p. 8_22-8_25
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

     巨大な氷床で覆われた大陸「南極」は、1957−58年に国際科学会議(ICSU)が主導した国際地球観測年(IGY)で12か国が行った南極観測を契機に国際共同で観測研究を推進する体制が構築され、南極研究科学委員会(SCAR)が1958年に設置されるとともに、1961年には南極条約が発効し、国境がなく科学的活動の自由が担保された大陸として国際協力で科学研究が進められてきた。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の最近の報告書では、特に南極の氷床の融解プロセスが明らかでないことが海水準上昇をはじめとする地球温暖化の影響を把握する上で大きな誤差要因とされており、南極の観測研究は地球の将来に大きく関わると認識されている。SCARホライゾンスキャンでは今後の南極研究の重要分野・重要課題を策定しており、日本の南極観測もこれに沿って実施されている。我が国は重要メンバーとして国際協調や科学成果で貢献を続けている。

  • ──国際地質科学連合 (IUGS) の活動を俯瞰する
    北里 洋
    2021 年 26 巻 8 号 p. 8_26-8_31
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

     2020年1月、「チバニアン」が中期更新世の地質時代として承認され、国際地質年代表に掲載された。世界基準に基づく時間空間軸があることで、地球ができてから現在までの変遷を辿ることができ、また、これからどうなるかを予測することができるのである。国際地質科学連合は国連型の地質科学に関する連合体である。その活動はシームレスな地球現象をコンパイルするだけでなく、資源エネルギー、防災、地球環境問題などに発言をし、また、地球の将来を担う人材育成に積極的に関わっている。本稿では、国際地質科学連合とは何か、何をしているのかを俯瞰的に紹介し、「人新世」を迎えたといわれる21世紀にこそ、「変動する地球に生きる素養をもつ」ことの大切さとそれを支える組織があることの意味を主張する。

  • ──国際北極科学委員会 (IASC) の活動と日本の貢献
    榎本 浩之
    2021 年 26 巻 8 号 p. 8_32-8_35
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

     北極圏には独特の自然環境と社会、文化があるが、近年その北極で急速な環境変化が起きている。また、北極の環境変化の影響の範囲は北極域に止まらず、日本など中緯度域にも及ぶものであることがわかってきた。一方で、北極域での資源や航路などの産業の関心も高まっている。その観測や予測、ルール形成には北極圏の国々だけでなく、国際的な活動体制が必要である。国際北極科学委員会(IASC)は、1990年の設立以来、北極の自然と人間や社会に関する科学の推進に取り組んできた。国際的な科学協力の推進や北極圏をめぐる国際社会への科学的な貢献は近年顕著に増加している。日本もIASCに設立当初から加盟し、様々な分野で貢献してきている。

  • ──世界気候研究計画 (WCRP) の貢献
    三枝 信子
    2021 年 26 巻 8 号 p. 8_36-8_38
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

     気候の将来予測と影響評価、負の影響への対策実施は、持続可能な地球社会の構築に不可欠である。世界気候研究計画(WCRP)は、1980年の設立以来、自然起源と人間活動の影響を受けた気候変動とその影響評価に必要な科学の振興に取り組んできた。日本ではWCRPの4つのコアプロジェクトの推進を通して、国際共同研究に基づく地球規模の観測やモデル開発の推進、公開科学会議などを通した交流や次世代の人材育成に取り組んできた。WCRPの重要な国際活動の一つに、気候の将来予測に関わる結合モデル相互比較計画(CMIP)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)への貢献がある。WCRPは今後も気候科学に関する知見創出と普及を継続すると同時に、地球規模の持続可能性を追求する視点を加え、近未来予測や地域ごとの気候変動リスク評価、気候変動の緩和策や適応策の評価を可能にする情報提供などにも貢献していくことが期待されている。

  • ──海洋研究科学委員会 (SCOR) の役割
    升本 順夫, 原田 尚美
    2021 年 26 巻 8 号 p. 8_39-8_43
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

     海洋研究科学委員会(SCOR)は、海洋に関する分野横断的な問題解決のための研究推進と国際協力の振興を目的とする、海洋研究に関する唯一の学際的な国際学術組織である。この目的達成のため、ワーキンググループ活動、国際共同研究プロジェクトのサポート、研究基盤構築のサポート、人材育成に関する活動を推進しており、それぞれで多くの日本人研究者が深く関与し、貢献してきた。SCORの学際的、分野横断的な活動と、これに対応する日本学術会議における統合的視野での活動を通じて、現在進められている国連のSDGsや「持続可能な開発のための海洋科学の10年」に直接貢献するとともに、私たちの安定した社会経済活動の実現に資することを目指している。

  • ──国際測地学及び地球物理学連合 (IUGG) の活動と役割
    佐竹 健治
    2021 年 26 巻 8 号 p. 8_44-8_47
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

     地球物理学は、地球とその周辺の物理現象を調べる研究分野である。地球の形状、その内部構造、地球表面の水や雪氷、大気のふるまいから、地球周辺の磁気圏までを対象として、空間のみならず時間的変化も調べている。このように地球全体を扱うことから、国際的な協力や、観測・モデルの標準化は必須である。国際測地学及び地球物理学連合(IUGG)は雪氷、測地、電磁気・超高層、水文、気象・大気科学、海洋物理・化学、地震・地球内部物理、火山・地球内部化学の各分野で国際連携を行っている。これらの科学協会や連合が中心となって作成した、測地座標系・地球磁場などの標準モデル、数値気候モデルや衛星等による観測は、スマホによる位置情報、天気予報など、我々の生活に欠かせない情報を提供している。さらに、気候変動・地球温暖化・水問題などの地球環境問題、地震・火山噴火などの自然災害に対しても重要な役割を果たしている。

  • ──国際第四紀学連合 (INQUA) の活動と日本の貢献
    奥村 晃史
    2021 年 26 巻 8 号 p. 8_48-8_51
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

     第四紀研究は第四紀における人類と自然の歴史を両者の関わり合いを重視して解明する。その成果は現代の人類が直面する地球環境変動や自然災害の解明と将来予測に不可欠な情報を提供し、人類の進む道を指し示すものである。INQUAは第四紀研究の学際的・国際的な研究の推進を目的として1928年に設立され。日本学術会議と日本の研究者は1950年代からINQUAを支援しその活動に積極的に参加してきた。INQUAの主要な活動は5つのコミッションで行われる研究プロジェクトと若手・発展途上国研究者の支援である。その財政は各国の分担金と学会誌の誌代で支えられている。2015年名古屋大会の実現、チバニアンの認定は、日本学術会議の継続的な貢献の重要な成果である。人類の未来に関わるグローバルな第四紀研究へINQUAを通じて貢献することは、日本の第四紀研究者と日本学術会議の重要な責務である。

  • ──国際地図学協会 (ICA) の役割
    森田 喬
    2021 年 26 巻 8 号 p. 8_52-8_55
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

     地図は空間の縮小表現モデルであるが、地表のカタチを表すだけでなく主題図として地表上に生じる諸現象をベースマップ上に展開させて表現することができる。これを通して空間に関する諸課題への科学的探究に資するとともに日常的な社会生活の向上にも貢献している。地図は文字が無かった時代から存在しているが、1500年頃の文芸復興期以降には科学的方法に基づいて地図が作られるようになり、現代に入り国際交流が飛躍的に増大するなかで1959年に国際地図学協会(ICA)が発足した。ICAは、隔年に国際地図学会議(ICC)を世界各地で開催しているが、日本は1980年と2019年に同会議を招致している。SDGsの諸課題は、適切に地図化すると国際的な共通理解が得られる可能性がある。ICAでは国際連合と共同で標準的な表現方法について指針書を提案している。これは国際的な共通のコトバとしての地図言語の標準化の勧めであり同時に地図リテラシーの普及と向上の促進を企図したものである。

  • ──地球惑星科学の国際学術組織の活動と日本の貢献
    佐竹 健治
    2021 年 26 巻 8 号 p. 8_56-8_58
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

     日本学術会議が加盟している国際学術団体の44団体のうち12団体が地球惑星科学関係の国際学術連合・学際組織であり、これらに拠出している負担金は全体の約3割に上る。国際学術連合の中には百年以上の歴史を持つものもあるが、1957~58年の国際地球観測年を契機に地球の観測に関する国際連携が活発化し、多くの学際組織が結成された。これらの学術連合や学際組織は、大型の国際観測計画を立案・実行するとともに、国際的な規則や標準を策定するなどの活動も行っており、地球上での位置情報や時間など我々の生活にも密接に関係している。また、持続可能な社会に向けての活動、分野を超えた学際的な連携、人材育成なども行っている。このような国連型の国際学術連合や学際組織には、ナショナルアカデミーとしての日本学術会議が加盟する必要がある。

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Gサイエンス学術会議共同声明
  • 原稿種別: 会議報告
    2021 年 26 巻 8 号 p. 8_73-8_75
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー
  • – science, technology and the solutions for change
    原稿種別: other
    2021 年 26 巻 8 号 p. 8_76-8_78
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

    This Statement has been created by the Science Academies of the Group of Seven (G7) nations. It represents the Academies’ view on the need for the G7 countries to anticipate the risks associated with climate change, face the transition that this requires, carefully design, plan and accelerate action to reach net zero by 2050 or earlier. We invite those countries to deploy technologies and nature-based solutions that are available now and to invest in research and innovation to address the outstanding challenges. All nations of the world must work in partnership: science is a global endeavour and the last year, more than any other, has demonstrated the power of global science.

    Terminology in this statement uses 'science' to include engineering, technologies to include nature-based solutions and net zero refers to all greenhouse gas emissions.

  • Gサイエンス学術会議共同声明 2021
    原稿種別: 翻訳
    2021 年 26 巻 8 号 p. 8_79-8_80
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

     本声明はGサイエンス学術会議が作成した。これは、G7諸国が気候変動に関するリスクを予測し、それに伴う変革、および、2050年またはそれ以前にネットゼロを達成するための行動の綿密な設計・計画・加速の必要性に関する同学術会議の見解を表明している。我々は、G7諸国が現在利用可能な技術や自然に基づいた解決策を展開すること、ならびに、壮大な目標への達成につながる研究開発に投資することを推奨する。世界中のすべての国が手を携えて取り組まねばならない。サイエンスはグローバル規模で取り組むものであるが、昨年はこれまでになく、グローバルサイエンスのパワーが発揮された年であった。

     本声明では、「サイエンス」は工学を、「技術」は自然に基づいた解決策をそれぞれ含むものとし、「ネットゼロ」は全ての温室効果ガス排出について述べるものとする。

  • – the case for urgent action
    原稿種別: other
    2021 年 26 巻 8 号 p. 8_81-8_84
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー
    This statement has been created by the Science Academies of the Group of Seven (G7) nations. It represents the Academies’ view on the magnitude of biodiversity decline and the urgent action required to halt and reverse this trend. The Academies call on G7 nations to work collaboratively to integrate the multiple values of biodiversity into decision-making, and to pursue cross-sectoral solutions that address the biodiversity, climate and other linked crises in a coordinated manner.
  • Gサイエンス学術会議共同声明 2021
    原稿種別: 翻訳
    2021 年 26 巻 8 号 p. 8_85-8_87
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

     本声明はGサイエンス学術会議による共同声明であり、生物多様性損失の重大性と、その減少傾向の拡大阻止および回復に必要な緊急措置について、同学術会議の見解を表明するものである。同学術会議はG7諸国に対して、生物多様性の多様な価値の意思決定プロセスへの組み込みに共同で取り組むこと、生物多様性、気候変動、その他の関連する危機への分野横断的な対応策を協調して遂行することを求める。

     最大限に単純化すると、生物多様性は地球上の生命、すなわち、生物圏を構成する様々な遺伝子、種、生態系と、それらが存在する様々な生息環境、地勢、地域の状況を表している。

  • governance, operations and skills
    原稿種別: other
    2021 年 26 巻 8 号 p. 8_88-8_92
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

    This Statement has been created by the Science Academies of the Group of Seven (G7) nations. It represents the Academies’ view on the need for the G7 countries to realise a better level of ‘data readiness’ for future health emergencies.

    Data is the currency for exchanging information, building knowledge and driving action in health. Amid the disastrous loss of health and life to Covid-19, people around the world have engaged with data and information more intensively than ever. As the pandemic is brought under control, the G7 should champion the cause of establishing health data as a global public good. To achieve this, the nations of the G7 and beyond should work together to: adopt principle-based governance systems for securing safe sharing and use of data for health emergencies; build and implement the operational systems, infrastructures and technologies for implementing a principle-based and privacy-preserving approach to equitable use of data for health emergencies; and foster the skills and capabilities at all levels – from the general public to health professionals – needed for trusted and accurate use of data. There is an opportunity now to learn from international responses to Covid-19, and the G7 should capture this moment to help build a trustworthy and trusted international data system for health emergencies. The Governments of the G7 should establish a commission on data for health emergencies to agree on how to achieve this. The initial aim of this commission could be to identify procedures for data sharing that were used in response to Covid-19, which might be adopted for longer-term use in G7 and other nations. The commission should involve meaningful public dialogue to build trusted systems that can support the global health beyond the G7, and beyond health emergencies.

  • Gサイエンス学術会議共同声明 2021
    原稿種別: 翻訳
    2021 年 26 巻 8 号 p. 8_93-8_96
    発行日: 2021/08/01
    公開日: 2021/12/24
    ジャーナル フリー

     本声明はGサイエンス学術会議による共同声明であり、今後の健康危機対応に向けてG7諸国がより高水準の「データレディネス(対応力)」を実現する必要性について、同学術会議の見解を表明するものである。

     データは情報交換のための通貨のようなものであり、健康に関する知識の蓄積と対応の促進という役割を果たす。新型コロナウィルス感染症(Covid-19)が健康・生活に大きな被害をもたらす中、世界中の人々はかつてないほど積極的にデータおよび情報に関与してきた。G7諸国はパンデミックの収束にあたり、世界共通の公共財として健康に関するデータを構築することを提唱すべきである。

     このデータ構築を遂行するには、G7諸国をはじめとする国々が協力して以下のことに取り組む必要がある。それは、健康危機に関するデータを確実に安全に共有・利用するための原則に基づくガバナンスシステムの導入、健康危機に関するデータの公正利用のための原則に基づくプライバシー保護に配慮した手法を遂行するための運用システム・インフラ・技術の構築・実用化、あらゆるレベルの人々(一般市民から健康関連の専門家まで)を対象とした信頼できる正確なデータ利用に必要なスキル・能力の養成、である。

     Covid-19への各国の対応から学ぶ機会が今まさに存在している。G7諸国はこのタイミングをとらえて、健康危機に関する信用に値し信頼のおける国際データシステムの構築を推進するべきである。このシステムを構築する方法については、G7諸国が共同で健康危機データに関する委員会を設立し合意をとるべきである。

     Covid-19対応において利用されたデータの共有手順を策定することが、当委員会の初期の目標となるだろう。G7諸国をはじめとする国々はここで策定された手順の長期使用を導入してもよいだろう。この委員会は、G7諸国だけでなく、また健康危機対応に限らず、世界全体の健康を支える信頼できるシステムを構築するために有意義な公開討論を実施すべきである。

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