学術の動向
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27 巻, 1 号
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特集
「水」と「水循環」の研究最前線 ─ 21世紀の多分野協創研究にむけて─
  • 谷口 真人
    2022 年 27 巻 1 号 p. 1_11
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー
  • 沖 大幹
    2022 年 27 巻 1 号 p. 1_12-1_16
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー

     水の研究は、物理学、化学、生物・生態学、地球科学、地理学、工学、農学、林学、医学、人文社会科学の広い分野にかかわっているが、中でも、人間活動への応答も含めて地球上の水の循環を研究する学問を水文学(すいもんがく、hydrology)と呼ぶ。水の禍を最小限に抑えつつ水の恵みを最大限に受けたいという社会的な要請に応える実学としての側面も以前には強く、「忘れられた科学」とさえ揶揄された水文学だが、様々な側面で水循環抜きには語れない地球規模課題の解決に向けた学術の興隆に伴い、今や21世紀の地球科学に欠かせない存在となり、科学と社会が垣根を越えて協業を進めようという超学際(transdisciplinary)研究の一翼を担っている。グローバル水文学の視点から、過去30年の水文学の発展を振り返り、今後のさらなる発展の機会について論じる。

  • ──水の多様性と総合研究
    谷口 真人
    2022 年 27 巻 1 号 p. 1_17-1_21
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー

     人と社会と自然の基盤となる「水」は、貴重な資源であると同時に、環境そのものでもある。工業化、都市化、緑の革命を経て人新世へ至る中で起きた、より遠い水・より遅い水への水利用の拡大は、食料貿易によるwater footprintやその結果としての地下水減少などを通して、地球上の水の時空間的つながりの拡大と、水問題が複合的地球環境問題であることを認識させた。現在の水研究は、自然科学的研究に限らず、人文・社会科学的研究など多様な研究が進められており、文化の多様性と生物多様性につながる水の多様性研究は、生存基盤としての水に関する基礎となる概念である。また、水を通した他地域への依存性は、持続可能性を評価する上でも重要である。そして水の被害と恩恵のバランスを示す社会的閾値は、水の資源的側面と環境的側面の研究、均質性と多様性に関する研究とともに、人と社会と自然をつなぐ水に関する総合的研究として重要である。

  • 張 勁
    2022 年 27 巻 1 号 p. 1_22-1_27
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー

     日本の山・森・里・川・海を潤す豊富な河川水や地下水は、コンベアーベルトのように陸から海へ絶えず栄養塩を運び、豊かな沿岸海域を育んできた。古くから豊富な水の恩恵を受けつつ豊かな暮らしがもたらされた北陸地域も、近年の温暖化の影響で日々の暮らしが変化し始めた。本文は水をキーワードに日本の陸から海への水、栄養塩供給の今を追った。

  • ──グローバルとローカルを繋ぐ
    和田 義英
    2022 年 27 巻 1 号 p. 1_28-1_34
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー

     人口増大と食糧生産の飛躍的な増加ならびにエネルギー需要の増大により世界の水需要は過去100年の間に10倍近くに増え、今世紀中に人口は100億人に増加する報告もあり、アジア、中南米やアフリカでも水の需要が飛躍的に増加することが見込まれる。世界の二酸化炭素の大幅な減少もしくはカーボンニュートラルには、各国でエネルギー生産や産業構造の大幅な変化が求められるものの、化石燃料を燃焼する大規模な火力発電や原子力発電に電力を大きく依存しており、そうした発電には冷却等のために大量の水が消費されている。国際応用システム分析研究所(IIASA)では、水、エネルギー、食料などの研究部門間の垣根が取り払われ、分野横断的なテーマのもとで、水・エネルギー・食料ネクサスに関する研究が活発に行われており、持続可能な開発目標(SDGs)やカーボンニュートラルの達成に向けて、エネルギー需要や食糧生産を考慮しながら水セクターでどのような解決策があるかなど、今後の経済活動を考慮した水・エネルギー・食料経済モデルの開発に利害関係者との協働のもと尽力している。

  • ──印旛沼流域からめざすオルタナティブ・サイエンス
    近藤 昭彦
    2022 年 27 巻 1 号 p. 1_35-1_39
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー

     都市近郊の閉鎖性流域である千葉県、印旛沼は高度経済成長期に大きくその姿を変えた。人間生活に多くの利便性をもたらしたが、水質汚染は深刻になった。そこで、湖沼水質保全計画により1986年から対策が試みられたが、改善には至らなかった。そのため、2001年に印旛沼流域水循環健全化会議が設立され、トランスディシプリナリティーに基づく様々な実践が行われてきた。その活動を通じて水質を改善するためには流域をシステムと捉え、全体をよくする中で水質も改善するという考え方が生まれてきた。2019年秋季の3回の風水害、2020年以降のコロナ禍は印旛沼流域における活動を停滞させたが、印旛沼流域の未来を再考する機会となった。コロナ後の印旛沼流域における実践は20世紀型の科学技術の成果に基づき、21世紀型のオルタナティブ・サイエンスの登場を促す営みとなるはずである。

  • 戸田 浩人
    2022 年 27 巻 1 号 p. 1_40-1_44
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー

     21世紀の環境問題として、水資源、森林資源、温暖化などの異常気象、反応性窒素の増大があげられる。森林は降雨が通過して流出するまでに、水量・水質を安定させ人類が利用できる状態で供給する水源涵養機能を有する。この機能には、降雨中の反応性窒素を養分として物質循環系に取り込み、水質を浄化する機能も含まれる。しかし近年、過剰な大気汚染による窒素負荷を森林が吸収しきれず、窒素を放出する窒素飽和現象がみられている。一方、日本の人工林は伐採時期を迎え、水源涵養機能を維持しつつ木質系資源の利用を進め、地球温暖化抑止へ貢献する森林管理が求められている。効率を求めた大面積皆伐や渓畔林の皆伐と土壌の撹乱は、窒素の流出を著しく増大させるため避け、立地条件を選んだ丁寧な間伐や小面積皆伐により木質系資源の利用と森林の更新をはかり、森林流域の利用と管理による炭素固定と窒素保持力をバランスよく維持していくことが重要である。

  • 千葉 知世
    2022 年 27 巻 1 号 p. 1_45-1_49
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー

     地下水の不可視・低速・分散的な特徴は、その管理を困難にする。従来の政府による規制を中心とする地下水管理が十分に奏功しないケースが観察される中、多様なアクターによる水平的・垂直的な協働、および地下水とその関連領域における法制度的・政策的対応の束によって、地下水を持続的に保全管理していくプロセスである「地下水ガバナンス」が国内外で耳目を集めている。地下水ガバナンスの発展段階は各国・各地域によって様々であり、日本国内でも各地域の状態は多様である。日本では、一般的には地盤沈下等の古典的な地下水障害は沈静化しつつあるが、一方で、気候変動による地下水・地下環境への影響など科学的不確実性の高い課題が現出しつつある。グローバルかつ長期的で不確実な課題を、地域の政策に落とし込んで予防的に対応していくための地下水ガバナンスの構築、そのための科学コミュニケーションの推進が重要性を増している。

  • ──琉球弧の事例から
    高橋 そよ
    2022 年 27 巻 1 号 p. 1_50-1_55
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー

     本稿では、琉球弧の島々を事例に、水と人間との循環的なかかわりと、その関係性の回復からコミュニティ・ケイパビリティの向上を試みる協働研究の一端を紹介した。

     琉球弧の島々は高島と低島に分類され、それぞれの自然特性に応じた固有の言語や文化、在来的な知識や技術を発達させてきた。特に琉球石灰岩からなる低島では、雨水の多くが地下に浸透するため、湧水を利用するなど、水資源の確保に苦労をしてきた。1972年の本土復帰後、ダム建設などによって水源が確保されると、沖縄の水―社会システムは急激に変化した。このように貴重な資源であった水は、琉球弧の島々において、1)実利的な在来的知識や技術の対象、2)聖なる水として文化的価値を見出されてきた。しかしながら、現在は赤土流出や水質悪化など様々な問題に直面している。そこで本稿では筆者が関わっている二つの協働プロジェクトを提示し、協働研究によって醸成されるコミュニティ・ケイパビリティの可能性について論じた。

  • 杉田 文
    2022 年 27 巻 1 号 p. 1_56-1_60
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー

     千葉県旭市における「津波による地下水影響調査」では科学調査・研究の過程で市民から協力の申し出があり、データ取得を市民が行う形での協働調査となった。市民の熱意と測定者に測定精度が依存しない測器の存在により協働が成立した。本調査では少ない費用で時空間密度の高い自然の塩淡境界水質変化のデータ取得が可能となった。調査結果への市民の高い関心により科学調査が直接社会貢献に結びついた。

     一方、都市公園池であるじゅんさい池の「自然再生活動に伴う地下水調査」では目前の問題に対し、池の生態系に関する知識を深めながら水文学が解決に役立てる方法を探る必要があった。市民、行政、複数の教育機関が参加するプロジェクトが立ち上がり、立場や意見の異なる主体が、池の将来に関する共通認識をもつことにより協働が成立した。参加者全員が立場や役職に関わらず完全に並列に並ぶこと、そして同じ方向を向くことが協働成功条件の一つと考えている。

特集
IPCC第6次報告 (自然科学的根拠) をめぐって ─その現代的意義─
  • 安成 哲三
    2022 年 27 巻 1 号 p. 1_61
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー
  • 江守 正多
    2022 年 27 巻 1 号 p. 1_62-1_65
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー

     気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第1作業部会の第6次評価報告書では、8年前の前回報告書と比較して、過去と将来の気候変動に関する知見が精緻になった。産業化以前から直近10年までの世界平均気温上昇量は1.09℃と評価され、それが人間活動の影響であることは「疑う余地がない」と結論された。将来シナリオには社会経済の見通しが付与され、パリ協定の「1.5℃」目標に対応して排出量が非常に低いシナリオが追加された。将来の気温上昇見通しは最良推定値が若干高くなり、不確実性が大幅に減少した。今後20年の平均気温が産業化以前から1.5℃上昇に達する可能性はいずれのシナリオでも50%以上と評価された。これらの結論は、産業化以前から1.5℃上昇で温暖化を止める可能性は残されているものの、現在の世界各国の対策目標では不十分であることを明瞭に示している。

  • 小坂 優
    2022 年 27 巻 1 号 p. 1_66-1_69
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー

     IPCC第6次評価報告書第1作業部会報告書の第3章は、大洋・大陸~地球規模の空間スケールについて、気候モデルの再現性能の評価と、観測された変化に対する人類の影響の検出と定量化を行った章である。特に地球温暖化、つまり地球全体で平均した地表気温の上昇について、1850~1900年の平均を基準とした2010~2019年の10年平均に対し、人為起源の影響は1.07ºC(不確実幅0.8~1.3ºC)の地球温暖化をもたらしたと評価した。この推定幅は、観測データに基づく同じ期間の地球温暖化レベル1.06ºC(不確実幅0.88~1.21ºC)を内包する。地表気温以外にも様々な気候指標において人類の影響が検出され、いくつかについては人為起源影響が変化の主要因であると評価されている。これらの根拠により、人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない、と結論づけられた。

  • 石井 雅男
    2022 年 27 巻 1 号 p. 1_70-1_73
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー

     地球温暖化を引き起こしている二酸化炭素の大量排出。その排出量は、化石燃料消費による排出と土地利用変化による排出を合わせて、2010年-2019年の10年平均で、年に10.9± 0.9 ペタグラム炭素に上る。しかし、それらの二酸化炭素のおよそ半分は、大気と陸の植生と海をめぐる自然界の活発な炭素循環にのって、陸の植生と海に吸収されている。大量の二酸化炭素排出を今後も続ければ、気候変化による陸と海の炭素循環の変化や、海の物理化学的な性質の変化によって、陸の植生や海が大気から吸収する二酸化炭素の割合が減ってゆくために、大気の二酸化炭素濃度の増加を減速させることは、いっそう困難になると予測される。

  • ──AR6における新たな知見
    渡部 雅浩
    2022 年 27 巻 1 号 p. 1_74-1_77
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー

     IPCC第1作業部会(WGI)は、温暖化の自然科学的な側面について評価をまとめてきたが、1990年の最初の報告書以来、変わらない命題が根底にある。それは、「大気中のCO2 濃度が増えたときに、地球の気温はどれくらい上昇するのか」という疑問である。この疑問を中心的に扱っているのが、第6次評価報告書(AR6)第7章「地球のエネルギー収支、気候フィードバック、および気候感度」である。本節では、そのベースとなる考え方と、AR6で得られた新たな知見を紹介する。

  • 高藪 出
    2022 年 27 巻 1 号 p. 1_78-1_80
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー

     IPCC WG1 AR6 で公表される温暖化予測情報の構成について紹介する。IPCCのなかではユーザとの接点として、「気候影響駆動要因」というアイテムが使われている。地域情報といっても、東アジア全域といった広い範囲までの情報を中心に扱っている。日本国内で何が生じるのかを求める為に、我々は国内プロジェクトで地域詳細な情報を出しているが、これとIPCCの報告書の整合性についても記した。さらに、このような情報・知見を国・地方公共団体、事業者などに広く利活用していただくための課題(手入れ)等についてもまとめた。

  • 佐藤 正樹
    2022 年 27 巻 1 号 p. 1_81-1_84
    発行日: 2022/01/01
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー

     日本では近年、台風に伴う暴風雨や線状降水帯等に伴う集中豪雨による激甚災害が多発しており、また夏季の猛暑により熱中症による多数の死者が出ている。このような大雨や高温等の極端な気象現象について、近年どのような変化がみられるのか、また、今後の地球温暖化の進行によりどのように変化するか、IPCC第6次報告書(AR6)レポートで評価されている。本稿では、IPCC AR6第11章の知見をもとに、高温や大雨、台風や温帯低気圧・メソ降水系等の極端気象現象の将来変化について紹介する。

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