『学術の動向』では、ジェンダーに関する特集を幾度となく組み、総合学術誌という特徴を活かして、さまざまな研究分野からジェンダー問題をとらえた論文を多数掲載してきました。 ジェンダーギャップ指数下位の日本とその他の国に生きる人々の現状に鑑み、その一部を集めました。 問題の根源は何でしょうか。日常に刷り込まれた不平等に、気づけているでしょうか。これは過去の話だと言える世界にするために、どうすればよいのでしょうか。 多くの研究者の分析と問題提起、解決への提案をご覧ください。
本稿では、筆者らが女性地方議員に対して実施した「議会活動における参画に関するアンケート調査」に基づき、女性議員が被りやすいいじめ・ハラスメントの特質について検討した。分析の結果、①心理的ハラスメントを中心として、81.0%が同僚議員から、76.2%が有権者から何らかのハラスメントを受けた経験がある、②21.4%は問責決議案や辞職勧告を出される、謝罪を求められるなどの「懲罰的な対応」を受けた経験がある、③懲罰的な対応を受けたことがある者の38.9%は、自らについて話し合いが行われる際に退場が言い渡され、十分に弁明の機会がなかった、④36.9%が会議規則に基づき議会運営委員会や代表者会議に出席ができないと回答していることが明らかとなった。少数派排除につながる制度は、合理的な理由から生まれたものが多い。しかし、その理由を離れて少数派排除につながることもある。少数派排除に対して、ルールの範囲を確定するとともに、問題があるルールの変更が求められる。
2021年に改正された「政治分野における男女共同参画を推進する法律」では、国・地方公共団体に対し、公選による公職等にある者及び公職の候補者について、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産に関するハラスメント等の予防・対応を講じることや、家庭生活との両立環境を整備することを義務化した。この改正にあたり参考とされたのは、労働分野の男女雇用機会均等法や育児介護休業法であるが、例えば、企業内に設置されている相談窓口に相談すると「不利益が生じる」「中立的で公正な窓口でない」と思われたりして、窓口がほとんど利用されていなかったり、法に基づき定められたハラスメント指針の各措置を履行していない組織を国が監督しきれていないなど、両法のハラスメント規定やその運用にも課題がある。本稿では、これら労働法の先行規定やその運用をめぐる課題を明らかにし、議会におけるハラスメント対策等への示唆を得ようとするものである。
情報科学・情報工学は理工系の中でもさらに女性人員比の低い学術分野である。IT技術が日常生活や日常業務に浸透する中で、情報科学・情報工学が人材多様性を確保できないのは問題であるという意識が高まっており、特に女性人材確保のための議論が各所で進んでいる。著者もこの問題に関する個人での調査結果を何度か報告している。本稿ではその調査内容の概要を紹介するとともに、その後の追加ヒアリングを通して感じた点を論じたい。
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