東北森林科学会誌
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12 巻, 1 号
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論文
  • —「いわての森林づくり県民税」検討委員会の分析を中心に—
    岡田 久仁子, 岡田 秀二, 由井 正敏
    原稿種別: 論文
    2007 年 12 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    森林整備を目的に森林環境税を創設する県が増えている。森林の有する社会的共通資本としての性格から,県民ひとり一人が森林整備に責任を持つと同時に管理や利用について意見を持つという新たな森林管理の内容変化がそこにはある。本研究は,そうした事例のひとつとして岩手県をとりあげ,その税制度の形成過程を明らかにし,その段階のいわば県民参加の内容とそこに設定された検討委員会の果たした役割・機能について分析し,今後のわが国森林管理システムのあり方に資そうとするものである。行政機構の外に設けられた新たな森林整備のための検討委員会は,県民参加による施策とその財源の検討を一から積み上げ,県に答申した。しかし,その後の過程において県は多くの変更を加えた。検討委員からの提言を見送っているものも少なくない。検討委員会は必ずしも委員会が当初目ざした成果を得たとはいえない。しかし,この一連の過程そのものが,地方自治体における森林施策づくりにおいて住民参加の点から多くの経験をし,その進展に向けて多くの課題を明らかにしている。
  • 平井 敬三, 森貞 和仁
    原稿種別: 論文
    2007 年 12 巻 1 号 p. 12-20
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    土壌構造を壊さず現地環境により近い条件で測定可能なレジンコア法を適用して野外培養し,表層土壌の窒素無機化の定量を試みた。現地窒素無機化の測定は土壌とイオン交換樹脂からなるカラムを現地に約1年間野外培養し,回収した土壌とイオン交換樹脂中の窒素量をもとに算出した。培養終了後に回収した土壌中に残存する窒素量は少なく,窒素無機化に及ぼす影響は小さかった。また,土壌と樹脂に残存する合計窒素量に占める土壌中の割合は小さく,無機化した窒素の大部分が樹脂中に移動,吸着していた。これらから,レジンコア法による現地窒素無機化速度の定量が可能と考えられた。本研究から得られた表層深さ5cmまでの年間の現地窒素無機化量は20.6〜55.6kgN ha-1yr-1であり,無機化率は1.4〜5.2%であった。A0層および土壌から無機化した窒素量はより乾性な尾根の土壌の方が斜面上部の土壌に比べて多く,またアンモニア態窒素の割合が高かった。尾根の土壌では林内雨,A0層,鉱質土壌からの供給窒素合計量に占めるA0層の割合が斜面上部に比べて高かった。
  • 後藤 忠男, 猪内 次郎, 杉田 久志
    原稿種別: 論文
    2007 年 12 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    岩手県雫石町において,カラマツ林皆伐跡地に天然更新した約8年生のウダイカンバ幼齢木を加害していたハンノキカミキリの羽化,産卵および被害について調査を行った。成虫は5月下旬〜6月中旬の約2週間に集中して脱出した。2年間の脱出調査の結果,岩手県ではハンノキカミキリは1世代に2年あるいはそれ以上を要することが示唆された。雌成虫は産卵のために幹上に縦長の噛痕を付け,その上端に産卵痕を形成した。産卵痕形成は6月中旬〜8月上旬まで約2ヶ月間継続した。産卵痕は林分内では集中分布し,産卵痕数とウダイカンバの胸高直径の間には有意な正の相関が認められた。また,産卵痕は幹上にのみ形成され,幹の高さ60cm以下に81.7%が集中した。コブ,フラス排出,脱出孔といった被害痕数は,木あたり3.75個,立木被害率は82.4%であった。被害痕の林内分布にも集中性が認められ,被害痕数と胸高直径の間には有意な正の相関が認められた。幹上では,被害痕は41-60cmの間に26.1%と最も多く,それよりも上方および下方に向かって漸減した。林分内や幹上の被害痕の集中性は,雌成虫が胸高直径の大きい木および幹の下方部に選択的に産卵することによると考えられた。
  • 杉田 久志, 高橋 健保, 高橋 良一
    原稿種別: 論文
    2007 年 12 巻 1 号 p. 28-36
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    岩手県雫石町の約1,000haの流域における10〜30年生の人工林210林分の調査資料により,人工林混生樹の混交歩合と樹種構成の実態を解析した。混生樹の混交歩合は,アカマツ二次林を伐採して造成したスギ人工林において高い値を示したのを除けば,それほど多雪でもない(最深積雪深150cm程度)ことを反映して,概して低かった。混生樹の優占種は前生林タイプによって異なり,アカマツはアカマツ二次林を伐採して造成した人工林で,コナラ,クリはコナラ・ミズナラ二次林を伐採して造成した人工林で,ウダイカンバ,ホオノキ,ミズキなどはヒバ・ブナ・トチノキ天然林を伐採して造成した人工林でそれぞれ優占していた。それらの樹種は他の地域と共通のものが多かったが,ブナのように他の地域で報告されているのにこの流域ではほとんどみられなかったものもあり,地域的なちがいがあることも示唆された。優占種には,風や鳥により広範囲に種子が散布される樹種や埋土種子バンクをつくる樹種が含まれている一方で,大型種子をもち小動物により散布される樹種もみられた。
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