東北森林科学会誌
Online ISSN : 2424-1385
Print ISSN : 1342-1336
ISSN-L : 1342-1336
15 巻, 2 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
論文
  • —はしごによる樹幹調査の有効性と限界—
    中村 克典, 長岐 昭彦, 小澤 洋一, 高橋 健太郎, 田代 隼人, 板垣 恒夫, 太田 和誠, 星崎 和彦
    原稿種別: 論文
    2010 年 15 巻 2 号 p. 51-57
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    寒冷地では,マツ材線虫病の病徴進展の遅れのためマツの衰弱・枯死時期と媒介昆虫マツノマダラカミキリの成虫発生時期にずれが生じ,マツノマダラカミキリに産卵された枯死木と産卵されない枯死木が混在する。このような枯死木から材線虫病の感染源となる媒介昆虫生息木(要防除木)を選別する方法として,はしごを用いて樹幹上部約10mまでのマツノマダラカミキリの生息状況を調査し,その有効性を検討した。はしごを用いた調査によりクロマツ・アカマツ枯死木の65.9%にマツノマダラカミキリの産卵痕またはフラスを検出した。クロマツでははしごを用いて樹幹の上部まで調べないとマツノマダラカミキリの生息が確認できない場合が多かった。一方,はしご調査でマツノマダラカミキリの生息が確認できなかったクロマツ枯死木を伐倒したところ,その35.7%にはしごで到達できるよりも上部でマツノマダラカミキリの生息が確認され,そのような部分から採取した丸太から翌年夏に材表面積1m2あたり10頭以上の成虫が発生する場合があった。以上から,はしご調査は,すべての要防除木を検出できるわけではないものの,要防除木選別に有効な手段であると結論した。
  • 野堀 嘉裕, 瀧 誠志郎, 本田 愛, 斉藤 正一
    原稿種別: 論文
    2010 年 15 巻 2 号 p. 58-63
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    近年,東北地方南部ではナラ類集団枯損被害が拡大している。森林の炭素吸収機能の評価,また里山の保全のためにもミズナラを主とする二次林の重量成長に関する情報は必要不可欠である。本研究では山形県鶴岡市内の中山間部にあるミズナラ二次林で樹幹解析と軟X線デンシトメトリーにより樹幹部の重量を求め,毎木調査データと合わせてミズナラ二次林樹幹部の炭素重量を推定した。樹幹部の容積密度は30年生以降連年値が急激に低下する傾向がみとめられたが,これは年輪幅の減少に伴い道管部の比率が増大するためと考えられた。樹幹部の材積と重量には極めて高い相関が認められた。毎木調査データから幹材積合計を求め,林分全体の樹幹部の重量を推定したところ,ミズナラの幹材積合計は316.4m3/ha,その他の樹種は168.0 m3/ha,合計484.4 m3/haの蓄積,樹幹部の重量はミズナラが294.4 ton/ha,その他の樹種が63.2 ton/ha,合計で357.6 ton/haと算出された。炭素換算ではミズナラが147.2 ton/ha,その他の樹種で31.6 ton/ha,合計で178.8 ton/haとなった。
報文
  • —北海道と岩手県のクスサン個体群における事例—
    菊池 伸哉, 松木 佐和子
    原稿種別: 報文
    2010 年 15 巻 2 号 p. 64-67
    発行日: 2010/09/30
    公開日: 2017/07/27
    ジャーナル フリー
    北海道では近年,これまで被害報告の限られていたウダイカンバ一斉林においてクスサンが大発生している。本研究では,クスサンの樹種選好性を飼育実験によって明らかにするとともに,ウダイカンバ林での被害が広がっている北海道赤平市と被害が広がっていない岩手県八幡平市の両地域において,クスサンの発生状況について調べた。飼育実験ではウダイカンバを餌としたクスサン幼虫は,シラカンバ,トチノキ,サワグルミを餌とした幼虫よりも個体体重が有意に重かった。選択実験では,シラカンバ,トチノキ,サワグルミを選択する幼虫よりもウダイカンバとクリを選択する個体が多かった。野外調査では,岩手県八幡平市においてもウダイカンバでクスサン幼虫が捕獲され,シラカンバ上で捕獲された個体よりも有意に体重が重かった。しかし,クスサンの卵塊はウダイカンバよりもシラカンバで多く発見された。一方,北海道赤平市のウダイカンバ林においてはクスサン幼虫が多数捕獲されたが,激害林分で捕獲された幼虫の体重は,被害の軽微な林分のそれよりも軽かった。これらの調査及び実験の結果から,今後岩手県においてクスサンによる大規模な被害が発生する可能性について考察した。
feedback
Top