東北森林科学会誌
Online ISSN : 2424-1385
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17 巻, 2 号
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論文
  • 小泉 幸代, 小山 浩正
    原稿種別: 論文
    2012 年 17 巻 2 号 p. 31-35
    発行日: 2012/10/31
    公開日: 2017/07/26
    ジャーナル フリー
    ニセアカシアの根萌芽には,水平根の伸長にともない恒常的に発生するタイプと攪乱などで地上部の幹や水平根が損傷を受けたのを契機に発生するタイプがある。山形県庄内平野を流れる赤川河川敷において124本の根萌芽幹で調べた結果,伸長に伴う発生タイプは74本(59.7%)で損傷を契機に発生したタイプは50本(40.3%)であった。また,損傷を契機に発生したものはすべて潜伏芽由来で,不定芽からの発生は確認されなかった。したがって,ニセアカシアは水平根を伸長しながら新規に萌芽するのと同時に潜伏芽を蓄積し,攪乱や伐採などで損傷を受けた際には,そこからも萌芽を発生させる。潜伏芽は水平根上に高密度で分布していたが,水平根が伸長してから4年までにほとんどが萌芽しており,7年以上経過した部位からの発生は確認されなかった。したがって,潜伏芽は水平根の伸長時点から時間とともに急速に萌芽能力を失うと考えられた。このことは,若くて細い水平根の方ほど萌芽能力が高いことを意味しており,駆除作業の際には,可能な限り細い根も取り除く必要があることが示された。それでも,取り残されて再生する萌芽に対しては,潜伏芽が発生能力を失う数年間までの抜き取り作業が有効と考えられた。
  • 正木 隆
    原稿種別: 論文
    2012 年 17 巻 2 号 p. 36-41
    発行日: 2012/10/31
    公開日: 2017/07/26
    ジャーナル フリー
    渓畔域に分布するトチノキの当年生実生をさまざまな水分条件下で実験的に育てた後,個葉の水分生理特性を計測し,分布の成因が生活史初期の水分生理特性から説明できるかどうかを検証した。温室において当年生実生を4月から9月まで湿潤区(土壌マトリックスポテンシャルの期間内平均値-0.006 MPa),中庸区(-0.015 MPa),および乾燥区(-0.024 MPa)で育てた後P-V曲線法により,充分吸水した時の浸透ポテンシャルΨssat,初発原形質分離を起こす時の水ポテンシャルΨstlpと相対含水率RWCtlp,および体積弾性率εを計測し,さらに比葉面積SLAを測定した。既存の報告にみられる他の樹種のデータと比較した結果,トチノキのΨssatとΨstlpは乾燥した立地に分布できる樹種よりも明らかに高い値を示し,εは低い値を示した。このことはトチノキが乾燥した立地に分布しない事実と整合した。また,乾燥区の葉は湿潤区や中庸区に比べてΨssatとΨstlpの値が低下する傾向はなく,トチノキの当年生実生が乾燥条件に順応する傾向もみられなかった。本研究の結果は,トチノキの分布が渓畔域に偏るメカニズムの一部を説明するものである。
報文
  • 千葉 翔, 小山 浩正
    原稿種別: 報文
    2012 年 17 巻 2 号 p. 42-46
    発行日: 2012/10/31
    公開日: 2017/07/26
    ジャーナル フリー
    河川域で急速に分布を拡大しているニセアカシアの種子について,散布フェノロジーと莢と種子の水に対する浮力試験を行い,流水散布の可能性を検討した。種子散布は9月上旬から12月と長期にわたり,その間は常に4割あるいはそれ以上の種子が莢に包まれた状態で散布されていた。莢に含まれた状態と種子単独の場合で静水と乱流条件の下で浮力時間を比較した結果,莢に包まれている方が静水条件,乱流条件ともに長く水に浮いていた。また,莢の約6割で休眠種子と非休眠種子の両者を含んでおり,それらの莢内では非休眠種子が平均で4割程度を占めていた。本研究の結果から非休眠種子が莢とともに流水散布により発芽適地に到着した場合,新規群落の成立させうることを示唆した。
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