東北森林科学会誌
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19 巻, 2 号
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論文
  • 小山 浩正, 佐藤 充, 東澤 春菜
    原稿種別: 論文
    2014 年 19 巻 2 号 p. 37-40
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2017/07/26
    ジャーナル フリー
    北海道ではブナの豊凶予測技術がすでに確立しており,それによると豊作になる条件は500個/m2以上の雌花が開花し,かつその前年比が20以上になることとされている(種子食生昆虫による食害回避のため)。しかし,開花や食害昆虫の活動は気候条件等に依存すると思われるので,結実条件はどこでも同じとは限らない。山形県では,結実条件として350個/m2以上の開花があれば豊作になると指摘されている(90〜350個/m2で並作,90個/m2以下で凶作;山形版条件とする)。2013年は,県内16林分の間の結実に著しい地域差が生じ,豊作,並作,凶作のそれぞれの作柄がみられたので,山形版の条件を検証するのに適した年であったと言える。そこで,同年にシードトラップで得られた各地の開花データを山形版の条件に当てはめて作柄を推定した。この結果,山形版条件は実際の作柄を簡便かつ高い精度で推定できることが明らかになった。
  • 小林 峻大, 林田 光祐
    原稿種別: 論文
    2014 年 19 巻 2 号 p. 41-50
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2017/07/26
    ジャーナル フリー
    種子の周りに果肉がなく,代わりに果柄部を甘く肥厚させる特異な果実形態を持つケンポナシの種子散布者を明らかにするために,山形県において自動撮影装置をケンポナシの樹冠下に設置し,撮影された動物の個体数をカウントした。加えて,ケンポナシ樹木周辺において動物の糞を採取し,糞に含まれる種子数を数えた。自動撮影装置と糞分析の結果から,出現回数の最も多かったニホンザル,糞中の種子出現率が高かったタヌキとハクビシンがケンポナシの種子散布者として重要であると考えられた。そのうえで,被食種子(動物の糞から採取した種子)と落下種子(地面に落下した果実から採取した種子)の発芽率を比較するため,室内と野外で発芽実験を行った。発芽実験では室内と野外ともに発芽率が低かったことから,被食以外の要因が発芽へ影響している可能性が考えられ,ケンポナシにとって中型哺乳動物による被食は種子分散に貢献していることが推察された。
  • 小山 浩正, 小田野 郁子, 林田 光祐, 高橋 敏能
    原稿種別: 論文
    2014 年 19 巻 2 号 p. 51-58
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2017/07/26
    ジャーナル フリー
    山形県庄内地方のナラ枯れ被害林分と未被害林分のそれぞれ8林分において,林床に出現する低木類の種組成と現存量を調べた。調査林分では低木類が高密度に繁茂している一方で,ミズナラ稚樹はほとんど確認されなかった。林床の相対光量子密度(rPPFD)は,地表0m,高さ0.5mおよび1.5mでそれぞれ2%,4%,8%程度で,低木の刈り払いによる光環境の改善が行われなければミズナラ林として再生は困難と予測された。低木の刈り払いを実施した直後のrPPFDは,ミズナラ稚樹が生育可能とされる20%以上に上昇していた。これら刈り払われた低木類の有効利用を目的として,現存量の多かった3種(オオバクロモジ,リョウブ,ユキツバキ)をチップ化してウシに飼料として与え,嗜好実験を行ったところ,低木チップは特に好まれたわけではないが,飼料としての利用は可能であり,果樹の剪定枝で行われているサイレージ化などで飼料としての価値を高めれば,里山の再生と飼料供給に貢献する選択肢になり得ると考えられた。
報文
  • —山形県金山町立明安小学校林を事例として —
    高橋 文, 大築 和彦, 林田 光祐
    2014 年 19 巻 2 号 p. 59-62
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2017/07/26
    ジャーナル フリー
    山形県金山町立明安小学校の学校林において,選択的刈り払いによる森林整備後に小学3・4年生を対象に森林学習プログラムを行い,森林整備の効果を検証した。整備前は,18年生のスギ林冠下に多様な広葉樹が多数定着していたが,林内観察が困難な状況であった。今回の森林整備によって,スギ樹冠下に約50種の広葉樹を残すことができ,遊歩道から林内へのアクセスも容易になった。また,森林整備によって,高木種だけでなく,小高木種や低木種も残したことで,多様な森林学習プログラムを実施することができた。児童らの自由記載の感想文には樹木の葉に関連した語が頻出していたことから,児童らは今回の森林学習プログラムの意図を理解できたことが検証された。以上のことから,上層がスギ林でも,下層の広葉樹を適切に整備することによって,効果的な森林学習プログラムが実施可能になることが示唆された。
  • 八木橋 勉, 齋藤 智之, 前原 紀敏, 野口 麻穂子
    2014 年 19 巻 2 号 p. 63-65
    発行日: 2014/10/31
    公開日: 2017/07/26
    ジャーナル フリー
    従来,カブトムシ(Trypoxylus dichotomus septentrionalis)が自ら樹皮を傷つけて樹液を得るという報告はなかったが,近年シマトネリコ(Fraxinus griffithii)の樹皮を傷つけて樹液をなめる例が報告された。しかし,シマトネリコは庭木や公園樹として導入された樹木で,本来の分布域は亜熱帯から熱帯であり,カブトムシの分布域とは重なっていない。そのため,この行動がカブトムシ本来のものであるのか不確実であった。本研究では,岩手県滝沢市において,在来種であるトネリコ(Fraxinus japonica)に,野生のカブトムシが傷をつけて樹液をなめる行動を観察した。これにより,この行動がカブトムシの分布域に存在する在来の樹種に対しても行われる,カブトムシ本来の行動であることが明らかになった。
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