マツノマダラカミキリの防除素材として他種穿孔性昆虫の寄生性線虫が有効であるかどうかを検討するため,野外で捕獲したマツノキクイムシを解剖して寄生性線虫の保持を確認するとともに,得られた線虫のマツノマダラカミキリ幼虫への接種を試みた。解剖に供したマツノキクイムシ雌雄成虫 37頭のうち 31頭 (83.8%) の血体腔から最大 132頭の寄生性線虫が検出され,成虫の形態から
Parasitorhabditis属線虫であると判断した。13頭のマツノキクイムシに由来する寄生性線虫 1〜123頭と,マツノマダラカミキリ老熟幼虫各1頭を6cm シャーレ内で共存させて培養したところ,ほとんどの幼虫が正常に蛹化・羽化した。90日経っても幼虫のままだった2頭および,蛹で死亡した1頭を含めたすべての供試虫について,経過観察後の解剖では,体内への線虫の侵入は確認されなかった。ただし,本研究で使用した線虫は寄主への侵入に適した発育ステージではなかった可能性がある。線虫のカミキリムシへの寄生能力を判定し,マツノマダラカミキリの防除素材としての有効性を適正に評価するには,線虫の感染態ステージの特定やそれを用いた接種,カミキリムシの接種対象ステージの検証などについて,さらに実験を行う必要がある。
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