1974年にタベタ地区の3村落の住民に皮内反応と検便, 検尿による住血吸虫卵の検出を試み, 963名の結果について集計を行った。皮内反応の抗原としてはVBS adult
S. japonicum antigen (1 : 10,000dilution) を用い, 糞便と尿の検体は集卵法にて検査した。虫卵陽性率はJipe 62.2%, Eldoro 68.0%, Kivalwa 69.6%であった。Jipeでは主に
S. mansoni, Kivalwaでは
S. haematobium Eldoroでは両種の浸淫が認められた。Eldoroでは男性より女性に虫卵陽性率が高かったが, JipeとKivalwaでは推計学的に虫卵陽性率の有意な性差は認められなかった。虫卵陽性率は小児では年齢と共に上昇し, 5歳と14歳の間で最高値に達し, 以後次第に減少した。皮内反応の陽性率は全体で76.4%で, 虫卵陽性率より高い。小児では虫卵陽性者の多数で, 皮内反応は弱いか或は全く反応を呈さなかった。
皮内反応陽性率は年齢と共に増加し, 40歳以上の住民では95%に達した。Jipeでは女性より男性に皮反内応陽性率が高かったが, EldoroとKivalwaでは性差は認められなかった。虫卵陽性の者では
S. mansoni感染者と
S. haematobium感染者の間に皮内反応の差は認められなかった。
1975年にJipe, Kivalwa, Kuwahoma, Chalaの村落住民に検便と検尿を行った。Kuwahomaでは
S. haematobiumの浸淫が認められた。Chalaでは住血吸虫の感染は稀であった。この限られた地域にそれぞれ
S. mansoni,
S. haematobiumの感染が流行する村落, 両種の感染の流行する村落が存在することが確認された。これら両種の住血吸虫症の流行する地域の疫学的調査に於て, 皮内反応にVBS adult
S. japonicum antigenを, 検便, 検尿に集卵法を用い得ることが明らかにされた。
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