長期的に人口減少の持続する地方において担い手として若者に注目が集まっている.しかし若者研究の分野では,若者の公的な参加に注目した研究は少なく,もっぱら私的な領域における若者の生態に関心が寄せられてきたまた近年では地方暮らしの若者を対象とした研究も増え,地域参加といった親密な関係性に回収しえない「新しい公共性」が注目されているが,若者の政治参加を含めた質的検討はない.課題先進地域である地方において,若者がいかなる形で政治的意思表示を行い,地域の共同を担っているのかを明らかにすることは重要である.
以上をふまえ,本稿では政治参加を中心とした若者の公的側面の研究を進めるため,投票参加と地域参加についてのインタビュー ータを用いた分析を行い,次の知見を得た.まず,投票参加については,家族による声かけや地域の目を意識して,特に判断基準を持たずに行く非自立的政治参加と,自ら候補者情報を集めて参加する自立的政冶参加が確認された. 次いで地域参加では受動的 地域参加と,課題を発見し自ら実践を行う能動的地域参加が確認された.以上の政治/地域における参加のあり方を分類するマトリクスを作成し,4つの公的参加の類型を提示した.
私化や経済的自立の困難といった都市の若者研究の視角が「地方暮らしの若者」にも適用される一方で,本稿は若者研究の死角であり続けてきた公的領域における若者の多様な現れを検討し,参加のあり方を規定する規範的力や社会的属性について明らかにしている.
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