東海社会学会年報
Online ISSN : 2435-5798
Print ISSN : 1883-9452
11 巻
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  • 自動車産業就労をめぐるネットワーク形成と「半周辺的地位」を中心に
    丹辺 宣彦, ハヤシ ブルーノ・ナオマサ
    2019 年 11 巻 p. 40-54
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/03/25
    ジャーナル フリー
    日系ブラジル人たちの集住地として知られる豊田市保見団地は,その来住から30年近くが経過し, 出入りが多いなか定住層も形成されてきている. 本稿は, 2016年に同地区で実施したブラジル人・日本人住民向け質間紙調査のデータとヒアリングを基に, 定住化にともなうネットワーク形成と, 自動車関連産業への就労と影響について検討する. その結果, 居住長期化とともにブラジル人たちは同国人を中心とした社会的ネットワークを蓄積しており, 親族・友人ネットワークを活用した就労, とりわけトヨタ関連企業への正規就労にむすびついていることが判明したただし, 自動車産業への正規就労は, 勤続が長くなっても仕事の満足度や階層帰属を高めるものになってはいなかった. 日本語能力が十分でないため人的資本が活かせず, 集団主義的な職場秩序への適応も難しく, 「偏見を感じる」とする人の割合も高くなっていた. 雇用機会の多い産業都市集住地では, 定住化にともなうネットワーク形成 と正規就労が一部グループでみられるものの, 「半—周辺的」地位にとどまる傾向が同時に確認された.
  • 広島県豊田郡大崎上島町在住の若年層を対象として
    竹内 陽介
    2019 年 11 巻 p. 55-71
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/03/25
    ジャーナル フリー
    長期的に人口減少の持続する地方において担い手として若者に注目が集まっている.しかし若者研究の分野では,若者の公的な参加に注目した研究は少なく,もっぱら私的な領域における若者の生態に関心が寄せられてきたまた近年では地方暮らしの若者を対象とした研究も増え,地域参加といった親密な関係性に回収しえない「新しい公共性」が注目されているが,若者の政治参加を含めた質的検討はない.課題先進地域である地方において,若者がいかなる形で政治的意思􀀗表示を行い,地域の共同を担っているのかを明らかにすることは重要である. 以上をふまえ,本稿では政治参加を中心とした若者の公的側面の研究を進めるため,投票参加と地域参加についてのインタビュー ータを用いた分析を行い,次の知見を得た.まず,投票参加については,家族による声かけや地域の目を意識して,特に判断基準を持たずに行く非自立的政治参加と,自ら候補者情報を集めて参加する自立的政冶参加が確認された. 次いで地域参加では受動的 地域参加と,課題を発見し自ら実践を行う能動的地域参加が確認された.以上の政治/地域における参加のあり方を分類するマトリクスを作成し,4つの公的参加の類型を提示した. 私化や経済的自立の困難といった都市の若者研究の視角が「地方暮らしの若者」にも適用される一方で,本稿は若者研究の死角であり続けてきた公的領域における若者の多様な現れを検討し,参加のあり方を規定する規範的力や社会的属性について明らかにしている.
  • グリーンツーリズムの拠点開発に対する住民意識
    三田 泰雅
    2019 年 11 巻 p. 72-84
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/03/25
    ジャーナル フリー
    本稿では,グリーンツーリズムの拠点開発構想に対する態度の規定要因を明らかにする. 「消費される農村」論の立場に立てば,グリーンツーリズムは一種の「農村空間の商品化」である.いっぽうで,農村の住民みずからが「消費される」立場を主体的・戦略的に選んでゆく傾向も指摘されている. いずれの場合も,活動的な住民の姿が取り上げることが多く,後景に退きがちな一般住民がどのような態度を示すのかは明らかになっていなかった. そこで本稿では,三重県いなべ市のA地区で行なわれた質問紙調査データをもちいて,拠点開発を支持した人々は誰なのかを明らかにしようとした. 具体的には,調査以前に拠点開発の構想を知っていたかどうか,拠点開発の構想を支持するかどうか,の2点について,回答の分化とその規定要因を検討した.その結果,「活性化構想」は一部の住民にだけ支持されていること,支持している住民は地域への愛着を強くもつ地域のリーダー層であったこと. 40~59歳の人々は賛成と反対の中間的立場になりやすいこと,支持しない住民はリーダー層と接点の少ない人々であったこと,などが明らかになった.この結果から,強固な住民組織をもつ地区であってもリーダー層と一般住民の意見の乖離は無視できないこと,またリーダー層との社会的距離が賛否の意見を規定していることがわかった.
  • 父親の語りにおける父・娘関係に着目して
    浅沼 裕治
    2019 年 11 巻 p. 86-98
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/03/25
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,父子家庭の父親の子育てに関して,とりわけ「娘」が示す特有の興味•関心・身体的変化への対応の困難性を考察することである.これまでの父子家庭研究は,父親とは性別の異なる子どもを育てる困難の考察が等閑視されているように思われる.本稿では,この点に主たる焦点をあて,父子家庭の父親へのインタビューにおいて得られたデータについて,テキストマイニングを中心とする分析により考察を行った.そして,①父親の養育困難として,娘の発達段階によって発現する一般的に女性(女児)特有の典味•関心や身体的変化により,男児を養育する場合とはケアの困難の要素が異なること,②そうした女性(女児)特有の困難への対処として,自身の母親等の異性の親族が対応しているケースがあるが,家族機能の縮小等によって,こうした協力関係の維持が脆弱になっているため,父親が内面化しているジェンダー規範をふまえた代替的支援の可能性について考察を行った.
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