特殊教育学研究
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15 巻, 3 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 鈴村 健治
    原稿種別: 本文
    1978 年 15 巻 3 号 p. 1-14
    発行日: 1978/03/15
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    重度精薄児の自発的行動がどのようなものであるか、またその共通性と差異性の割合がどの程度か自然観察法を用いて調べてみた。質的にも量的にも精神発達が行動に及ぼす影響は大きいが、質的には共通する面がかなりあることが明らかにされた。特に開放的な場では閉鎖的な場よりも似かよった行動が生起しやすい。また精神発達レベルが低いと外的条件に比較的影響されない行動において共通性と差異性がみられるのに、高くなるにつれて外的条件に対応した共通性と差異性が生じるようになる。個体間においては質的には精神発達と共に、量的には生起率において差異が大きいことが本調査において明らかにされた。
  • 中村 満紀男
    原稿種別: 本文
    1978 年 15 巻 3 号 p. 15-26
    発行日: 1978/03/15
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    重度・重複障害児はますます困難な課題を教育に投げかけているように思われる。この解決は従来の学校教育的観点の根本からの再検討を要すると思われる。ここでは歴史的再検討という立場からアメリカ合衆国の1845年までの白痴教育導入過程をとりあげる。本稿は、19世紀中葉という時点でなぜ重度な子どもの教育を目的とした学校が設立され、それが保護収容的な施設へ変容していったのかを検討する前段階の作業であるが、次の点が明らかにされた。1)救貧対象である貧困狂人の一部として扱われてきた白痴が、狂気治癒説で不治者としてまず分離し、2)次いで狂院での臨床によつて独自の地位を占めた。3)しかしそれは狂院からの排除に結果した。4)聾唖院、盲院では軽度な白痴教育の多少の試みはあったが、自立できないために退学になり、従って白痴教育を導く直接的な要素とはならない。5)ヨーロッパの白痴教育情報に敏感に反応したのは狂院の医師であり、彼らにはその要素があった。6)しかし白痴および白痴教育のイメージはこの時点では甚だあいまいであった。
  • 太田 千鶴子, 小林 重雄
    原稿種別: 本文
    1978 年 15 巻 3 号 p. 27-33
    発行日: 1978/03/15
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    ほとんど無発語状態に近い脳性マヒ児に、筋弛緩訓練とオペラント条件づけを用いた言語訓練を行った。肩、首、胸のリラクセーションと、舌と下あごのコントロールを行い、社会的強化とトークンを強化因として構音拡大を行った。8ヵ月間の訓練の結果、ママ、パパを初めとする単語20語と、単音31音を獲得したが、自発的な言語として使用するには至らなかった。
  • 古川 宇一
    原稿種別: 本文
    1978 年 15 巻 3 号 p. 34-46
    発行日: 1978/03/15
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    中部太平洋岸の小漁村における成人知的遅滞者の生活状況の特徴とその社会的背景について検討した。資料は知的遅滞者の家族・職場関係者、村人との面接資料、および関係事務所の文献資料である。世帯数371、カツオ・マグロ遠洋漁業を主産業とするこの村では、男子知的遅滞者は1人前に働きうる存在であり、就業し家庭を持っているものが多い。女子の場合、結婚するか、さもなくば次世代の家族に扶養されている。村人の態度は受容的であり、知的遅滞が問題になることは比較的少い。このような知的遅滞者の生活状況を支える社会的背景として、地域社会の主産業である漁業の技術的単純性、職場適応への良い教育環境、職場・地域社会における強い血縁的紐帯、漁業利益配分における古い平等原則の残存、世帯間の生活様式の類似性、家計収入面での利害の共有性、古くからのつきあいの緊密性、しつかりした家制度の残存などの要因が考えられた。
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