特殊教育学研究
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15 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 須藤 貢明
    原稿種別: 本文
    1977 年 15 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 1977/07/15
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    正常児と機能的構音障害児の文の再生率を、文を樹形図で表記したときの階層の数と自立語の数を変数として構成した文に関して測定した。1,3,5年生の正常児のべ14名とそれらの学年に相当する機能的講音障害児のべ25名に、音声で提示した文を口頭で直後再生させた。その語音を検者が文字化して、a)文法的文という観点から処理した再生率とb)系列刺激項目という観点から処理した再生率を求めた。その結果、正常児の再生率はa)で91%、b)で72%であった。機能的構音障害児の再生率はa)で77%、b)で57%であった。そして、これらの再生率は5%のt検定で統計的に有意な差であった。また、これらの再生率は両被験者群で発達的な様相を示した。そして文を階層の数と自立語の数で分類したとき、どの項についても正常児が高い再生率を示した。
  • 中島 和夫, 片桐 和雄, 松野 豊
    原稿種別: 本文
    1977 年 15 巻 1 号 p. 14-22
    発行日: 1977/07/15
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    視野内に出現する光刺激によって誘発される眼球の反射運動の発現様式を、MAが2〜10歳台にある知能障害児77人を対象として、EOG記録をもとに分析した。また、この反射運動を指標として視野測定を試みた。主な結果は以下の3点である。1.眼球の反射運動の発現様式に特徴的な3つのタイプが抽出された。すなわち、A:単純光刺激によって反射運動が高頻度に誘発される、B:刺激に一定の信号的意味が与えられると、反射運動の出現率が顕著に高まり、持続的に生起するようになる、C:その事態においても、比較的すばやく反射が抑制される傾向を示す。これら3タイプは発達レベルに対応した特徴であると考えられ、MAでいえば、ほぼ3〜5歳(A)、5〜6歳(B)、6歳後半〜7歳台(C)に相当する。2.そのような特徴を示す眼球の反射運動と、必要に応じて、言語応答、随意的固視移動を指標として、耳側方向の視野測定を試みた。その結果、全被験者についてテスト光のみえる視野の範囲を測定することができた。その際、各被験者において最も客観的で信頼性の高いと判断された指標は、MA6歳以下の場合はその80%以上が眼球の反射運動であった。また、被験者の1部(18人)に実際に周辺視野計法で視野測定を実施して、その結果と対照してみて言えることは、反射的眼球運動をその発現様式にみられる発達的特性を考慮して利用すれば、通常の方法では視野測定が困難である発達段階6歳以下の被験者でも、ほぼMA2歳台までは測定が可能になるであろう、ということである。3.このようにして得たテスト光のみえる視野の範囲のデータから、発達段階、特にMAの上昇に対応して視野も拡大するという結果を見い出した。これは、これまでの視野研究でわれわれが得た知見を支持するものである。今回のデータは、特に、方法的制約からこれまで対象としえなかったMA2〜6歳台の知能障害児56人をも含んでいるという点で、非常に意味あるものと考えられる。
  • 冨安 芳和, 松田 惺, 村上 英治, 江見 佳俊
    原稿種別: 本文
    1977 年 15 巻 1 号 p. 23-34
    発行日: 1977/07/15
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    「ABS適応行動尺度」日本版の標準化に用いたデータ(12才以下児童1971名、13才以上青年・成人4121名)に基づき、尺度第1部、第2部を合わせた場合の適応行動の構造についての分析を試みた。1.尺度第1部の27下位領域、第2部の13領域を合わせ40個の変数に基づく完全セントロイド-バリマックス法による因子分析を行ない、"身辺自立"、"社会適応"、"個人的・社会的責任"、"反社会的・攻撃的行動"、"自己刺激的行動"と名づけられる5因子が抽出された。前3因子は、尺度第1部27下位領域を変数とする分析で明らかにされたものであり、後2因子は、尺度第2部13領域を変数とする分析で現われたものである。因子軸に関して、尺度の第1部と第2部、すなわち、適応行動の技能的側面と行動上の問題の側面とは独立であることがわかった。2.この5因子構造は、主因子-バリマックス法による分析においても再現された。また、年齢、MILによって分析対象を細分した場合にも、一貫して現われることが付言された。3.40変数についての分析においても、"身辺自立の因子"と"社会適応の因子"の寄与率(Vp%)における発達的変化が再確認された。以上3報にわたり報告されてきた直交解による因子分析では、かならずしも単純構造を得ることはできなかったが、これらの分析が、精神遅滞者の適応行動とその測定に関する今後の研究の礎石となることが述べられた。
  • 窪島 務
    原稿種別: 本文
    1977 年 15 巻 1 号 p. 35-45
    発行日: 1977/07/15
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本論文の目的はドイツ民主共和国(DDR)の補助学校(Hilfsschule)の教育目的に検討を加え、更にその問題点を考察することにある。その際、教育日的定立にあたって,社会的要求と個人的発達の要求との間にいかなる統一がうちたてられるべきか、ということを分析の視点とした。第1に、DDR教育学の一般教育目的としての全面的に発達した社会主義的人格の概念の内容を明らかにし、第2に、その一般教育目的と障害児教育目的、とりわけ補助学校教育目的との連関を見た。第3に、DDRにおける障害児教育目的とそれに規定される補助学校生徒の構成に視点をあて考察した。そこでは、全面的調和的に発達した社会主義的人格の形成という教育目的が補助学校の対象を一定の能力を基準に限定することになった論理を究明した。最後に、以上の論述をふまえて、DDRの補助学校教育目的定立の方法に若干の批判的考察を加える。
  • 角本 順次
    原稿種別: 本文
    1977 年 15 巻 1 号 p. 46-53
    発行日: 1977/07/15
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    フロスティック視知覚発達テストがわが国でもさかんに用いられるようになって来た。このテストは1958年にフロスティックらの手で考案されて以来改訂を重ねて、アメリカではいまや「学校や臨床の場でしばしば無差別に用いられている」といわれるほどに普及している。さらにこのテストは、これにより発見された視知覚機能の欠陥を訓練するプログラムを伴っており、治療に直結する診断具という特徴を持っているところから、教育現場において非常にうけ入れやすいものとなっている。しかしながら、このテストおよびプログラムには理論的、実用的両面における問題点もあり、それらを十分認識した上での適切な使用が必要である。ここではそれらを検討した諸研究を概観し、問題点を整理して今後に資したいと考える。
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