特殊教育学研究
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16 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 位頭 義仁, 片平 宏二
    原稿種別: 本文
    1979 年 16 巻 3 号 p. 1-7
    発行日: 1979/03/15
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    精神薄弱児に保存概念を獲得させるためには、可逆性と相補性のどちらを指導した方がより効果的であるか、この2つはどちらを先にして組みあわせた方がよいか、について明らかにする。次に、精神薄弱児は体積の保存概念をもつことができないといわれているが、これを否定する論文(Lister,1969)もあり、この問題を検討する。被験児は軽度精神薄弱児で、これを等質な2グループにわけ、可逆性と相補性をべつべつに指導した。続いて2種類の体積の保存テストを課し、彼らが真に体積の保存を獲得できたかどうかをみた。結果、(1)保存概念の獲得のためには、相補性より可逆性を訓練する方が有効であった。(2)相補性と可逆性を組みあわせて指導するとき、どちらを先にしても同じ結果を生じた。(3)被験児の大部分は液量や重さの保存概念を獲得できたが、その転移効果として体積の保存は獲得できなかった。
  • 尾崎 康子, 堅田 明義, 寿原 健吉
    原稿種別: 本文
    1979 年 16 巻 3 号 p. 8-18
    発行日: 1979/03/15
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    精神薄弱児の視覚的探索行動について、先行研究(S.Rosenberg,1969)で用いた課題と同じ課題を行い、課題遂行時の注視点の移動を記録した。そして、先行研究の問題点を再検討するとともに、探索過程を解析的に検討した。探索課題として、探索目標の写しが選択肢と同時に呈示される同時条件の課題と、両者が継時的に呈示される継時条件の課題を行った結果、精神薄弱児は継時条件において著しい探索の困難さを示した。
  • 田中 道治
    原稿種別: 本文
    1979 年 16 巻 3 号 p. 19-26
    発行日: 1979/03/15
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は、失敗経験後の精薄児の成功の期待における個人差に注目して、特に社会的強化の効果の相違を検討することを目的として実施された。そこで、次の仮説が設定された。(仮説)失敗経験後、成功の期待をより低めた精薄児(DMR群)は、それをより高めた精薄児(IMR群)に比べて、おとなからの支持や承認に対してより敏感に反応し、そのために高い遂行をもたらすであろう。被験者として、実験的に操作した失敗後、確率課題の遂行過程で成功の期待を高める反応傾向を示した精薄児8名と、それを低める反応傾向を示した精薄児8名を対象とした。被験者は、いずれも小・中学校の特殊学級に在籍する家庭在住精薄児であり、主に家族性精神薄弱であった。実験は、単純な飽和課題であるマーブル入れゲームが行なわれ、その遂行中に実験者から言語的強化が施された。その結果、(1)DMR群の方がIMR群に比べて、より長い遂行時間を示し、より多い遂行量を示し、許容マーブル最大数の使用の者の割合いが高かった。(2)誤反応数では、DMR群の方がIMR群に比べて、より少なかった。(3)Part間の比較において、DMR群がPart IからPart IIにかけて、遂行時間および遂行量を増大させるのに対して、IMR群は、逆にそれらを減少させる傾向を示した。こうした結果から、(仮説)はほぼ検証されたといえる。そしてし以上のような結果は、成功の期待に関して、失敗経験-特におとなの負の言語的強化-に対する精薄児の感受性の個人差が認められることを知らせる。しかしながら無強化群の設定による社会的強化の更なる検討や実験者効果の検討などが必要であり、それらは今後の課題として残された。
  • 星野 常夫
    原稿種別: 本文
    1979 年 16 巻 3 号 p. 27-36
    発行日: 1979/03/15
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は、照合的特性をもつ図形が精神薄弱児・普通児の知覚的好奇心を引き起こす効果について検討した。あわせて従来の研究で、知覚的好奇心の指標とされてきた注視時間と選択反応の測定についての検討を行なった。その結果は次の通りである。(1)照合的特性をもつ図形と普通の図形を同時に呈示した場合、精薄児は普通児と同じく前者に、より長い注視時間を費した。この傾向は女性よりも男性に明確であった。また呈示時間が長くなると両図形への注視時間の差はなくなった。(2)照合的特性をもつ図形と普通の図形を同時に呈示した場合、普通児の方が前者の選択はやや高かったが50%以下であった。性差は明らかにならなかった。(3)各被験児ついて注視時間の長さと選択率の相関を求めた結果、かなり高い相関がみられた。(4)いずれを指標にしても知覚的好奇心は測定されるが、注視時間の方に強く表出していると考えられる。
  • 今津 博市
    原稿種別: 本文
    1979 年 16 巻 3 号 p. 37-48
    発行日: 1979/03/15
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    精神薄弱について、皮膚電気刺激を無条件刺激、音を条件刺激として血管反応条件反射の形成、汎化現象、分化形成、信号の意味の変換等の実験を多田考案の方法で行なった。また諸種類型とそれらとの相関を検討した。本研究の目的はこれらの状態を知ると同時に教育治療を科学的理論的に探求模索する点にある。その結果、精神薄弱児では条件反射形成に多くの強化を必要とし、分化形成、信号の意味の変換などは困難であった。知能指数等と条件反射形成の難易性に有意差はなかった。また、分化形成で病理的なものが形成され易かった。高次神経活動からみた基本型で、条件反射形成は速く、分化形成も容易な傾向を認めた。分化形成容易症例は臨床的に、おとなしく従順で努力的といった傾向がみられた。同時に信号の意味の変換も敏感に反応し易い傾向を認めた。また、超限抑制についても論じ、精神薄弱児教育の実践について若干の示唆するものを得た。
  • 太田 千鶴子, 小林 重雄
    原稿種別: 本文
    1979 年 16 巻 3 号 p. 49-56
    発行日: 1979/03/15
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    31の単音と20の単語を発語できるが、単音と単音の連続がなめらかに発語できず、音声表象と言語運動の結合が弱い脳性マヒ児に言語訓練を行った。スムーズな単語連続音を形成するため、呼気持続の練習と、子音+母音+子音のわたり練習を行った。また、音声表象と言語運動の結合をプロンプトするため、ろう児の言語訓練で使われているcued speechを参考にして考案された視覚的手がかりを用い、言語運動想起の手がかりを与えた。これらの練習を通じて、12セッションの中に新しく17音と36語を獲得し、自発的にキューを用いて9語を発語することが可能になった。
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