特殊教育学研究
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18 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 円井 操, 鈴木 恵子
    原稿種別: 本文
    1980 年 18 巻 2 号 p. 1-6
    発行日: 1980/09/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    動作訓練によって脳性まひ児の動作不自由が著しく改善されることについては、多くの報告がなされている。本論文は、弛緩訓練を実施した1人の子どもの症例をとり上げ、弛緩訓練のみでどのように動作の変容がなされるのかを検討し、あわせて弛緩のもつ意味についても検討を加えるものである。訓練は、週1回の定例訓練を主とし、約3ヵ月間の経過をまとめたものである。結果として、(1)、弛緩訓練だけで種々の日常動作に著しい変容をもたらす。(2)、ゆるみの受容についてみると、最初の段階では、弛緩訓練によってそれまでとは違った身体感覚がもたらされ、その結果、反動的に不安緊張の一時的な増加がもたらされるが、ゆるみが受容されると、その部位に動作が出現する。(3)、動作変容の経過には、一時的な崩れが生じるが、この崩れは、次のより高次な動作出現のまえぶれになるということが明らかになった。
  • 中井 滋
    原稿種別: 本文
    1980 年 18 巻 2 号 p. 7-17
    発行日: 1980/09/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    脳性マヒ児の前腕回外運動訓練にEMGバイオフィードバック法を適用した研究の報告である。4才〜10才の痙直型脳性マヒ児、12名の被験者の上腕二頭筋から誘導されたEMGを聴覚・視覚刺激としてフィードバックし、回外運動訓練を行った。また拮抗筋として撓側手根屈筋を選定し、EMGの上から主動筋と拮抗筋の関係についても検討を加えた。その結果として、訓練全体を通しての訓練効果は認められたが、フィードバック刺激を与えた時の訓練効果と、フィードバック刺激を与えない時の訓練効果の間に明確な差は出されなかった。またIQ、UMQ、CAを高、低に分けて訓練効果をみた場合、IQ、UMQでは高グループに、CAでは低グループにより高い水準で訓練効果を認めた。EMGの面から、回外運動時に主動筋と同様に拮抗筋にも筋放電の増大が認められ、同時収縮か手部の無関係な運動が起こったことが判明した。
  • 新美 明夫, 植村 勝彦
    原稿種別: 本文
    1980 年 18 巻 2 号 p. 18-33
    発行日: 1980/09/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    心身障害幼児をもつ母親のストレスを、質問紙による心理尺度によって計量的に把握することを企図し、第一段階として、ストレス尺度の構成を試みた。母親の生活全般を網羅するという観点を満たすべく、尺度項目の収集作業は、障害児の母親の面接調査、および、障害児福祉業務従事者の質問紙調査を中心として行なわれた。収集された項目は、ストレス尺度構成のための試案(暫定尺度)とするべく検討がなされ、29下位尺度、合計164項目に整理された。この暫定尺度を障害幼児の母親に実施し、646名の有効票を得た。このデータに基づいて、各下位尺度ごとに主成分分析が行なわれ、固有値、負荷量の状況、α 係数の変動などの勘案による分析を経て、最終的に、25下位尺度、115項目で尺度が構成された。また、恣意的にではあるが、外的基準を設定し、それとの妥当性を、判別分析などによって検討し、ある程度満足のできる結果を得た。
  • 前川 久男
    原稿種別: 本文
    1980 年 18 巻 2 号 p. 34-44
    発行日: 1980/09/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    精神遅滞児における複雑な視覚刺激(絵画)の探索活動を、視覚刺激の各部分の情報性を一対比較法により尺度化することにより、定量的に解析した。刺激提示の間の凝視点の移動はE.O.Gによって記録した。その結果、精神遅滞児は、正常児、成人より情報性の低い部分にも高い部分にも同じように凝視する傾向があり、結果として情報入取量が低くなるという情報探索方略の不適切さを示した。さらに、精神遅滞児は、凝視時間においては平均凝視時間が正常児や成人より短かく、時間経過に伴って凝視時間が正常児・成人では変化するが、変化しないことが示された。
  • 都築 繁幸, 草薙 進郎, 板橋 安人
    原稿種別: 本文
    1980 年 18 巻 2 号 p. 45-52
    発行日: 1980/09/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は聴覚障害児の文理解の特徴を明らかにしていくための一つの試みとして文理解の測定方法論的観点に立って正誤判断法と動作法に基づき、正誤判断法の成績で聴覚障害児群を2群に分けて両群の動作法の成績を比較した。その結果、単文能動文の一部に差がみられたが、その他は顕著に差はみられなかった。又、正誤判断法の成績と動作法の成績との相関は顕著にはみられなかった。本研究は、小学部4年から6年までの児童が対象であり、中学部以降においては新たな分析が必要であろう。というのも、動作法に対するスキルの程度が中学部以降では異なることが予想されるからである。又、今後は、統語論的な能力がある程度あれば文理解が促進されるというcriticalな水準を検討していくことも必要であろう。
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