特殊教育学研究
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19 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 佐藤 泰正, 塙 和明
    原稿種別: 本文
    1982 年 19 巻 4 号 p. 1-7
    発行日: 1982/03/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    点字触読速度の発達について、全国の盲学校児童、生徒572名を対象に、点字触読力検査を実施した。本検査は総合読書能力診断検査(1959)より選択された問題から構成されており、小学校低学年用、小学校高学年用、中学生用の3種類が作成された。検討方法として、単位時間内に回答した問題数と、正解問題数を基準に、点字触読速度、正確度を算出し、その発達傾向を求めることにした。その結果、小学校低学年時期に、点字触読速度が大幅に発達し、それ以後の学年では、発達が次第に緩慢になる傾向がみられた。正確度についても、同様に小学校低学年段階に発達が急速に伸長し、その後はほぼ90%程度の正確さを保持するような結果が得られた。本研究と同一問題、同一手続きによって実施された先行研究(1966)との比較では、各学年ともに有意な差はみられなかったが、小学校低学年段階で一貫した本研究での成績の優位性から、初期の点字指導に改善があったと推測された。
  • 早坂 菊子, 内須川 洸
    原稿種別: 本文
    1982 年 19 巻 4 号 p. 8-25
    発行日: 1982/03/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    言語発達に遅れのある3才幼児30名の母親たちに、筆者らの考案作成した調査用紙を用いて、乳児期初期の母子関係について調査面接し、同時に実施した正常幼児60名の結果と対比した。これによって臨床上問題とされる「おとなしさ」の実態が母子言語関係の貧困さを表わしているという臨床仮説の検討を行なった。面接調査によって得たデーターは、項目毎に集計され、%を算定、これをもとにして幼稚園×保育園、幼稚園×遅滞児、保育園×遅滞児、幼稚園+保育園×遅滞児のそれぞれの間でX^2検定を行なった。有意差のみられた項目を選出し考察したところ、(1)言語発達遅滞児の乳児期にみられる「おとなしさ」は母子言語関係の貧困さと大きな係わりをもつこと、(2)母子言語関係の豊かさは、学歴とも関係していること、が明らかになった。
  • 小宮 三弥
    原稿種別: 本文
    1982 年 19 巻 4 号 p. 26-35
    発行日: 1982/03/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    ダウン症児の異なった知覚様相間における弁別について、簡単な幾何学図形を用い、提示条件との関連において実験的に分析しようとした。すなわち、触知覚と視知覚の間の弁別について、観察は触知覚により、反応時(再認)は視知覚によって、あるいは観察時が視知覚のばあい、反応時は触知覚によるというように、観察時の知覚様相と弁別時の知覚様相が異なる方法による弁別反応を、刺激図形の提示のし方との関連によってどのように異なるかが2つの実験によって検討された。実験Iでは、継時提示によるばあいで、2つの条件が設定された。それは、刺激図形を触知覚で観察したのち、視知覚で弁別する触知覚-視知覚条件と、視知覚で観察したのち、触知覚で弁別する視知覚-触知覚条件である。実験IIは同時提示による知覚様相間の弁別について、2つの条件で検討された。1つは、刺激図形の観察を触知覚で行ないながら視知覚で弁別するという、触知覚-視知覚条件、他の1つはその逆で、視知覚で観察しながら、触知覚で弁別するという視知覚・触知覚条件である。被験者は、実験Iと実験IIを合わせて、ダウン症児44名、非ダウン症児44名、普通児44名の計132名である。なお、非ダウン症児のMAとIQは、ダウン症児のMAとIQに大体対応するものが選ばれた。また、普通児のCAは、ダウン症児のMAに大体対応させて選ばれた。その結果、つぎの2点が見出された。(1)継時提示によるばあい、ダウン症児は、触知覚-視知覚条件、視知覚-触知覚条件ともに、非ダウン症児と普通児より劣った弁別成績を示す。(2)同時提示によるばあいの知覚様相間では、ダウン症児は、触知覚・視知覚条件と視知覚・触知覚条件のどちらも、非ダウン症児と普通児との間に、弁別反応で明白な差異はみられなかった。以上のことから、ダウン症児の触知覚様相と視知覚様相の間の弁別反応は、刺激図形の提示のし方の相違によって、影響をうけることが示唆された。
  • 田畑 光司
    原稿種別: 本文
    1982 年 19 巻 4 号 p. 36-44
    発行日: 1982/03/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    精神薄弱児の自律神経系活動のうち、指先容積脈波振幅に発現する自発性変動について、正常児と比較研究を行なった。被験者は正常群15名および精薄群40名であった。精薄群はさらに成因不明型、病理型群、ダウン症群と、障害の成因別に3つの下位群にわけられた。安静15分間における指先容積脈波の記録について、相対振幅値を評定し、振幅の分布ヒストグラムおよび変動係数を算出した。その結果、振幅の分布ヒストグラムの広がりは、正常群が精薄群よりも大きく、変動係数も大きかった。また、3下位群は、それぞれ独自の分布の広がりと、時間経過上の変化とを示すことが予想された。これらのことをもとに、指先容積脈波振幅の自発性変動の処理の方法と、精薄群における自律神経系活動の1つである指先容積脈波振幅の自発性変動の特性とが指摘された。
  • 山田 欣徳
    原稿種別: 本文
    1982 年 19 巻 4 号 p. 45-50
    発行日: 1982/03/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本論稿は、諸論者により指摘されていた障害児教育におけるBrown判決の影響を、障害児教育判例において実証することを主たる目的とした。米国における1970年以降の障害児教育判例を検索した結果、173例のうち15例がBrown判決を引証していた。諸論者の見解では、障害児教育におけるBrown判決の影響は、(1)障害児教育訟証の契機かつ原動力となった点、(2)障害児を対象に教育の機会均等を推進した点、(3)障害児の統合教育を支持した点である。関係判例を分析した結果、Brown判決が、(1)教育の重要性、(2)平等保護、(3)司法積極主義の3点で先例となっていた。しかし、障害児の統合教育に直接的に寄与していなかった。概して、Brown判決が障害児教育判例の先例として重要な意義を有していることが明らかになった。
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