本研究は、精神遅滞児教育における授業過程の実態を明らかにするための基礎的研究として、授業分析の方法を検討することを目的とする。分析カテゴリーは、Flanders,N.A.の相互分析カテゴリー(FIAC)に修正を加えた授業分析カテゴリーを用い、精神遅滞児養護学校(3学級)、精神遅滞児特殊学級(3学級)の授業を対象とし、授業記録をもとにカテゴリー分類を行った。その結果、授業分析カテゴリーは、精神遅滞児養護学校・特殊学級における授業分析の方法として適用できることが示唆され、次のことが明らかになった。1)精神遅滞児養護学校・特殊学級の授業では、学習動作、説明、例示的動作、単純応答、指示、発問、促し動作のカテゴリーに出現頻度が多く見られた。2)教師発言率が児童発言率を大幅に上回り、しかも児童の自発的発言は極めて少なく、教師の主導性の強い授業展開であり、教師の説明→発問→児童の単純応答の授業パターンであることが示された。3)授業では、教師は発言と例示的動作を結合して提示し、それに対し児童は発言より動作による応答を主としており、この傾向は児童の知能障害が重度化する程顕著であることが認められた。
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