特殊教育学研究
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27 巻, 3 号
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  • 山崎 勝之, 氏森 英亜
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 3 号 p. 1-10
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    精神遅滞児の記憶過程における情報制御機能の変化の様相や情報処理特性を,高MA・IQ群(平均MA7.74歳:平均IQ51.36)と低MA・IQ群(平均MA5.11歳:平均IQ33.64)の比較を通して検討した。実験は,再認課題と自由再生課題から構成され,発声リハーサル法を用いてリハーサルの内実を一層直接的に捉えた。その結果,両課題とも群間で遂行成績に差異が認められた。符号化過程の特徴として,H群はL群より特に系列初頭部の項目に対するリハーサル量が多く,初歩的ながら累積的リハーサルを用いていた。一方,L郡は呈示された項目だけを命名する,処理水準の浅い1次的リハーサルを行っていた。さらに,位置情報を利用して符号化や検索を行う能力にも群間で差異が認められた。以上から,記憶系に情報を入出力するリハーサル方略および検索方略を司る情報制御機能の差異が,群間の遂行成績の差異として顕現化してきたと考えられる。
  • 小池 敏英, 伊藤 友彦
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 3 号 p. 11-18
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    聴覚障害児の発話の自己修正の特徴から,発話モニタリング過程を考察した。聴取可能な程度の発話明瞭度をもつ聾学校在籍児42名と,小学校4年児20名に,4コマの線画の説明を求め,自己修正サンプル729個を得た。聴覚障害児と健聴児とで,自己修正の度数や構成に著しい違いは認められなかった。聴覚障害児では,適切な表現への言い直し(Aa)のための中断は,語の終了後に生起する傾向があったが,誤りの言い直し(EL)や中断後に新しい文節を付加する言い直し(Ab)のための中断の多くは,語の途中で生起した。1文節当たりの平均持続時間が健聴児と比べ長い聴覚障害児では,Abを示す者が多かった。健聴児では,自己修正の各タイプの中断の多くは語の終了後に生起した。以上より聴覚障害児で効果的な発話モニタリングが確認された。語内中断を伴う自己修正については,被修正箇所の検出過程及び構音の特徴との関連で考察した。
  • 若松 昭彦
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 3 号 p. 19-30
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    自閉症の社会性障害のメカニズム解明の一端として,12歳から18歳までの年長自閉症児22名を対象に表情図及び表情写真の認知能力や基本的な表情の表出能力について実験的検討を行ったところ,自閉症児群には次のような結果が認められた。1)対照群であるMAをマッチングしたダウン症児群よりも基本的な表情の認知・表出能力が全般的に低かった。2)怒りの表情を喜びに分類するエラーが多く認められ,部分的な顔面特徴に基いて反応していることが示唆された。また,このエラーは自閉症的行動特徴を多く示す群に多発していた。3)"泣いた"顔の判断の好成績とは対照的に,"悲しみ"の表情の認知や同一感情カテゴリーに属するものとしての"悲しみ"と"泣く"の意味的関連性の理解などに問題を有する可能性が示された。4)視覚的手がかりによる表情模倣が困難な一群が認められた。5)表情認知・表出能力と言語能力及び社会生活能力の対応関係が示された。
  • 迫 ゆかり, 清水 寛
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 3 号 p. 31-43
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    岡山県の大正期・「劣等児・低能児」教育の特徴を明らかにするために,対象児,教育方法,教育思想の観点から明治期との比較や一般教育との関連について検討した。その結果,「劣等児・低能児」教育は,一般教育と同じく大正新教育にみられる個人主義的側面と国家主義的側面の下に進められており,この二つの側面は次の結果をもたらしていた。1.個人主義的側面(肯定的側面)(1)明治期より特殊教育の必要性が高まった。(2)「劣等児」と「低能児」の定義は知能検査の導入で明治期より明確になった。(3)「劣等児・低能児」の教育方法に関心が寄せられ,特別学級の設置が提起された。2.国家主義的側面(否定的側面)(1)特殊教育対象児のうち,「劣等児・低能児」より優等児の方に重点が置かれた。(2)学業不振児として成績の向上が目指された。(3)「劣等児・低能児」を危険視した観点から教育の必要性が唱えられた。
  • 小笠原 昭彦, 甲村 和三, 宮崎 光弘, 牛田 洋一, 山内 慎吾
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 3 号 p. 45-54
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    筋ジストロフィーおよび気管支喘息患児を対象に,自己意識についての質問紙調査を実施した。質問紙は,自己意識・心理的ストレスに関する42項目と病気・入院生活についての8項目を加えた50項目から成る自己評定形式のものである。比較対照群は,健常な中学生・高校生・大学生である。健常大学生群の結果の因子分析から,「情緒性」「共感性」「対人関係」「自己信頼感」「目標志向性」の5因子が抽出できた。健常群に比べ,筋ジストロフィー群では感情の統制面での困難さ,対人関係での消極さなどが目立った。喘息群では,感情の不安定さ,感情統制の困難,過剰な共感性,投げやりな傾向,病気に対する「罪悪感」といった傾向が強かった。筋ジストロフィー群よりも喘息群で,自己意識の形成の上での問題点があることが示された。
  • 加藤 忠雄
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 3 号 p. 55-68
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    近年,養護学校卒業生等を対象とする通所授産施設が急激に増加しており,そこでは生産活動の他に入所者に対する教育・学習活動が行われている。これは既に学校教育からはなれた入所者に対し社会人として生活するための,また生産活動を行っていく上で必要な教育・学習活動を引続き行うものである他に,文化を享受していくための方法を学ぶという意義もある。各施設は運営のための経費を支出するが,このような教育・学習活動のためにも支出し,しかも施設の全体方針によりこの部分での支出の仕方も異なってくる。そこでF県の4通所授産施設を対象として上記の関連について調査し方向性を探った。その結果,生活指導,教科的学習などの意図的目的的教育・学習活動がまず必ず行われるべきであり,それとともに文化を享受するための学習がなされるべきであり,次にこの方向での経費支出が著しく増大されるべきであると結論づけた。
  • 藤金 倫徳
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 3 号 p. 69-77
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では、ことばを形成する方法の一つとして、実験者が子どもの発声を模倣する方法を試みた。実験1では子どもの発声に対して、実験者がそれを模倣することから(EI)、模倣以外の行動(EN)を随伴させることへと手続きを移行させた。その結果、EN条件中、直前の子どもの発声に随伴させた実験者の発声が模倣された。随伴させた発声が模倣されることから、この方法を「随伴モデル法」と呼ぶことにする。実験2では、随伴モデル法を適用して、要求言語行動を形成することを試みた。実験1と同様にEIからENによる随伴モデルへと手続きを移行させることによって要求言語行動が形成できた。この要因として、EI条件で模倣要求行動が形成されたこと、EN条件ではそれが強化されなくなることとENが存在していることから補強作用が働いたことが考えられる。
  • 金城 悟, 中田 英雄, 佐藤 泰正
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 3 号 p. 79-87
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    異同判断課題における弱視者の視覚情報処理過程を検討した。被検者は弱視者5名と晴眼者5名である。刺激は1桁から4桁の数字対で構成されており、スクリーン上の左右に同時提示された。被検者は数字対が同じである(S-反応)か異なる(D-反応)かを判断したあと、反応ボタンを押した。反応時間と数字対の数の関数関係を最小自乗法によって求めたところ、S-反応の反応時間の勾配は弱視者が356ms、晴眼者が159msであり、D-反応の反応時間の勾配は弱視者が259ms、晴眼者が100msであった。刺激ごとにD-反応の反応時間からS-反応の反応時間を減算した値は、弱視群と晴眼群の間に有意差は認められなかった。さらに、晴眼者の視距離80cmを弱視者と同じ30cmに設定して実験を行った結果、S-反応とD-反応の反応時間は有意に長くなることがわかった。以上の結果から異同判断における弱視者の反応時間に影響する要因として視力や視野の機能を指摘できる。
  • 金 煕哲, 三沢 義一
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 3 号 p. 89-98
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    生徒の障害の重度・重複化に伴い、肢体不自由養護学校の進路指導は複雑・困難な局面におかれている。そこで、本研究では肢体不自由生徒の進路意識の成熟についての問題の所在と解決の手がかりを得る目的で、進路意識の成熟度尺度を作成し調査を実施した。対象は、肢体不自由学校中学・高等部生徒139名であり、担任教師が客観的評価を行った。障害程度及び知能程度と進路意識の成熟との関係についてχ^2検定の結果、身体障害の軽・重と進路意識の成熟とは関係が薄い反面、知能の程度は進路意識の成熟と強い関連性を示した。さらに、進路意識の成熟に影響を及ぼす要因を探るために、進路意識の成熟度得点を外的基準、個人背景要因を説明変数とし、数量化I類による分析を行った。その結果、全般に自己理解要因の影響が大きいことと、個人特性要因と社会的要因の影響も看過できないものであることがわかった。これらの結果を今後の進路指導のあり方との関連で考察した。
  • 松本 好生
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 3 号 p. 99-105
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    日常の療育場面で返事することなどで応答行動があると療育者は判断しているが、聴性脳幹反応(Auditory brainstem response; ABR)では無反応な重症心身障害者1事例を報告した。本研究は療育者へのアンケート項目の中から事例の応答行動としている手掛かりをもとに評価することで正しい応答行動を把握できるかを目的に開眼と閉眼による2場面で行動観察を行い、検討した。その結果、(1)アンケート調査で療育者が名前を呼ぶと返事をする、あるいは振り向くという理由から療育者の81%が応答があるとの回答を得た。(2)設定場面における閉眼条件下では、刺激提示前より提示後の行動が明確に増加した。本結果から、ABRの反応閾値には高音域の聴力においてのみ反映され、低音域の残聴を検出できないこともあり、本事例の場合、語音などの基本周波数や主要フォルマントに対して、比較的低周波を含むので、多少とも残存聴力で応答しているのではないかと考えられる。
  • 園山 繁樹, 秋元 久美江, 伊藤 ミサイ
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 3 号 p. 107-115
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    幼稚園において2年6ヵ月にわたりメインストリーミングの保育を受けた1名の自閉性障害男児について、特に発話の出現過程と社会的相互作用の変化を検討した。入園当初はほとんど無発話であったが徐々に模倣的な発話が増え、卒園時には3〜4語連語の発話が可能となった。社会的相互作用においても、当初は身体的な接触を拒否していたが徐々にかかわりが増え、卒園時にはことばによる自発的なかかわりが可能となった。これらの変化をもたらした要因として、教師や健常児との人間関係の形成と拡大を図ることが考えられた。発話は社会的なものであり、その出現と発展のためにはまず第一に幼稚園における様々な場面と活動を通して教師との人間関係を確立し、その後に発話を引き出すための手法を適用すべきであることを指摘した。
  • 長崎 勤
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 3 号 p. 117-123
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
  • 北野 与一
    原稿種別: 本文
    1989 年 27 巻 3 号 p. 125-128
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
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