特殊教育学研究
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27 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 黒田 直実
    原稿種別: 本文
    1990 年 27 巻 4 号 p. 1-9
    発行日: 1990/03/10
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本実験では、自閉症児とダウン症児を除く精神薄弱児60名を対象にしてペグボード課題と指で一定のポーズをつくらせるポーズ課題を実施し、精神薄弱児の大脳半球の機能的非対称性の特徴を探り、あわせて非右利きの頻出を脳損傷で説明する脳損傷説に検討を加えることを試みた。被験者は、IQ30未満の重度群とIQ30以上60以下の中度群に分類した。次のような結果が得られた。1)非右利きの者の出現率は中度群より重度群で高い傾向にあった。2)ペグボード課題及びポーズ課題で測定される技能において中度群は重度群より優れていた。3)中度群の右手偏好児にはペグボード課題で右手優位、ポーズ課題で左手優位という者が多かった。4)偏好手のタイプによって両課題の成績に差異が生じるということはなかった。これらの結果より、中度精神薄弱児においては健常児と同様な大脳半球の機能的非対称性が成立しており、脳損傷説は支持できないことが示唆された。
  • 甲村 和三, 小笠原 昭彦, 宮崎 光弘, 牛田 洋一, 山内 慎吾
    原稿種別: 本文
    1990 年 27 巻 4 号 p. 11-19
    発行日: 1990/03/10
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    全国5箇所の国立療養所に入院中の86名の中学生以上の喘息児の自己意識調査を行った。質問紙は情緒性・共感性・対人関係・自己信頼感・目標志向性に関する42項目と入院生活などに関する8項目を加えた50項目から成り、評定法により調査した。また、喘息児の自己評定に加え、彼らの両親(109人)、および病院職員・養護学校教諭ら(75人)に喘息児の意識や行動傾向を評定してもらい相互比較を試みた。その結果、喘息児は情緒の不安定性とその自己制御の困難性を自らも認め、対人関係の改善を求めている一方で目標志向の不十分さを認める傾向が顕著であった。両親は患児に対して好意的で、現状肯定的な回答が多くみられた。一方、職員は患児には情緒性・共感性・対人関係・目標志向性の関係諸項目に問題ありとした。喘息児本人の評定と、親の目・職員のプロの目の違いを検討することにより、彼らの自己意識発達の特徴と問題点のいくつかを明らかにすることができた。
  • 冨永 光昭
    原稿種別: 本文
    1990 年 27 巻 4 号 p. 21-32
    発行日: 1990/03/10
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,ハンゼルマンの治療教育学の中核的理念である「発達抑制理念」の形成過程と特質を、その「萌芽期」と「成立・拡充期」の主要著作に拠りながら、彼の個人史及び当時の社会文化状況を踏まえつつ考察し、以下の諸点を明らかにした。(1)ハンゼルマンは、フランクフルト・アム・マイン近郊の「シュタインミューレ労働コロニー・観察施設」の教育実践(1912〜1916)により、発達抑制理念の基盤を形成した。(2)正常-異常の分類手段や断種・安楽死等の議論に対峙する中から、障害者と健常者における人間的価値の平等性の視座を獲得し、発達抑制理念を展開していった。(3)当時の時代精神の危機に対する全体性志向の諸科学を統合することにより、発達抑制理念を拡充した。しかし、その統合の基盤にあった教育学の倫理学的脆弱性ゆえに、明確な社会問題の視点から障害児教育の追求を成し得ず、「発達抑制」という限定的な発達像の提起に留まることになった。
  • 高橋 智, 平田 勝政, 茂木 俊彦
    原稿種別: 本文
    1990 年 27 巻 4 号 p. 33-46
    発行日: 1990/03/10
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    近年、国内外で障害の概念構造についての理論的研究が深化しつつあるが、個々の障害に即した概念整理は不十分であり、「精神薄弱」概念についてはそれが特に著しい。そこで本研究ではその一環として、戦前の精神医学分野の「精神薄弱」概念の形成・展開過程及び到達点の歴史的解明を行った。検討素材に、主要な精神医学雑誌である『精神神経学雑誌』と『精神衛生』を用いた。得られた結果は次の様である。(1)「精神薄弱」を病理・臨床の面からは疾病・欠陥と規定し、精神衛生では断種等の社会問題対策的視点から規定しており、精神医学でも「精神薄弱」概念の定義に大きな相違がみられる。(2)クレペリンの「白痴・痴愚・魯鈍」の3分類を基本としつつも、「精神薄弱」概念論争にみられる様に、知能指数等の心理学的概念の採用が現実的要請から承認された。(3)戦前の「精神薄弱」概念の到達点と「特殊児童判別基準」等の戦後の概念には連続性が確認された。
  • 古川 宇一, 今川 民雄
    原稿種別: 本文
    1990 年 27 巻 4 号 p. 47-55
    発行日: 1990/03/10
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    北海道の情緒障害学級の実態について、郵送質問紙法による調査を行った。学級設置地域の人口規模別に分析した結果、次のような特徴が見いだされた。札幌市(人口150万人)は障害の重い自閉児の割合が高く、1学級当たりの人数が多い。担任の年齢は20〜30歳代が多く、指導形態は固定制である。人口10〜40万人の中都市では障害の重い自閉児は情緒障害学級に少なく、通級制の指導形態を含んでいる地域が半数あり、担任の年齢分布に強い偏りはない。人口4万人未満の小規模地域では、在籍児が1〜3人の小規模学級が多く、障害の重いものと軽いものが混じっている。担任の年齢は50歳代が多い。人口4〜10万人の小都市では、中都市と小規模地域の中間的な傾向がみられた。学級開設は中大都市から小規模地域へと広がっている。中学校で登校拒否児指導の体制をとっている情緒障害学級が中大都市9地域のうち3地域にあり、さらに増設される可能性が示唆された。
  • 落合 俊郎
    原稿種別: 本文
    1990 年 27 巻 4 号 p. 57-62
    発行日: 1990/03/10
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
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