特殊教育学研究
Online ISSN : 2186-5132
Print ISSN : 0387-3374
ISSN-L : 0387-3374
29 巻, 4 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • 安藤 里美
    原稿種別: 本文
    1992 年 29 巻 4 号 p. 1-5
    発行日: 1992/03/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    特殊学級に在籍している自閉症児T君のコミュニケーション能力および普通学級の先生や児童との交流を促進する目的で、毎朝、コミュニケーションカードを用いて普通学級で「欠席調べ」を行うという係活動の実践を行った。この活動の効果は、各学級での「欠席調べ」の遂行の変化と、個別に各普通学級担任がT君に本を読ませるという「音読テスト」の場面で検討された。効果測定では、直接の行動観察の他に、第三者による印象評定が用いられ、それぞれ「欠席調べ」による効果が確認された。また、他の日常場面でも、T君と普通学級担任ならびに児童との交流の変化がみられ、当実践はT君のコミュニケーション能力と交流の促進のために有効なプログラムのひとつであったと言えよう。
  • 板橋 安人, 松木 澄憲, 斎藤 佐和, 四日市 章
    原稿種別: 本文
    1992 年 29 巻 4 号 p. 7-13
    発行日: 1992/03/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    発音の評価法、指導法をプログラムに組み込んだ超音波発語訓練システムにより、聴覚障害児9名に発音指導を実施した。本研究では、このシステムによる指導の成果を母音と後続母音の明瞭性、子音の調音点の変化という観点で検討した。その結果、発音明瞭度は平均で7%増加し、発音の誤り方が単純化する傾向がみられた。また母音と後続母音の正発率が増加し、調音点別にみた子音においては特に歯裏音と咽喉音の明瞭度に改善がみられた。指導期間を通して、児童は本システムによる指導に積極的な関心を示した。以上のことから、発音指導においては伝統的な知識・技術を生かしつつ、舌位置の観察によって発音要領を定着させる指導プログラムが、発音の明瞭度を改善するのに有効な方法の一つとなり得ることが示された。
  • 上岡 一世, 井原 栄二
    原稿種別: 本文
    1992 年 29 巻 4 号 p. 15-20
    発行日: 1992/03/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    精神遅滞児の基本的生活習慣の発達過程を明らかにするため、健常児群666名(CA2歳〜12歳)、精神遅滞児群374名(CA6歳〜25歳、MA2歳〜12歳)を対象に、社会的自立に最小限必要と思われる基本的生活習慣の指導項目調査を実施し、両群における各指導項目の通過年齢(健常児群はCA、精神遅滞児群はMA)を出し、比較、検討を行った。その結果次のことが明らかにされた。(1)全領域において精神遅滞児群が健常児群よりも早く通過する傾向がみられる。特に睡眠、食事、着衣の各領域は1歳ほど早い。精神遅滞児群の最も通過年齢の遅れる項目は清潔領域である。(2)精神薄弱児群と自閉症児群、ダウン症児群の通過年齢には、特に顕著な差異は認められない。(3)精神遅滞児群の通過年齢は、精神年齢よりも生活年齢の影響を受け易い。
  • 遠藤 信一
    原稿種別: 本文
    1992 年 29 巻 4 号 p. 21-25
    発行日: 1992/03/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は、重症心身障害児施設に入所している一人の重度・重複障害幼児との具体的な取り組みを通して、子どもの意思の表出を促す際に、関わり手側に求められる視点を明らかにすることを目的とした。子どもに対して一方的な関わりにならないようにあらゆる場面で子どもの意向を問いかける工夫を続けていくと、指導開始当初は一人遊びをしていることが多かった対象児が、ものに働きかける動きがより明確になり、さらに人に近付いて要求を伝えようとするなどの動きがみられるようになった。重度・重複障害児の意思の表出を促すためには、あらゆる場面でコミュニケーションを図っていくことが大切であり、その際子どもにみられた何らかの動きをある意思の現れと"仮に"受け止めていくことや子どもが意思を発現しやすくするために活動の開始や終了を明確にすることなどが大切であるといえる。
  • 加藤 義男, 鎌田 文聰
    原稿種別: 本文
    1992 年 29 巻 4 号 p. 27-31
    発行日: 1992/03/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    筆者らは、1980年から、障害乳幼児をもつ親と共に自主的な通所療育教室「つくし幼児教室」を毎週1回行ってきた。本教室に参加した乳幼児の実態分析を通して、盛岡地域の早期療育機能の発展の様相と今後の課題についての検討を行った。その結果、「つくし幼児教室」の取り組みは、地域の早期発見・早期療育事業の展開に対してひとつの原動力として作用しており、関係者の願いを具体的な実践を通して問題提起していくことの大切さが明らかとなった。また、早期療育に関する今後の課題として、ごく軽度の発達の問題を示す乳幼児への対応が必要であること、早期発見・早期療育システムを確立することが必要であること、県内の地域格差の改善が必要であることが示された。
  • 久保山 茂樹
    原稿種別: 本文
    1992 年 29 巻 4 号 p. 33-37
    発行日: 1992/03/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本論文は、ある発達遅滞児が一人で『げんこつ山』を歌う行動を習得するまでの、音声言語行動の変容過程を報告した。観察は3歳2ヵ月から4歳3ヵ月までの約1年間行った。音声言語行動の観察と分析には、菅井の評価法を用いた。その結果、歌う行動(音声発信)は、上肢動作の発信の確立に伴って向上した。また、音声発信の誤りや欠落は、上肢動作発信の誤りや欠落との関連が考えられた。『げんこつ山』を一人で歌えるようになるまでには、視覚→上肢系、聴覚→上肢系、聴覚→構音系の順での情報処理の学習を経ることがわかった。
  • 倉内 紀子
    原稿種別: 本文
    1992 年 29 巻 4 号 p. 39-47
    発行日: 1992/03/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    筆者は、言語構造の獲得、言語機能の促進、聴覚機能の向上、発語機能の向上の4次元から構成された、総合的な言語指導プログラムを開発した。本稿では、そのうち、言語構造の獲得の次元の、段階II:文構造(語連鎖)の獲得に焦点をあて、指導効果の検証を行った。対象は平均聴力レベル95dB以上の先天性感音難聴児4名であり、2歳前後から本プログラムに基づいて言語指導を開始した。その結果、およそ3歳までに、言語記号の理解と表出が困難な前記号的段階から、同年齢の健聴児に匹敵する、3語文の理解と産生が可能な段階に到達した。特に、発見が遅れて2歳代で指導を開始するような高度難聴児の場合、初期の段階で言語記号とそれが表す意味との関係を確実に成立させることが重要であり、その後は、必ずしも健聴児の順序性によらずに、年齢に匹敵する文構造を同時期に導入することによって、言語獲得を促進できる可能性があることが示唆された。
  • 齋藤 一雄, 星名 信昭
    原稿種別: 本文
    1992 年 29 巻 4 号 p. 49-54
    発行日: 1992/03/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    MA3歳代のダウン症児に対して、手拍子によるリズムパターンへの同期の学習効果をみた。その結果、等間隔の〓への同期は2回の学習で50%以上に達した。そして、4/4〓〓〓〓というリズムパターンへの同期は、4回以上繰り返す中で50%以上できるようになったが、80%以上にはならなかった。リズムパターンへの同期は、等間隔の〓への同期→休符の予期→パターンの把握→細かい動きによる調整をして同期するという過程をたどることも示唆された。さらに、示範やテンポ、同期反応のさせ方は、リズムパターンへの同期の学習に影響を与え、テンポの設定や学習のさせ方、課題提示の仕方、指導方法等を子どもに合わせて工夫する必要がある。また、学校全体が休みになったり、長い間学習が中断したりすると、同期の成績が落ちる傾向がみられた。
  • 佐藤 曉
    原稿種別: 本文
    1992 年 29 巻 4 号 p. 55-59
    発行日: 1992/03/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は、学習障害児の課題学習場面における学習困難の改善に、動作法の適用がどういった効果を及ぼすかを検討した。対象は1名の学習障害児であった。指導開始から2ヵ月間をベースラインとして、(1)行動観察(2)課題学習場面における教科学習指導(3)母親面接を実施し、その後(2)(3)の指導を継続しながら、(1)の行動観察に代えて動作法の指導を導入することにより、課題学習場面に及ぼす動作法の効果を検討した。その結果、動作法の適用と対応して、課題学習場面における注意散漫、衝動性といった不適切な行動が改善された。同時に、それまで改善が困難だった読み書きや計算操作のスキルが向上し、より発展的な課題学習も遂行されるようになった。以上の結果から、動作法の適用は、課題学習場面での構えの形成、行動の制御を通して、課題学習を促進させる効果があることが示された。さらに、より高次な認知活動の促進との関連についても検討が加えられた。
  • 多田 裕夫
    原稿種別: 本文
    1992 年 29 巻 4 号 p. 61-66
    発行日: 1992/03/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    自閉症児のスポーツ指導は難渋しているのが現状である。そこで、2名の自閉症児に対して、各種のスポーツ活動の基礎的技能を含む走り幅跳びを実施した。走り幅跳びの踏み切り動作の習得過程を動作模倣訓練としてとらえた。動作模倣訓練の手続きは、プロンプトが重要となる。そこで、言語教示法、モデル提示法、身体的誘導法、刺激誇張法の各プロンプト方法の効果について検討することを目的とした。手続きとして、これらの4方法のプロンプトについて、条件交換デザインでの検討を行った。その結果、助走タイムにおいては身体的誘導法が、踏み切り動作の発現においては、刺激誇張法で、有意差が認められた。以上のことから、自閉症児の踏み切り動作確立においては、身体的誘導法によるプロンプトは、過緊張状態に成りやすいことを考慮して行う必要がある。また、刺激誇張法でのプロンプト法は、動作の遂行が容易になると考えられ、有効であることが示された。
  • 蔦森 武夫
    原稿種別: 本文
    1992 年 29 巻 4 号 p. 67-75
    発行日: 1992/03/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では教育的係わり合いの立場から「学習障害児」を指導し、(1)事例の持つ問題把握、(2)指導プログラムの立案、(3)プログラム導入後の行動変化過程の整理、分析を行った。そして「学習障害児」の持つコミュニケーション障害の問題を係わり手の働きかけ方も含めて検討した。指導経過からは以下のことが考察された。(A)係わり手が本児からの発信を的確に受けとめながら本児の行動の流れに沿って係わることは、自発的に人と係わり合いを求める行動を促すのに効果があると思われた。(B)係わり手が本児からの発信を微細な体の動きや表情等の非音声系の発信にまで広げて受信し、適切な声がけや援助を行うことが、コミュニケーション行動の安定した成立に役立つと考えられた。
  • 長沢 正樹, 森島 慧
    原稿種別: 本文
    1992 年 29 巻 4 号 p. 77-81
    発行日: 1992/03/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    ことばによる自発的な要求がほとんどない2名の自閉症児に対して、機能的言語指導法に基づき、ことばを機能的に使用する訓練を行った。訓練方法として以下の2点を重視した。(1)ことばの自発性を高めるため、要求対象物を統制し自己充足が困難な事態を設定した。(2)日常生活でことばを機能的に使用できるようにするため、日常生活場面である学校生活場面で直接指導した。手続きは、要求物を見せ、要求物のそばに訓練者が立って自発的要求を待つ即時対応期と、要求物を隠し、訓練者が要求物から離れて自発的要求を待つ非即時対応期によって構成された。その結果、2名とも自発的にことばで要求する割合が高くなり、ことばによる要求回数も増加した。さらに1ヵ月後もこの傾向が維持され、これらのことから機能的言語導法の有効性が確認された。
  • 林 信治
    原稿種別: 本文
    1992 年 29 巻 4 号 p. 83-90
    発行日: 1992/03/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    小児慢性病棟における療育活動は、療育専門職(児童指導員・保母等)の配置されている病棟が少ないために医療専門職(医師・看護婦等)により行われている場合が多い。そのため、療育専門職の立場からの系統的な療育内容についての報告は多くはなかった。そこで、小児慢性病棟における療育活動について、入院児の疾病構造・病棟生活状況・退院後の生活状況等の調査と療育実践を基に、必要な指導分野と具体的な指導内容について検討を行い「療育活動の系統図」を作成した。療育活動の目的を「心身共に健全な成長を促す」「疾病治療に対する意識を高める」の2点とし、入院児との信頼関係を基本に、療育活動を「治療態度の指導」「集団活動の指導」「個別指導」「家族指導」「その他の指導」の5分野に分類した。各分野ごとに指導内容の検討・具体化を行い14種類に整理・集約した。
  • 桝蔵 千恵子
    原稿種別: 本文
    1992 年 29 巻 4 号 p. 91-98
    発行日: 1992/03/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    中学部3年「アルバム作り」の授業の中でコミュニケーション指導に取り組んだ。中度の精神薄弱児で自発的発話が乏しいO君に対して、INREALの手法に添って教師のかかわり方を見直していった。特にSOUL、待ち時間、子供のレベルに合わせるなどを取り入れていった結果、O君の発話が増大した。それにつれ指示的な教師の態度は反応的に変化した。後期にはO君とF君の生徒間の会話を促進させる試みに取り組んだ。教師が二人の間に立ち、不明瞭なことばを言い直したり、同じことばを繰り返すなどしてつなぎ役を続けた結果、教師の支えなしでも二人の会話が始まるようになった。以上からかかわる大人の見直しの必要性や生徒間の相互関係の昂まりが授業内容そのものをも豊かにする。従ってコミュニケーションに視点をおいた授業づくりにも関心を向けていくことの重要性を検討した。
  • 松田 教生
    原稿種別: 本文
    1992 年 29 巻 4 号 p. 99-104
    発行日: 1992/03/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    五十音を表記した文字盤を使い、音声言語を持たない自閉児に対して、文字を音声言語に代わるコミュニケーション手段として獲得させていった養護学校での4年間の実践である。指導は、友達の名前や物の名称を文字盤で差し示すことから始めた。そして、あいさつ、質問、報告、伝達、質問や活動の内容が分からないときに尋ねさせる学習へと広げていった。その結果、文字盤によるコミュニケーションが可能になった。その理由として、次の点があげられる。彼自身に関しては、文字盤での指導以前に文字によるコミュニケーションの体験がわずかながらあった。文字自体に興味を持っていた。指導に関しては、機能面を重視して指導をした。彼の文字盤でのコミュニケーションを維持、強化しようとする周りのスタッフの理解と協力があった。更に1枚のカードで、音声言語に近い情報の伝達が可能であったという文字盤の利点も挙げられる。
  • 宮崎 真
    原稿種別: 本文
    1992 年 29 巻 4 号 p. 105-110
    発行日: 1992/03/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    コミュニケーション行動および象徴的行動の発達が言語行動の発達の重要な契機となるという考え方がある。この考え方に基づき、コミュニケーション行動および象徴的行動を促進する目的で、話言葉獲得前の重度精神遅滞児5名を対象にごっこ遊び「カレーライスを作ろう」を共同行為ルーチンとして構成化し、指導を実施した。標的行動としては、(1)コミュニケーション行動(返事、頂戴のジェスチュアーと指さし)、(2)ふり動作(買い物に行く、包丁で切る、食べる)であった。指導方法としては、指導者およびプロンプターによる指示、身体介助であった。12回の指導によって、コミュニケーション行動、ふり動作いずれの行動も促進された。以上のことから、言語獲得前の重度精神遅滞児の場合でもごっこ遊びは共同行為ルーチンとして構成化できること、コミュニケーション行動およびふり動作を促す有効な指導場面となることが示唆された。
  • 元木 哲哉
    原稿種別: 本文
    1992 年 29 巻 4 号 p. 111-117
    発行日: 1992/03/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は、情報発信手段の乏しい脳性まひ児に、コミュニケーション手段を獲得させるための指導実践の記録である。対象児の実態を明らかにする中で、コミュニケーション手段獲得のための指導プログラムを作成し、系統的、段階的な指導を試みた。指導実践の期間は、3年間であった。その結果、平仮名文字を習得し、情報発信手段として、ポインティング動作やトーキングエイドが使用できるようになった。併せて、情報発信に関する動因が高まり、能動的な行動の生起頻度が増加した。
  • 四日市 ゆみ子
    原稿種別: 本文
    1992 年 29 巻 4 号 p. 119-124
    発行日: 1992/03/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    精神薄弱養護学校高等部の生徒を対象として、フロスティッグ視知覚発達検査を実施し、その視知覚能力と進路指導への活用について検討した。視知覚能力については、(1)知覚年令とIQとの間に関連があること、(2)視知覚検査での誤答傾向について、(3)練習効果があり、比較的簡単な練習によって視知覚能力の向上が見られたこと、などが明らかにされた。また、進路指導への活用という点では、職場において要求されるいろいろな能力のうち、特に、細かい部品を扱う能力と視知覚能力との関連について事例を通して考察し、職種決定の際に視知覚能力検査の結果が参考資料として有効に利用できることを述べた。
feedback
Top