特殊教育学研究
Online ISSN : 2186-5132
Print ISSN : 0387-3374
ISSN-L : 0387-3374
32 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 福島 亨, 冨永 良喜
    原稿種別: 本文
    1995 年 32 巻 4 号 p. 1-9
    発行日: 1995/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、動作訓練での訓練者の援助タイプと脳性マヒ児の筋電図パターンとの関連を検討することである。被験児は、ひとりで坐位が保持できない10歳の痙直型四肢マヒ男児1名であった。訓練者は動作訓練に関する未熟練者14名と熟練者15名であった。訓練中、被験児の上腕二頭筋、上腕三頭筋、下部僧帽筋、腰部脊柱起立筋、大腿直筋から筋電図が測定された。同時に、訓練場面がビデオカメラで記録された。訓練者の援助タイプを検討するために、時間見本法と評定尺度法により援助項目がビデオ記録から得点化された。援助項目の統計的分析により、援助に関して「態度」と「技法」の2つの要因があることが見い出された。態度と技法の両方の因子得点が高い訓練者群は、他の群に比して、望ましい筋電図パターンの変容を示した。また、態度が低く技法が高い訓練者群は、その両方が低い群よりも望ましくない変容を示した。これらの結果から、援助に関する要因が考察された。
  • 生川 善雄
    原稿種別: 本文
    1995 年 32 巻 4 号 p. 11-19
    発行日: 1995/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    高校生から一般成人に至る469名を調査対象として、多次元的観点から精神遅滞児(者)に対する健常者の態度について検討した。その結果、概して、理念的観念的な次元に属する態度尺度得点は高く、現実的具体的な次元に属する態度尺度得点は低かった。接触経験に関しては、接触経験の有る人の方が無い人に比べて、精神遅滞児(者)と関わろうとする気持ちが強く、地域交流を推進しようという気持ちも強かった。性については、全態度尺度で、女性の方が男性よりも精神遅滞児(者)に対して好意的結果を示していた。知識については、精神遅滞の出現に関する知識の有る人の方が無い人よりも実践的な好意度が高く、統合教育に同意し、さらに、精神遅滞者との交流を推進する気持ちも強かった。以上より、接触経験、性、知識と関連づけながら、多次元的観点から、精神遅滞児(者)に対する態度を構成している次元ごとに分析していくことの有効性が明らかとなった。
  • 長尾 秀夫
    原稿種別: 本文
    1995 年 32 巻 4 号 p. 21-28
    発行日: 1995/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    てんかん患者が安全で且つ活発な生活をするために配慮すべき点を明らかにする目的で、0歳から31歳までのてんかん患者204例について事故調査を行った。その中で予防対策上示唆にとむ6事例を抽出し、各事例の発作と事故との関連性及び予防対策について検討した。その結果、発作型では意識障害ゆえに状況に応じた身体の調節ができないもの、急に倒れるものが危険であった。発作頻度は1ヵ月に1回以上の発作が要注意であった。発作時の姿勢では立位、歩行時、自転車乗車時が危険であった。そして、発作が生じた環境は事故との関連性が高く、外傷に対してはヘルメットや車椅子等の補装具を使用する、入浴時や水泳時の溺水、高所よりの落下、湯による熱傷、包丁による切創等には一対一での十分な注意が必要であると思われた。以上の結果と今日までの文献にもとづき、事故予防対策案を提起した。
  • 河合 康, 大野 由三
    原稿種別: 本文
    1995 年 32 巻 4 号 p. 29-37
    発行日: 1995/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    全国の肢体不自由養護学校を対象にして、学校要覧に記されている学校教育目標の構造と形式を分析した。分析の視点は、(1)名称、(2)位置づけ、(3)目標達成のための方針の記述、(4)障害に関する用語、(5)表現形式、(6)下位の目標等の設定、であった。全体的にみて、学校教育目標の構造や形式は学校により様々であること、学校教育目標の重要性が十分に認識されているとはいえない状況があること、学校教育目標とその他の用語の概念規定や、両者の関連性が不明確であったり、混同されている傾向があること、が明らかにされた。また、今後の学校教育目標の方向性として、(1)「教育目標」ではなく、学校の教育目標であることを明確にした名称を用いること、(2)学校教育目標を達成するための方針を明記すること、(3)学校教育目標を上位概念として位置づけること、(4)学校教育目標を核にし、かつ、学校教育目標との関連性を踏まえて、学校教育活動に関わる用語や事項の整理を行うこと、が示唆された。
  • 鶴巻 正子
    原稿種別: 本文
    1995 年 32 巻 4 号 p. 39-47
    発行日: 1995/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は、「動物」に関する漢字が読めない精神遅滞児7名に対し、その読字行動を獲得させることを企図して行ったものである。そのため、刺激提示時間を一定に設定し得るスライドプロジェクター及び「福島大学式Behavior Modification Apparatus,Type I」を使用し、刺激制御のための分化強化を伴う「同時視覚-視覚見本合わせ法」による実験を施行した。その結果、7名中2名に位置偏好が見られたが、それの消失とともに正反応生起率の上昇が認められた。第1ベースライン期間の正反応生起率は、対象児によって異なるが、第2ベースライン期間では、いずれの対象児も100%となった。すなわち、本方法は精神遅滞児に対し読字行動を獲得させるのに有効であることを示している。
  • 菊地 恵美子
    原稿種別: 本文
    1995 年 32 巻 4 号 p. 49-57
    発行日: 1995/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    平仮名や片仮名の特定の文字が読めない精神遅滞児に対して、見本合わせ法を用いて仮名1文字の読み行動を獲得させようとする場合には、いくつかの問題がある。本研究はこの問題点を解決しながら濁音文字の正しい読み行動を獲得させようと試みた。(1)平仮名・片仮名は1文字では意味をなさず、精神遅滞児にとっては聴覚刺激と1文字のマッチング学習が難しい。(2)マッチングの初期学習時に位置偏好を示す場合が多く、マッチング行動の獲得をペースダウンさせやすい。そこで、指導Aでは、聴覚刺激と単語の刺激等価を獲得させ、さらに単語の中の1文字に注目させる方法をとり、平仮名の読み行動を導いた。指導Bでは、見本合わせ法にスーパーインポーズとフェイディングを組み合わせて、位置偏好を生起させずに聴覚刺激と1文字の刺激等価を獲得させ、片仮名の読み行動を導いた。
  • 小川 克正
    原稿種別: 本文
    1995 年 32 巻 4 号 p. 59-66
    発行日: 1995/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    特殊教育の最初の用語例は、明治14(1881)年改正の文部省事務取扱規則に見られるが、その意味については従来、何を意味するか明らかでないとされてきた。従前の諸説を吟味し、この用語が使われている規程条文ならびに関連資料を分析し、専門学校ならびに実業学校及びに「盲唖院」を含む各種学校の教育を総称する概念として使用されていることを明らかにした。ほぼ同じ時期に文部省から刊行された翻訳辞典の『教育辞林』には類似の「特別教育」の用語が見られ、その用語法は特殊教育の用語例とも一致すること、この場合の原語はスペシャル・インストラクション(special instruction)であることを確認した。この新しい用語が文部省の事務分掌規程に導入された背景には、新設の農商務省との間に学校の監督権をめぐる係争があり、農業・商業・工業等の諸学校と専門学校ならびに各種学校の教育を総称する用語が必要であったことを併せて考察した。
  • 大井 学
    原稿種別: 本文
    1995 年 32 巻 4 号 p. 67-72
    発行日: 1995/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
feedback
Top