特殊教育学研究
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34 巻, 4 号
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  • 鈴木 由美子, 藤田 和弘
    原稿種別: 本文
    1997 年 34 巻 4 号 p. 1-10
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は、表出手段に著しい制限があり、現時点で有効な伝達行動を持たない脳性まひ児に対して、選択行動としてのeye pointingを形成するためのプログラムを作成し、その有効性を検討することを目的とした。最初に、(1)運動まひや話し言葉の障害が重度な脳性まひ児であっても随意性が保たれる眼球運動を活用する、(2)言語理解の発達が初期段階にある脳性まひ幼児にも適応可能である、(3)実施手続きと評価基準を明確にする、の3点を考慮し、eye pointingによる選択行動を形成するプログラムを作成した。次に、表出手段の著しい制限という点では同様であるが、コミュニケーション発達の段階の異なる3名の脳性まひ幼児に対し、プログラムのステージ1〜3を実施した。提示刺激としてステージ1では玩具の入った箱をターゲット、白い箱をダミーとして用いた。ステージ2では玩具の写真をターゲット、白紙カードをダミーに用いた。ステージ3ではターゲット、ダミーともに写真を用いた。その結果、以下の点について、本プログラムの有効性が明らかにされた。1.本プログラムを実施した結果、2名の対象児はステージ2においてeye pointingを用いてターゲットを選択することが可能となり、1名の対象児はステージ3においてeye pointingを用いてターゲットを選択することが可能となった。この結果は、本プログラムがeye pointingによる選択行動の形成に有効であることを示している。2.いずれの対象児においても、指導手続きを繰り返すことによって、eye pointingによる選択行動出現までの潜時は短縮し、目的に合わない視線の動きは減少していった。上記の結果と考え合わせるとこの結果は、本プログラムの実施がeye pointingの機能性を高めたことを示している。本プログラムの実施により、3名の対象児は、2つの提示刺激のうちどちらかを注視すればそれが与えられるという場面において、eye pointingを用いた選択行動を獲得した。これは、本プログラムの構造と実施手続きが、対象児の現時点での発達段階に合致したことによると考えられる。今後は、本プログラムを要求行動の形成やシンボルによる表出までを目指した階層性のある系統的なものとして発展させる必要がある。
  • 上久保 恵美子, 比企 静雄, 福田 友美子
    原稿種別: 本文
    1997 年 34 巻 4 号 p. 11-18
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    聴覚障害者の社会活動のための言語媒体の有効性について分析する研究の一環として、各種の言語使用の場面に応じた言語媒体の使い分けと手話通訳者の有効性を検討した。この研究で使った調査資料は、東京と近県の重度聴覚障害者に1991年に質問紙を郵送して、20歳〜70歳の男女約1,700人から回答を得たものである。そのうちの、口話・手話・筆談などの使用についての諸項目の応答を、種々な場面での有効性に注目して分析した。その結果、旅行、市役所・警察・病院、子供の入学式・卒業式、子供のPTAの集まり、駅やバス・電車の放送などの日常生活での対照的な言語使用の場面に応じて、言語媒体の使用の割合や有効な程度が著しく異なること、手話通訳者や介助者の助けが場面によっては有効に役立っていることが明らかになった。
  • 田坂 裕子, 〓田 征子
    原稿種別: 本文
    1997 年 34 巻 4 号 p. 19-30
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は、操作行動、注視行動、実験者への発話から、課題解決行動の発達を明らかにするとともに、丸野(1985)のプランニングシステムのモデル(メタ認知的、操作的、機能的の3水準)に他者要因を導入して修正し、プランニングの発達過程を検討することを目的とした。被験児は2歳〜5歳の健常児と同一精神年齢(MA)の精神遅滞児であり、5条件で5個の入れ子を構成することが求められた。両群とも加齢に伴い、課題条件の変化に応じた方略の選択、注視行動を示した。精神遅滞児は健常児より、MA2・3歳では良好な発達、MA4・5歳では発達の遅れを示し、メタ認知的プランニングの問題が指摘された。プランニング能力は健常3歳から4歳にかけて顕著に発達し、MA2・3・4歳の発達はその間に位置した。実験者へ援助・確認を求める発話が、発達の不十分なプランニングの水準で認められたことから、他者要因を加えた修正モデルの妥当性が検証された。
  • 齋藤 友介, 草薙 進郎
    原稿種別: 本文
    1997 年 34 巻 4 号 p. 31-38
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    聴覚障害児(者)の読話に影響を与える要因のうち、音節の見やすさが単語の読話成績におよぼす影響を検討した。見やすさの指標としては単音節同定課題から得られた日本語の直音62音節の正答率である音節可視度(齋藤,1992)が使用された。読話材料は語彙難易度を統制するために、「新教育基本語彙」(阪本,1984)における小学校学習相当の単語から選定された。材料にはVTRに収録された音節可視度と語彙難易度が異なる4条件、計20のランダマイズされた3モーラ単語が使用された。対象は聾学校小学部(4〜6年)に在籍する平均聴力レベルが90dB(HL)以上の重度聴覚障害児40名であった。分散分析による検討の結果、音節可視度は単語読話成績に影響を与えることが確認され、さらに、単語読話条件における音節の同定成績は、易しい語彙難易度の単語において、単音節同定課題における成績を上回ることが示された。
  • 谷 晋二
    原稿種別: 本文
    1997 年 34 巻 4 号 p. 39-46
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は、一人の重度の知的障害と自閉的特性を持つ女子に色概念を教えることである。音声による色の名前が示された時に、正しい色カードを選択することと、色カードが呈示された時に正しく色の名前を言うことがマッチング手続きを用いて教えられた。しかし、この手続きでは色カードの選択も命名も学習されなかった。そこで、具体物あるいは具体物の書かれた絵カードに対して、一定の言語反応、例えば「リンゴはあか」を教え、それをプロンプトとして用いた選択訓練を行ったところ、色カードの選択も命名も正しく学習され、直接選択訓練を行わなかった色に対しても、言語反応の学習を行うだけで、色カードの選択と命名が正しく行われることがしめされた。この研究では、これらの点についてイントラバーバル反応の観点から考察した。
  • 崎原 秀樹
    原稿種別: 本文
    1997 年 34 巻 4 号 p. 47-53
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    吃音者がどのように自己を捉えているかについて調査を行い、重症度(自己評定)と年齢の要因により検討した。80対のSD項目からなる質問文(水町,1982,1991:一部改訂)を使用し、35名の吃音者に5件法により評定を求めた。その結果、(1)自分の吃音が軽度と思う吃音者は、重いと思う者に比べて、28項目で「社交的かつ積極的であり、こだわりが少なく、それほど神経質でない」と思っていることが示唆された。(2)年齢が高くなると7項目では「社交的かつ積極的である」と思っている傾向が認められた。他方、年齢が若い方が「清潔好きで、友人が多い」と思っていることが示唆された。(3)治療的関わりをする際の手がかりとして、これらの吃音者の自己の捉え方の結果を理解する時の配慮について考察した。
  • 上岡 一世
    原稿種別: 本文
    1997 年 34 巻 4 号 p. 55-62
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では、職場、教師、親の3群に「精神遅滞児が就労するためにはどういう能力が必要であると考えているか」について調査を行い、意識の実態を明らかにした。そして3群の比較を通して就労を目指す指導のあり方について検討した。その結果、以下のことが明らかになった。(1)職場群が、精神遅滞児が就労するために必要であるとした項目は、生活する上での基本となる項目が多かった。しかし教師群は仕事をする上で必要な項目を重視する傾向にあった。(2)親群は、教師群以上に障害児の就労に対して強い期待感を持っていた。(3)職場群は、障害児の就労の要件として障害の程度や能力をそれほど重視していなかったが、教師群や親群はそれらをかなり重視していた。
  • 原 幸一, 西村 辨作, 綿巻 徹, 小泉 善茂, 山中 勗
    原稿種別: 本文
    1997 年 34 巻 4 号 p. 63-68
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    ダウン症乳幼児150名-1歳、2歳、3歳の各年齢50名-に対して津守式精神発達質問紙を施行し、クラスター分析を用いて各年齢での類型化を試みた。対象としたダウン症乳幼児は染色体核型が21標準トリソミーの者のみとした。その結果、1)1歳では3つ、2歳と3歳でそれぞれ5つに類型化された。2)5つの下位領域(運動、探索、社会、食事、言語)についてDAプロフィールは各年齢で異なっていた。1歳では発達良好な類型のみが社会領域で他の領域と比較して発達していた。2歳では各類型のDAプロフィールの特徴が明確ではなかった。3歳では各類型がDAプロフィールでその特徴を表し、全体的に運動、社会、言語領域に遅れがみられた。3)発達の遅い類型は1歳頃から、良好な類型は2歳から3歳にかけて類別されていくことが考えられた。そして、発達差については性差との関わりが示唆された。
  • 菅野 敦
    原稿種別: 本文
    1997 年 34 巻 4 号 p. 69-76
    発行日: 1997/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
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