本研究では、発達障害のある青年1名を対象に買い物指導を行い、所持金内での商品選択行動と支払い行動の2点に焦点を当てた検討を行った。まず、指導室場面において、これらの行動を形成し(研究1・研究2)、その効果を実際の3店舗において測定した(研究3)。しかし、指導室場面で形成した行動は、実際の店舗に般化しなかった。支払いに関しては、レジの人による「自然な援助」があったため、比較的スムーズに遂行可能となった。他方、商品選択に関しては、店舗では商品に表示してある値札が見にくいものや、値段自体が表示されていないものなどがあり、対象者は値段に注目することが困難であった。このために、般化が阻害されたと考えられた。そこで、指導者が商品に値段シールを貼り、値段の明確化を行ったところ、所持金内での商品選択行動が可能となった。対象者への指導及び対象者から社会環境側に発せられた要求(望月,1997)の観点から、本研究の結果を考察した。
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