特殊教育学研究
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37 巻, 3 号
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  • 松岡 勝彦, 平山 純子, 畠山 和也, 川畑 融, 菅野 千晶, 小林 重雄
    原稿種別: 本文
    1999 年 37 巻 3 号 p. 1-10
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では、発達障害のある青年1名を対象に買い物指導を行い、所持金内での商品選択行動と支払い行動の2点に焦点を当てた検討を行った。まず、指導室場面において、これらの行動を形成し(研究1・研究2)、その効果を実際の3店舗において測定した(研究3)。しかし、指導室場面で形成した行動は、実際の店舗に般化しなかった。支払いに関しては、レジの人による「自然な援助」があったため、比較的スムーズに遂行可能となった。他方、商品選択に関しては、店舗では商品に表示してある値札が見にくいものや、値段自体が表示されていないものなどがあり、対象者は値段に注目することが困難であった。このために、般化が阻害されたと考えられた。そこで、指導者が商品に値段シールを貼り、値段の明確化を行ったところ、所持金内での商品選択行動が可能となった。対象者への指導及び対象者から社会環境側に発せられた要求(望月,1997)の観点から、本研究の結果を考察した。
  • 松本 敏治
    原稿種別: 本文
    1999 年 37 巻 3 号 p. 11-21
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    知的障害者が文理解課題において示す文理解ストラテジーが一貫したものであるか否かを検討した。文の長さ、動詞の種類、動詞の変動性、項目数を独立変数として各被験者が示す文理解ストラテジーとの関係を調査した。被験者は、精神年齢13歳から37歳の男性27名女性3名の施設入所者である。結果は、つぎのようであった。1)一貫して同じ文理解ストラテジーを示した被験者は7名のみであった。2)10名の被験者は、2つ以上の文理解ストラテジーを示した。3)動詞の変動が、被験者の示す文理解ストラテジーに影響をおよぼす。これらの結果にもとづいて、文理解における作業記憶の役割が議論された。
  • 相澤 宏充, 吉野 公喜
    原稿種別: 本文
    1999 年 37 巻 3 号 p. 23-32
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は、聴覚障害者の言語獲得を考察するため、統語情報、意味情報の言語処理に注目し、文の正誤判断の反応時間を測定し、これらの情報が言語処理に影響を与えるか検討した。実験1では、意味情報として命題のカテゴリ、主格となる項の有生無生情報の判断を、統語情報として格助詞の正誤の判断を検討した。健聴群の文の正誤判断には、統語情報と意味情報が自律的に使用されていることが示された。しかし聴覚障害群では、これらの情報が利用されているか明確にならなかった。実験2では、「と格」の項と付加語を用いて命題について検討した。聴覚障害群、健聴群ともに項刺激より付加語刺激で遅い反応時間を示す傾向にあった。この2つの実験から、情報の違いによる言語処理の特徴、言語処理のモジュール性、健聴の年少群との相似点について考察した。
  • 四日市 章
    原稿種別: 本文
    1999 年 37 巻 3 号 p. 33-42
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    重度聴覚障害児の字幕利用に関する基礎的情報を得るため、短時間提示文の読み取りについて、提示文の長さと提示時間との関係から検討した。また、漢字仮名交じり文と平仮名文の読み取りの違いや、提示文の背景を示唆する手がかりを事前に与えた場合の、読み取り成績の変化についても検討した。その結果、日本語の読み能力の違いが、短時間提示文の読みと深く関係しており、日本語能力の高い聴覚障害児では0.5秒提示の4文節文及び1秒提示の5文節文の読み取りがほぼ可能なことが分かった。しかし読み能力が低い被験児の場合には、1秒提示の4文節文の読み取りだけがほぼ可能であった。また読み能力が低い場合、平仮名文よりも漢字仮名交じり文の方が読み取りやすかった。さらに、手がかりが付加された場合は、読み能力に関わらず、提示文の意味が若干把握しやすくなることが分かったが、正確な読みの向上への効果はみられなかった。
  • 緒方 啓一, 吉野 公喜
    原稿種別: 本文
    1999 年 37 巻 3 号 p. 43-51
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は高度・重度聴覚障害者におけるメロディ知覚の特徴を明らかにすることが目的である。実験1では、全音の弁別が可能な4名の聴覚障害者に対し、3音メロディの異同弁別課題を個別に行った。その結果、弁別成績はトータルスコアで個人差を認めたが、いずれの被験者もメロディ刺激を構成するピッチの音域やピッチパターンのサイズには影響をうけなかった。ピッチパターンの変形に対する彼らの知覚的判断は等価でなく、高度・重度聴覚障害者はピッチシークエンスの形態認識に特異性を持っていることが示唆された。実験2では、3音メロディの弁別課題で選別された5名の被験者に対し、6音からなる調性メロディと無調性メロディの弁別実験を行った。その結果、一例の被験者を除き、聴覚障害の被験者は6音メロディの弁別、特に無調性メロディの弁別が著しく困難であった。しかし健聴者と同様、聴覚障害者においても、調性への感受性を保有していることが明らかとなった。
  • 藤金 倫徳
    原稿種別: 本文
    1999 年 37 巻 3 号 p. 53-60
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では、他者に要求を拒否されることが多い軽度の発達障害児の要求の実現確率の向上を試みた。対象児も他者の要求を拒否することが多く、要求充足行動の生起が低頻度であった。要求充足行動の生起率を、対象児と兄との間で評価した結果、ベースライン期では、対象児の要求充足行動は低頻度であり、同様に、兄の要求充足行動の生起率も低下した。したがって、対象児の要求の実現確率を高めるためには、対象児自身の要求充足行動を促進することが有効だと考えられた。その方法としてビデオモデリングを試みた結果、対象児の要求充足行動の生起率が高まった。このビデオモデリングは、現実場面で対象児の拒否が強化される前に行う必要性が示唆された。事後観察期では、兄の初発の要求に対する対象児の充足行動の生起率は低下したものの、兄が何度か連続して要求すれば、対象児はそれを充足できた。また同様の形態で、兄の要求充足行動も維持された。
  • 清水 光弘
    原稿種別: 本文
    1999 年 37 巻 3 号 p. 61-67
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    19名の痙直型両麻痺児を対象として、その情報処理様式の特徴をK-ABCを用いて検討した。総合尺度の平均値では、継次処理尺度が同時処理尺度より高い「継次処理優位性」が見い出された。各対象児ごとの成績では、継次処理優位者が10名、同時処理優位者が1名であり、残りの8名には両尺度間に有意な差はなかった。下位検査の評価点分布を見ると、同時処理尺度の中でも、視覚-運動系を介する空間処理能力、空間配置の能力が劣っていた。これらの結果から、視覚認知能力の障害は、同時処理尺度の一部の能力と関連性のあることが示唆された。有効な教育的働きかけをするためにも、情報処理様式の特徴を明らかにする必要性が、学習障害児の教育との関連から考察された。
  • 奥田 健次, 井上 雅彦
    原稿種別: 本文
    1999 年 37 巻 3 号 p. 69-79
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は強いこだわりを持つ中度知的障害を伴う自閉症児における対人関係の改善のための指導について検討することを目的とした。本事例においては、家庭中心型指導により対象児の家庭でフリー・オペラント技法による介入を行った。その結果、対象児の自発的なかかわり行動や指導者との会話のターン数が増加し、それとともに指導者との遊びや会話内容も多様になった。さらに、指導者以外の他者に対しても自発的にかかわりを求めることが増加したことが報告された。これらの結果から、本事例におけるフリー・オペラント技法による介入の効果、般化を促進した要因について考察された。
  • 武藤 崇, 松岡 勝彦, 佐藤 晋治, 岡田 崇宏, 張 銀栄, 高橋 奈々, 馬場 傑, 田上 恵子
    原稿種別: 本文
    1999 年 37 巻 3 号 p. 81-95
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本論文では、応用行動分析を背景に持つ、地域に根ざした教育方法を、地域に根ざした援助・援護方法へ拡大するために、応用行動分析が持つ哲学的背景や、障害のある個人を対象にした「行動的コミュニティ心理学」の知見を概観し、今後の課題を検討することを目的とした。本稿は、(1)応用行動分析とノーマリゼーションの関係、(2)行動的コミュニティ心理学のスタンス、(3)障害のある個人を対象にした行動的コミュニティ心理学の実証研究の概観、(4)その実証研究の到達点の評価と今後の課題、から構成されている。今後の課題として、概念、方法論、技術の各レベルにおける、他のアプローチとの研究的な対話の必要性と「援護」に関する方法論的・技術的な検討の必要性が示唆された。
  • 熊谷 恵子
    原稿種別: 本文
    1999 年 37 巻 3 号 p. 97-106
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では、算数障害という用語の内容や範囲について明らかにするために、主として米国における学習障害の法制度上の位置づけと教育的アプローチにおける算数障害のとらえ方、内外の学習障害研究の枠組みの中で論じられる算数障害のとらえ方、日本で実質上学習障害の診断に重要な国際的な医学的診断基準における算数障害のとらえ方について概観した。その結果、それぞれの視点によってこの用語が指し示す内容や範囲が不明確で多義的であることが明らかとなった。わが国においても、学習障害に関する制度上の位置づけが検討されているが、改めて算数障害という用語を明確に規定する必要があると考える。算数障害という用語の定義は、発達的視点を導入すること、計算障害のみではなくより広い概念としてとらえること、下位分類においては、認知障害の特徴に対応した指導へつながるような情報処理的観点を含めることという3点が重要であることが指摘された。
  • 小笠原 昭彦
    原稿種別: 本文
    1999 年 37 巻 3 号 p. 107-114
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
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