地域社会に根ざしたリハビリテーション(community-based rehabilitation; CBR)は、その発展過程や実施されている地域の偏り等から、途上国におけるリハビリテーションの方法論のひとつであるといった理解が一般的である。本稿の目的は、CBRを「障害者へのサービス提供の一形態としてのCBR」と「障害者へのサービス提供システムの哲学(考え方)としてのCBR」の2つの側面をもつ概念であると規定し、1)日本におけるCBRへの誤解、2)CBRの内包するパラダイムチェンジ、3)日本の教育におけるCBRの意味、の3つの視点から日本の教育に対するCBRの意義を検討することであった。議論の過程で、わが国の教育が直面している社会資源の地域間格差、財政危機、学校で特別な支援を必要としている子どもたちの増大といった現状を考慮していくと、「障害者へのサービス提供システムの哲学(考え方)」の側面を明確に位置づけたCBRは、これらの問題に切り込んでいく上で重要な役割を果たす可能性が高いことが示唆された。また、今後CBRをわが国の教育システムに取り入れることを検討する場合は、現在のサービス提供システムの背景にある哲学とのくい違いを解決し、専門家養成のための新たなプログラム開発などのこれに付随した課題に対応する必要に迫られることが予測される。
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