特殊教育学研究
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45 巻, 5 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 廣澤 満之, 田中 真理
    原稿種別: 本文
    2008 年 45 巻 5 号 p. 243-254
    発行日: 2008/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    即時性エコラリアや遅延性エコラリアといった、子どもによって独自の意味が込められ、伝達意図が伝わりにくい発語を非慣用的言語行動という。本研究では、非慣用的言語行動を多用する自閉性障害児に対して、対象児からの応答率が高いかかわり手の発語を明らかにすること、かかわり手の非慣用的言語行動に対する理解の変容過程を明らかにすることを目的とした。1名のかかわり手を対象として、かかわり手の発語と対象児との自由遊び場面に対するプロトコルを分析した。その結果、かかわり手の発語のうち、言葉遊びのように会話ターンの充足自体を目的とした発語・モニタリングへの応答率が高かった。また、かかわり手の非慣用的言語行動への理解は、"意味の付与""有用なコミュニケーション手段としての理解""非慣用的言語行動の積極的利用"という段階があると考えられた。非慣用的言語行動のコミュニケーション手段としての有用性についての議論が行われた。
  • 金 珍煕, 園山 繁樹
    原稿種別: 本文
    2008 年 45 巻 5 号 p. 255-264
    発行日: 2008/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では、公立幼稚園において個別の指導計画を含め、特別な教育的支援がいかになされているかの実態を把握するために、公立幼稚園の管轄機関である教育委員会の担当職員を対象に、障害幼児に対して市のシステムとしてどういう体制がつくられているか、および教育委員会が公立幼稚園や幼稚園教諭に対していかなる支援を行っているかを明らかにし、就学前段階での特別支援教育の体制整備に関する基礎資料を得ることを目的とし、都道府県庁所在地市・区の教育委員会37か所を対象に郵送法による質問紙調査を実施し、34市(92%)から回答があった。その結果、26市(76%)の公立幼稚園に障害幼児が在籍しており、全体の障害幼児在籍率は2.2%であった。そのうち、在籍障害児率0%が8市を示しており、最も多い市においては11.3%であった。障害幼児への具体的支援については、加配教員や介助員、非常勤教諭等の「人的支援」が12市(50%)、「研修や相談活動による教員と保護者への支援」が12市(50%)を示した。また、公立幼稚園に対して「個別の指導計画」の作成を求めている教育委員会は7市(21%)のみであった。実際に使用している個別の指導計画の書式において、子どもに対する実態把握から評価まで作成しているのは1か所のみであった。
  • 網谷 優子, 武蔵 博文
    原稿種別: 本文
    2008 年 45 巻 5 号 p. 265-273
    発行日: 2008/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    特別支援学校小学部1・2年の児童に対して仲間との社会的コミュニケーションを図る学習環境を日課に位置づけて設定し、相互交渉での役割がどのように学習されるかを検討した。学習場面、活動の文脈、相互交渉の相手・役割・形態について構造化された同一の環境において、2名の対象児は異なる学習の傾向を示した。1名は「発表者」としての役割習得後、「聞き手」として発表者に対する全般的な注目が増加した。もう1名は、一定の条件下で安定して高い割合で生起した発表行動および発表者への注目などの聞き手行動が、交渉相手との位置やそれに伴う手続きの変化などに影響を受け減少した。結果より、集団場面における仲間同士の相互干渉での役割の維持にかかわる条件として、発表者の役割には、相手に対する位置取り、聞き手の役割には「聞き手」の一人一人の行動に「話し手」の明確な反応が随伴する手続きの工夫などが必要であることが示唆された。
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