特殊教育学研究
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46 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 森 つくり, 熊井 正之, 川住 隆一
    原稿種別: 本文
    2008 年 46 巻 3 号 p. 135-147
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    言語指導場面における幼児期前期の聴覚障害児の内発的動機づけとそれに関与する心理的欲求(交流感、有能感、自己決定感)の変化、および母親からのフィードバックと働きかけがこれらの変化に及ぼす影響について、2事例を対象に検討した。その結果、1例において、まず交流感を基礎に内生的動機づけとそれに関与する有能感が増加し、その後、自己決定感がみられるようになるとともに、自発的-内生的(内発的)動機づけが増加するという順序性が認められた。課題成功時の母親からの「承認する」「褒める」等の感情的なフィードバックは有能感に影響を与え、課題失敗時の「励まし」を含む感情的なフィードバックは無力感反応を抑制すると考えられた。また、母親の「励まし」は子どもが独力で課題を成し遂げることを促し、「叱責」は内的統制感を増加させる等、「褒める」だけでなく、「励ます」「叱る」といった母親の働きかけが自己決定感に影響を与えることが示唆された。
  • 渡邉 雅俊
    原稿種別: 本文
    2008 年 46 巻 3 号 p. 149-161
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は、構造化されていない問題における知的障害児のプランニングの特徴とその影響要因について検討した。プランニング過程は、遂行基準の産出と目標状態の構想、それに至る遂行の見通しから成ると考えた。特に遂行基準のとらえ方に着目し、プランの形成に与える影響について調べた。対象は、知的障害児35名(MA 5歳水準18名、MA 8歳水準17名)と非知的障害児48名(CA 5歳24名、CA 8歳24名)であった。課題は、人形が山に登れるものを作るという大まかなテーマが与えられた積木構成場面であった。対象児の構想、積木の準備行動、積木操作過程における修正行動と構成物、構成物の自己評価が分析された。その結果、知的障害MA 5歳は、プランニング以前の教示理解が問題状況に即しておらず、それは教示内容に関連する知識の取り出しが制約されていることが一因と推察された。知的障害MA 8歳では、局所的プランニングを行う傾向が示された。その要因として、遂行基準を曖昧にとらえたため、概略的な目標状態が構想され、遂行を部分的にしか見通せなかったことが考えられた。
  • 北 洋輔, 田中 真理, 菊池 武剋
    原稿種別: 本文
    2008 年 46 巻 3 号 p. 163-174
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    発達障害に対する正しい認識と適切な支援を導くために、広汎性発達障害児と注意欠陥多動性障害児を中心にして、発達障害児の非行行動発生にかかわる要因について研究動向を整理し、問題点と今後の改善点を指摘した。先行研究からは、個体の障害特性に密接にかかわる非行行動の危険因子と障害を取り巻く環境の危険因子が指摘された。だが、危険因子に着目した取り組みは、非行行動にかかわって発達障害児本人と親・関係者に対する支援を進める際の社会的意義を十分に達成できない問題点がある。その改善点として、非行行動の保護因子の導入と発達障害児の内面世界への着目が挙げられた。
  • 井坂 行男
    原稿種別: 本文
    2008 年 46 巻 3 号 p. 175-191
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は、聾学校小学部第3学年児童における分数の導入単元について、実際の授業記録をもとに、授業展開を分節に分けて検討したものである。その結果、実際の授業の1単位時間の平均分節数は5.2分節であった。また、授業時間は標準時数に比較して4.6単位時間分の加配が認められた。第1・第3小単元では授業時間の加配が認められ、児童の「概念的混乱」「概念応用による混乱」が生じていた。これらの小単元では分数の意味や分数の構成的内容が扱われていた。児童にとっては既有知識の整数の世界に新たな分数の知識を取り入れるための学習内容であったため、より多くの時間を要したと考えられる。また、「具体的操作」の活用によって、児童の「概念の活性化」が促されていた。さらに、全13時間の中では9時間目に分数の構成、系列、大小比較等の分数概念全体の理解が促進されたことから、最も重要な時間であったと思われた。また、児童の学習内容の理解はほぼ目標レベルまで達成されていた。しかし、評価問題においては言語的な課題に基づく誤りと「長さ」を扱う問題に誤りが認められた。
  • 青木 真純, 勝二 博亮
    原稿種別: 本文
    2008 年 46 巻 3 号 p. 193-200
    発行日: 2008/09/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    通常の学級に在籍する聴覚優位で書字運動に困難がみられた小学校3年生男児に対して漢字書字支援を実施した。はじめに学習漢字を対象児の既知文字に構成要素として分解させた後、音声言語リハーサルと部分再生による支援を実施した。音声言語リハーサルでは分解した構成要素を音声言語で復唱させた。部分再生では音声言語リハーサルに加え1〜2画程度の部分的な書字による補完を求めた。その結果、いずれの支援でも半数以上の漢字を書字できるようになった。しかし、書字エラーをみると、音声言語リハーサルでは構成要素自体の書字に誤りが多かったのに対し、部分再生では、構成要素の書字は可能であったが、それらの配置や結合部でのエラーが多かった。したがって、対象児に負担がかからない程度の補完的な書字活動を取り入れることで、音声言語リハーサルでは改善されなかった漢字細部の誤表記を修正できることが示唆された。
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