特殊教育学研究
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46 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 大森 梨早子, 澤 隆史
    原稿種別: 本文
    2008 年 46 巻 4 号 p. 205-214
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では、聾学校に在籍する小学部、中学部、高等部の児童および生徒が書いた文の発達的変化について、複雑さ、正確さ、およびその関連から検討した。文の複雑さの指標として文構造の分類を、正確さの指標としては容認性の評定を行った。分析の結果、文の複雑さは小学部から高等部にかけて徐々に増加していくが、比較的単純な構造を有する複文が多いことが示された。また、文の正確さについては、いずれの学部でも文法的・意味的に正しいと評定された文が多かった。また、小学部と中学部では単純な構造の文で文法的誤りが多いのに対し、高等部では複雑な文ほど誤りが生じやすくなることが示され、文の複雑さと正確さとの関連は発達的に変化することが示唆された。
  • 松浦 直己, 橋本 俊顕, 十一 元三
    原稿種別: 本文
    2008 年 46 巻 4 号 p. 215-222
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、少年院群の行動と情緒の特性を明らかにすることである。対象群は少年院在院者の30名。平均年齢は16.8±2.2(M±SD)歳である。コントロール群は一般的な高校の普通科に在籍する1、2年生28名であり、両群ともすべて男性である。両群にChild Behavior Checklist-Youth Self Report(CBCL-YSR)が実施された。対象群の内向尺度のT得点は62.6±9.10(M±SD)点であったのに対し、対照群のT得点は52.7±7.26(M±SD)点であり、顕著な差が確認された(p=.0000)。不安抑うつ傾向等の内在的問題においても、対象群のほうが深刻であることが示された。同様に、外向尺度や総得点の平均値でも対象群のほうが深刻であった(p=.0000)。また、対象群の内向・外向・総得点の平均値はすべて臨床域であった。すなわち、少年院在院者の多くは、多面的かつ深刻な問題性を有していたと考えられ、臨床域の精神症状を呈していた可能性があった。
  • 河野 俊寛, 平林 ルミ, 中邑 賢龍
    原稿種別: 本文
    2008 年 46 巻 4 号 p. 223-230
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    日本語の書字障害評価検査作成のための基礎データを求めるために、任意に抽出した小学校15校の1年生〜6年生までの通常学級在籍児童の視写書字速度を測定した。有意味文課題と無意味文課題をそれぞれ5分間書き写す手続きによって速度を測定した。有意味文課題5,481名(男子2,829名、女子2,652名)、無意味文課題5,478名(男子2,827名、女子2,651名)のデータを分析した結果、有意味文課題、無意味文課題とも学年が進むにつれて書字数が増加しており、1分間の書字数と学年との関係は回帰直線で示すことができた(有意味文課題y=3.9x+9.0;無意味文課題y=3.7x+6.6)。男女差があり、両課題の全学年で女子のほうが書字数は多く、統計的に有意差があったのは、有意味文課題では1年、3年、4年、5年、6年、無意味文課題では3年、4年、5年の学年であった。
  • 高橋 ゆう子
    原稿種別: 本文
    2008 年 46 巻 4 号 p. 231-240
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では、歩行が安定しない重度の知的障害児2名に動作法を適用し、身体への気づきが促され、過度な緊張の弛緩や適度な緊張が獲得されるプロセスにおいて、日常行為がどのように変容するか、特に母親との関係の中でとらえられる子どもの変容に着目して検討を行った。分析にあたっては、動作法適用の経過、日常生活での様子、さらに発達検査の項目に関する母親の自由記述を資料とした。その結果、日常行為の変容過程における特徴として、(1)日常行為での身体の気づきが高まる、(2)周囲への注意が変化する、(3)試行的な動きが生じる、(4)情緒不安定さが軽減する、というプロセスがとらえられた。そこから身体の操作性と日常行為との関連、日常行為の変容に関する母親の気づきについて考察を行った。
  • 坂本 真紀, 武藤 崇
    原稿種別: 本文
    2008 年 46 巻 4 号 p. 241-251
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では、自閉症児童2名に対して硬貨構成見本合わせ課題を利用した金銭支払いスキル形成を行い、その指導プログラムに必要な構成要素を検討することを目的とした。研究1では、1名の児童において同一硬貨構成見本合わせ課題を含むトレーニングを実施し、それに(1)硬貨構成見本合わせ課題の行動連鎖の強化、(2)媒介反応の形成、(3)硬貨構成反応に対する視覚的支援、(4)般化促進のために物理的類似性のある刺激の設定という手続きを加えることで適切な硬貨構成反応や地域の店舗での支払い行動を形成することができた。研究2では、研究1とは別の児童で、研究1で追加された手続きを新たに指導プログラム化し、エラーレスを指向した指導プログラムを実施した。その結果、少ない誤答数で金銭支払いスキルの形成ができた。総合考察では、エラーレスを指向した指導プログラムに必要な構成要素と、個々の児童・生徒に合わせた指導プログラムの「オーダーメイド化」について述べた。
  • 松下 浩之, 園山 繁樹
    原稿種別: 本文
    2008 年 46 巻 4 号 p. 253-263
    発行日: 2008/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は、知的障害を伴う自閉性障害児1名を対象に、余暇時間に好みの活動を主体的に選択し、実行することを目的とし、応用行動分析学的な視点から、写真カードを用いた活動スケジュールの適用の有効性を検討した。大学の指導室において写真カードを用いた活動スケジュールの利用を指導した結果、指導室場面においては、好みに基づいて活動を自ら選択し、決定したとおりに活動を遂行することが可能となった。しかし、形成されたスケジュール利用行動の家庭における般化に関しては、スケジュール利用を開始するために母親のプロンプトが必要であったこと、指導室場面に比べてスケジュールどおりに活動を遂行できなかったことなど、いくつかの問題点が示された。家庭内において余暇活動を支援する際には、確立操作や家庭における「文脈」を含めた複雑な随伴性の問題に関して詳細に検討する必要があることが示唆された。
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