特殊教育学研究
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47 巻, 3 号
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資料
  • 長谷部 慶章, 中村 真理
    2009 年 47 巻 3 号 p. 147-153
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2017/11/29
    ジャーナル フリー
    本研究は、知的障害施設職員のバーンアウト関連要因について因果モデルを仮定し、共分散構造分析によってそのモデルを検証した。その結果、修正モデルの適合度指標から、妥当性のあるモデルが構成された。また、「ストレッサー」から「精神的健康」と「バーンアウト」、「精神的健康」から「バーンアウト」、「スーパービジョン」から「ストレッサー」へのパス係数が有意であった。これらの結果から、職員の日々の仕事上でのストレスの蓄積が精神的健康を悪化させ、それが持続することで「バーンアウト」に結びつくこと、「スーパービジョン」が「ストレッサー」を軽減させること、つまり間接的に「精神的健康」や「バーンアウト」に影響を及ぼす可能性があることなどが示唆された。
  • 岡村 章司, 渡部 匡隆, 大木 信吾
    2009 年 47 巻 3 号 p. 155-162
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2017/11/29
    ジャーナル フリー
    アスペルガー障害のある児童を対象に、算数の課題従事行動を高めるための自己管理の支援法について検討することを目的とした。対象児はテスト場面において、活動に安定して取り組むことが困難であり、プリントを破るなどの行動がみられていた。行動観察の結果に基づき、介入1期では、得点のグラフ化、休憩時間の活動内容の事前選択、それらのスケジュールを自分で記入することからなる自己管理の支援を行った。介入2期では、解答する順番を決める、解き方を自分で言いながら解くなどの、本人自らが行っている解答方略を明記した自己教示支援シートを用いた自己管理の支援を行った。その結果、ベースライン期に比べて、課題従事率と得点の向上がもたらされた。また、指導者変更条件および指導者不在条件においても、その結果が維持された。以上の結果について、本人が見いだした解答方略を尊重した自己管理の支援の有効性から考察した。
展望
  • 長南 浩人, 澤 隆史
    2009 年 47 巻 3 号 p. 163-171
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2017/11/29
    ジャーナル フリー
    本研究は、聴覚障害児の読みにおけるメタ認知能力について、メタ認知的知識とメタ認知的活動に関する研究、指導研究の面からこれまでの研究を概観し、わが国において今後、聴覚障害児のメタ認知能力を検討する際の課題について論考することを目的とした。メタ認知に関する研究は、読みに熟達した聴覚障害児は、健聴児同様に読みに関するメタ認知的知識を有し、メタ認知的活動を行っていること、そのような聴覚障害児は、健聴児と比較した場合、少ないこと、メタ認知に関する指導を行うとそれを獲得し、読みの成績が向上することが報告されている。しかし、メタ認知的知識やメタ認知的活動の実態に関する研究には、方法論上、被験者の数やデータの収集方法に課題が残ること、また指導法に関する研究についてもプログラムの内容や指導効果の検証の方法にも検討の余地がうかがわれたことから、これらの点を今後の課題としてあげた。
研究時評
  • 藤野 博
    原稿種別: 本文
    2009 年 47 巻 3 号 p. 173-182
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2017/11/29
    ジャーナル フリー
    PECS(絵カード交換式コミュニケーション・システム)に焦点を当て、AACとしての有効性と音声言語表出の促進に与える効果について諸研究の知見を概観し考察した。PECSの指導が絵カードによる自発的なコミュニケーション行動の獲得に有効であることに関しては、これまでの研究から十分なエビデンスが蓄積されていると考えられた。PECSの音声言語表出促進効果については肯定的な結果が報告されている一方、否定的な結果もあり、一様に効果があるとはいえなかった。そして、PECSで音声言語表出が増加したケースでは指導前からエコラリアや音声模倣などがみられる傾向があり、その観点からの検討の必要性が示唆された。また、使用に伴って音声言語表出の促進が報告されている身振りサインやVOCAなどの他のAACシステムに比較してのPECSの効果については、十分な検討がなされておらず、今後の課題になると考えられた。
  • 仲野 真史, 長崎 勤
    2009 年 47 巻 3 号 p. 183-192
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2017/11/29
    ジャーナル フリー
    出来事を意味づける手段として、また読解力や自己理解および他者理解の発達的基盤として、ナラティブへの注目が高まっている。ナラティブは幼児期、学齢期を通して高次化していくが、この発達過程には大人からの社会的な働きかけ、一般的・社会的認知の発達、ふり遊びなどの行為水準での物語的活動が関与する。また、障害児のナラティブでは、それぞれの障害特性がナラティブの発達を制約する。日本ではナラティブの発達を支援する実践は古くから行われているものの、発達を体系的にとらえる観点やアセスメント方法の構築は進んでこなかった。本稿では、先行研究の概観を踏まえ、日本の子どものデータを積み上げること、これまでの知見を結びつけ、諸要因が影響し合うプロセスを解明すること、形式的側面だけでなく、ナラティブがどのような文脈でどのように使用されたのかといった側面を分析することなどの今後の課題が提起された。
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