特殊教育学研究
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48 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 相羽 大輔, 河内 清彦
    原稿種別: 本文
    2010 年 48 巻 4 号 p. 263-273
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では、弱視学生に対する健常学生の交流抵抗感に及ぼす障害開示の効果を、共同行動の程度が異なる障害開示条件(ポジティブ条件・ミックスド条件・ネガティブ条件)とコントロール条件によって比較検討した。参加者は282名の健常学生であり、4開示条件のうちひとつの開示文を提示した後、河内(2004)の交流抵抗感尺度(交友関係尺度、自己主張尺度)への回答を求めた。開示条件と性別の要因に基づく二元配置分散分析の結果、共同場面では、各障害開示条件がコントロール条件よりも弱視学生との交流に対する健常学生の抵抗感を低減できることや、共同作業の可能性を示すポジティブ条件が他の障害開示条件よりも効果的であることが明らかとなった。しかし、主張場面では、障害開示の効果は見いだせなかった。一方、開示者と被開示者が同性の場合、共同場面では女子同士のほうが男子同士よりも交流抵抗感は低いこと、主張場面では男子同士のほうが女子同士よりも交流抵抗感が低いことも明らかとなった。本研究において、障害開示は弱視学生と健常学生の対人関係に効果を示すことが明らかとなった。
  • 平林 ルミ, 河野 俊寛, 中邑 賢龍
    原稿種別: 本文
    2010 年 48 巻 4 号 p. 275-284
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    書字障害の評価は、これまで書字速度と正確さを測度とする方法が中心であり、書字困難の要因を特定するには不十分であった。そこで本研究では、デジタルペンを用いて小学1年生から6年生までの618名に対し、文章の書き写し課題を実施し、書字行動を運動フェーズと停留フェーズに分けて分析した。その結果、運動に関しては、仮名は小学2・3年生間で、漢字は4・5年生間で急激に書字運動速度が増加すること、停留に関しては、仮名は1年から3年にかけて、漢字は4年から5年にかけて停留時間が短くなることが明らかとなった。停留は運動よりも発達変化がゆるやかであり、また仮名と漢字では発達の過程が異なっていた。運動フェーズは視覚運動協応と、停留フェーズは文字の形態分析や音・意味との結びつきと関連していると考えられ、デジタルペンを用いた新たな書字評価の方向性が示された。
  • 金 珍煕, 園山 繁樹
    原稿種別: 本文
    2010 年 48 巻 4 号 p. 285-297
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では、広汎性発達障害幼児1名と幼稚園教師1名に対して、埋め込まれた学習機会(ELO)の活用と埋め込み支援計画書の立案・実施、および幼稚園教師による評価について、外部支援者か定期的なフィードバックを行い、統合保育場面における支援効果を検討した。埋め込み支援計画書の立案の際には、外部支援者と教師が協議したうえで、ねらいと具体的手立てを選定し、教師の支援の適切性と埋め込まれた学習機会の活用を促すために、外部支援者によるフィードバックの機会を定期的に設けた。その結果、対象児の保育活動への参加と適切な行動が促進された。また、教師の望ましい指導方略とELOの使用インターバル率、および正確な実行率は、フィードバック条件下でより高いことから、統合保育の経験のない保育者にとって2回の勉強会による保育者訓練だけでは不十分であり、フィードバックによる支援を必要とすることが示された。
  • 小笠原 恵, 白坂 佐知子, 朝倉 知香, 矢島 卓郎
    原稿種別: 本文
    2010 年 48 巻 4 号 p. 299-309
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では、重度の知的障害児に対して、1メッセージ再生装置(トーキングシンボル)を用いて他者に自分の要求を伝える行動を形成することを目的とした。まず、本児の好む玩具の「機能的操作」の出現を促した。その結果、操作に対するフィードバックとしての随伴的な変化は、より明確に子どもに伝わりやすいように設定することが、「機能的操作」の形成のために有効であると示唆された。また、指導開始以前に高頻度でみられた「舐める」行動と「叩く」行動(非機能的操作)が低減した。このことから、「機能的操作」を確立することは、「非機能的操作」の生起頻度を抑制することに効果があると推測された。次に、1メッセージ再生装置の「機能的操作」を形成したうえで、人に対する要求文脈でこの操作の出現を促す、といった段階を踏んだ指導を行った。その結果、自発的に「トーキングシンボルを押す」という要求手段の出現がみられた。以上より、玩具に対する「機能的操作」の形成、人の行為に対する「機能的操作」の形成、人に対する要求文脈での「機能的操作」の実行促進、といった段階的な指導の効果が示された。
  • 神山 努, 野呂 文行
    原稿種別: 本文
    2010 年 48 巻 4 号 p. 311-322
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は、知的障害がある幼児・生徒2名の保護者支援において、保護者に過剰な負担がかからない支援手続きの検討を目的とした。具体的には、保護者が実施しやすい支援手続きとして、日常生活内で実施可能な物理的手がかりの用意を主とした手続きをアセスメントから立案し、保護者に教授した。また、保護者に対象児の行動記録を依頼することによる、保護者の支援行動の変容もあわせて検討した。その結果、支援手続きを立案し、保護者に教授した場面において、いずれの対象児も標的行動の生起が上昇し、保護者の記録行動も維持された。さらに、1名の対象児について、支援手続き教授後に、別場面においても保護者に記録依頼をすることで、保護者の物理的手がかり用意行動や記録行動の自発がみられた。また、社会的妥当性の評定結果から、いずれの保護者もプログラムを肯定的に評価していることが示された。
  • 氏間 和仁
    原稿種別: 本文
    2010 年 48 巻 4 号 p. 323-331
    発行日: 2010/11/30
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    ロービジョン(LV)者の読書に際して、LVの見え方に応じた文字サイズを推定するための研究の動向について報告した。文字サイズの推定は、従前から行われていた機能評価モデルから、行動評価モデルへと変遷してきた。なかでもLegge,Ross,and Luebker(1989)が提案したMNREADテストは、行動評価モデルのなかでも、他の同様のテストよりも信頼性があるとされ、世界的に利用されているテスト法である。小田・Mansfield・Legge(1998)が日本語に翻訳し、日本のリハビリテーションを中心に用いられてきた。MNREADは、臨界文字サイズ(CPS)等の臨床上有用なデータを提供する。それらのデータは、各眼疾患の読書の困難さの特徴を明らかにし、有効な支援の根拠を提供してきた。日本語の行動評価モデルの今後の課題として、(1)小学生の読書評価、(2)漢字構造の特性、(3)CPSの解釈および(4)LV以外の領域での活用、の4点を指摘した。
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