特殊教育学研究
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48 巻, 5 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 森 まゆ, 佐島 毅, 青松 利明
    原稿種別: 本文
    2011 年 48 巻 5 号 p. 337-349
    発行日: 2011/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では、点図の線の識別容易性において点間隔および点サイズが2線を識別する課題遂行の成否および遂行所要時間に及ぼす効果を分析することで、識別容易性が高く適切な2線の要因を検討することを目的とした。その結果から、点図の線の識別容易性には点間隔と点サイズが効果を及ぼしていることが確認された。研究1においては、点間隔が点図の線の識別容易性に及ぼす効果を検討した。点サイズが中点(直径1.5mm)の場合は、2線の点間隔の差が3mm以上あることが識別容易性が高く、点図の線として適切な2線の要件であることが示唆された。研究2では、点図における線を構成する点のサイズが識別容易性に及ぼす効果を検討した。同じ点間隔で「中点・大点」(直径1.7mm)の組み合わせは、対象者8名中課題を完遂できた者が1〜3名と少なく識別容易性が低いため、点図を構成する線としては不適切であることが示された。一方、完遂者6〜8名であった「大点・小点」(直径0.7mm)の組み合わせが、比較的識別容易性が高いことが示唆された。
  • 山根 隆宏
    原稿種別: 本文
    2011 年 48 巻 5 号 p. 351-360
    発行日: 2011/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は、高機能広汎性発達障害(以下、HFPDD)児をもつ母親の、診断告知時の感情体験に影響を与える要因を検討することを目的とした。HFPDD児をもつ母親203名を対象に、診断告知時の感情体験、診断対応満足度、診断告知のタイミング、育児ストレス、ソーシャルサポートについて質問紙調査を行った。その結果、母親が子どもの発達に不安を感じる時期が遅く、診断告知の時期が早く、診断告知に説明不足を感じるほど不安感とショックを体験していた。また、診断告知が遅く、診断告知の対応に満足を感じるほど安堵感を体験していた。さらに、母親が子どもの発達に不安を感じる時期と診断告知の時期が遅く、診断時の対応に満足を感じ、公的なサポートが低いほど、自責感を体験していた。以上より、診断告知において、診断告知を受けるタイミングや育児ストレスを踏まえた対応、当面の指針となる具体的な助言と情報の提供の必要性が示唆された。
  • 渋谷 郁子
    原稿種別: 本文
    2011 年 48 巻 5 号 p. 361-370
    発行日: 2011/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は、発達性協調運動障害(DCD)の説明に用いられる不器用という語の、一般的な意味を明らかにすることを目的とした。(1)動作性、(2)時点、(3)身体部分、(4)起因、(5)観点、(6)持続性の6基準を用いて、「不器用」を含む動作の形容語40語について、一般学生89名に評定を求めた。その結果、不器用という語は「(1)動作性をもつ、(2)動作の遂行過程を表す、(3)身体の一部を使う、(4)技能が影響を及ぼす、(5)評価的かつ客観的な観点をもつ、(6)個人の特徴を表す」ことがわかった。クラスター分析からは、『精緻』『技巧』『速度』の3クラスターが抽出され、「不器用」は『技巧』クラスターに属していた。以上のことから、「不器用」は、動作の技能的側面と関係していること、練習に伴う動作の変化を示唆する『技巧』という意味を含んでいることにおいて、DCDと類似していた。しかし、身体の一部を用いた動作を表す点、個人の特徴に結びつけられる点で、DCDと異なる部分もあった。
  • 寺本 淳志, 川間 健之介, 進 一鷹
    原稿種別: 本文
    2011 年 48 巻 5 号 p. 371-382
    発行日: 2011/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究は、重度・重複障害を有する成人の意思表出の促進を目指した支援に関する実践研究である。スイッチ操作の向上と、主体的な意思表出が相互に促進し合うという仮説をもとに、筆者自作のスイッチとパソコン教材を用いて支援を行い、その有効性を検討した。スイッチや教材を介した支援者とのかかわりの中で、当初微弱だった対象者の手の動きは、スイッチに志向した安定したものへと変化した。また、自己選択が問われる課題において、対象者が「決定」の意思を主体的に支援者に示す方法が確立するとともに、意思表出行動の頻度が増加した。対象者の支援者とのやりとりは当初、支援者の働きかけに対象者が応えるという受動的なものが中心だったが、スイッチ操作の安定や「決定」の意思表出方法の確立を土台として、対象者を起点としたやりとりが増加した。以上から、スイッチ操作の向上と、主体的な意思表出の促進の相互関係を踏まえた支援の有効性が示唆された。
  • 大久保 賢一, 高橋 尚美, 野呂 文行
    原稿種別: 本文
    2011 年 48 巻 5 号 p. 383-394
    発行日: 2011/01/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    小学2年生の通常学級における給食準備場面、給食片付け場面、掃除場面で行動上の問題を示していた児童に対して個別的支援を行い、その後、学級全体に対する支援を実施した。支援実施後は、すべての場面において対象児童の行動は改善されたが、学級全体に対する支援を実施した期間のほうが、個別的支援を実施した期間よりも高く安定した効果が得られた。また、学級全体に対する支援を実施した期間においては、対象児童の行動だけではなく、学級の他の児童の行動にも改善がみられた。以上のような結果から、通常学級における行動支援を検討する際には、児童に対する個別的支援よりも学級全体に対する支援を優先して検討することの必要性が示唆された。社会的妥当性に関しては、手続きの効果の面では担任教師から高い評価を得られたが、手続きの実施に関して、部分的に高い負担感が示された。
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