特殊教育学研究
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5 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 西村 章次
    原稿種別: 本文
    1968 年 5 巻 2 号 p. 1-10
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    ろうを伴なった精神薄弱児5名を含む有意味言語を有しない重度精神薄弱児13名を被験者にして、歩行をとりあげて行動を規定する環境の条件を検討した。道具を用いること、道具をつなげないで一定の間隔を置いて並べること、道具の色を組み合わせること、動作指示を与えること、言語指示を与えることの5つを環境の条件とした。次のような結果が得られた。1.行動を規定する条件に一定の傾向が被験者にみられなかった。2.道具を用い、道具は一定の間隔を置いて並べ、色を組み合わせた方が、行動が規定される型の被験者が多かったが、その逆の条件によって行動が規定される型の被験者もいることが認められた。3.動作指示を与えた方が行動が規定される型と、動作指示を与えない方が行動が規定される型の2つの型があることが認められた。また、言語指示を与えた方が行動が規定される型と、言語指示を与えない方が行動が規定される型の2つの型があることが認められた。4.各被験者において、それぞれ行動を規定するために、異なった条件の組み合わせが必要であることがわかった。5.これらの条件と行動との関係を明らかにすることは、把握の困難な重度精神薄弱児の行動特性を明らかにしていく手がかりになることを考察した。本論文をまとめるにあたり御指導いただいた国立秩父学園医務課長高橋彰彦先生に深く感謝致します。
  • 佐藤 泰正, 峰田 信雄
    原稿種別: 本文
    1968 年 5 巻 2 号 p. 11-21
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    [Purpose]Since primary school pupils are not yet so developed as to be able to introspect their own personality characteristics, we usually depend upon their parents' evaluation in order to estimate children's personality. Several studies, however, have proved that blind children's parents have various psychological and or social problems. It is somewhat of doubt, therefore, to accept their parents' evaluation as it is. In this study the parents' evaluation was compared with the class teachers' and the difference between them was investigated.[Method]Using "Diagnostic Test of Infant and Children's Personality" by S. Takagi and R. Sakamoto, the parents' evaluation was compared with the class teachers' of the children. Evaluation items of the test are; 1. self manifestation, 2. nervousness, 3. emotional unstability, 4. self control, 5. dependent tendency 6. regression, 7. aggressive and impulsive tendency, 8. sociability, 9. home adjustment, 10. school adjustment, 11. health. The subjects are 81 blind pupils (44 boys, 37 girls) of primary course of schools for the blind, and 57 seeing pupils (28 boys, 29 girls) of a primary school.[Result]1. Both parents and teachers estimate that in general, blind children are inferior to normal children. in adjustment. Both parents' and teachers' luation showed that no sex difference in total evascore was found in the blind as well as in the normal. 3. Teachers evalute children to be rather more adjustive than parents do. 4. The discrepancy between parents' and teachers' evaluation is wider in the cases of blind children than normal children. 5. Personal difference of evaluation is greater in the case of teachers of schools for the blind than teachers of a common primary school.
  • 中野 善達
    原稿種別: 本文
    1968 年 5 巻 2 号 p. 22-31
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    読話内容に関する手がかりが、読話成績に如何なる影響を及ぼすかを明らかにするため、ろう及び高度難聴児を被験者とした2つの読話実験を行った。実験Iでは刺激をface-to-faceの場面で与え、実験IIでは映画を作成して読話させた。手がかりは読話内容を示した絵を提示することであった。被験者を2群に分け、一方に手がかりを与えて、他方は手がかりなしで読話させ、3ヶ月後、前者と後者の手がかりの有無を逆にして、同じ文章を読話させた。その結果、以下のことが言える。1)読話内容に関する手がかり(絵の提示)がある場合、ない場合より、より良く読話が遂行される。face-to-face場面でP<.001映画でP<.052)読話内容についての手がかりが、読話者の読話明瞭度に対する影響の程度は、読話成績上位者よりも、下位者に対して著しい。3)同一被験者においては、手がかりの有、無に関係なく読話明瞭度の順位は恒常である。両者の間にはrs=0.93というきわめて高い相関が存ずる。4)face-to-face場面での読話と、映画による読話との間に0.699という相間係数が得られた。条件統制の上からも映画による読話検査が妥当性を有すると思料せられる。5)scoringの単位として文節が適当であるらしい。6)本実験の文章の読話明瞭度と中野による無意音節読話明瞭度との間には高い相関関係が認められた。7)文章によって読話の難易度に大きな差が存ずる。文長がこの規定因の一つであることが示唆されがた一義的な結論が下せない。本論文は尾島碩心教授、丸山隆氏と筆者による共同研究に基づくものであり、その一部は以下に発表された。中野善達、尾島碩心、丸山隆:視覚的場の手がかりが読話成績に及ぼす影響について日本応用心理学会27回大会。
  • 松原 達哉, 山岡 春美
    原稿種別: 本文
    1968 年 5 巻 2 号 p. 32-43
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2017/07/28
    ジャーナル フリー
    目的:肢体不自由児の親の養育態度と普通児の親の態度とを比較研究することおよび、親と子の「親の養育態度」についのズレを研究することを目的とした。方法:被験者は、東京都内の肢体不自由児の養護学校2校の小学1年生から中学3年生までの児童・生徒の父親102人、母親124人と普通校2校の同学年の児童・生徒の父親154人、母親162人である。なお、親子のズレの研究には、肢体不自由児の中学1〜2年生15人、普通児の中学1年生30人が対象である。肢体不自由児のうち約87%が脳性まひ児、13%がポリオ児である。両親の養育態度は、(1)消極的拒否(2)積極的拒否(3)厳格(4)期待(5)干渉(6)不安(7)溺愛(8)盲従(9)矛盾(10)不一致の10の型に各10問ずつ合計100問から成る質問紙法である「親子関係診断検査」によって調べた。これらの10の養育態度の型は、パーセンタイルで結果が評価されるようになっている。結果:本研究結果は、つぎのように総括することができる。(1)肢体不自由児の母親の養育態度は、普通児の母親に比較して、「不安」や「溺愛」的傾向がある。(2)肢体不自由児の父親の養育態度は、普通児の父親に比較して、「不安」「溺愛」「盲愛」「干渉」「矛盾」「不一致」的傾向がある。(3)肢体不自由児の母親よりも、父親の養育態度により多くの問題傾向がある。(4)100の質問項目中、肢体不自由児の母親が普通児の母親より望ましい態度を示している項目は、小学生で8項目、中学生で10項目であった。反対に、普通児の母親の方がよい態度を示している項目は、小学生で48項目、中学生で23項目であった。前述と同様中学生になると母親の態度に改善がみられる。(5)発達的にみると、肢体不自由児の年令が上昇するにつれて、問題となる態度が減少している。この傾向は父親よりも母親に顕著である。この原因としては子どもを養護学校に通学させることによって、学校の先生や親同志の感化をうけて、肢体不自由児の正しい知識や将来に対する見透しがでぎてきたためと推察される。(6)親の養育態度とそれについての子どもの見方のズレは、普通児よりも肢体不自由児の方が少ない。しかし、普通児の方が肢体不自由児よりも親の態度をより好意的にみているものが多い。
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