特殊教育学研究
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52 巻, 1 号
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原著
  • 中 知華穂, 吉田 有里, 雲井 未歓, 大関 浩仁, 五十嵐 靖夫, 小池 敏英
    2014 年 52 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/11/19
    ジャーナル フリー
    小学2年における漢字読字・書字困難のリスク要因を検討するため、漢字読字・書字テストおよび基礎スキルテスト(特殊音節テスト、単語連鎖テスト)と言語性短期記憶テストを行った。対象は、小学2年児童3,454名であった。リスク成績を10パーセンタイル以下とし、CHAID分析を行った。漢字読字の重度低成績を有意に高く示した児童は、特殊音節テストと単語連鎖テストがともにリスク成績を示した者や、特殊音節テストと言語性短期記憶テストがともにリスク成績を示した者であり、オッズ比は最大16を示した。漢字読字困難のリスク要因として、特殊音節表記の読み書きスキルやひらがな単語の流暢な読み・検索スキルの不全が指摘された。漢字書字の重度低成績者は、漢字読字がリスク成績を示す者に多く、オッズ比は最大49を示した。以上より、漢字学習困難に対する支援として、小学2年の段階で、リスク要因を早期に評価し、その軽減を図る指導が効果的であることを指摘した。
資料
  • 宮木 秀雄, 木舩 憲幸
    2014 年 52 巻 1 号 p. 13-24
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/11/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、特別支援教育コーディネーターからの支援による学級担任の特別支援教育に対する意識の変容プロセスを明らかにすることであった。公立小学校の学級担任(7名)に対して半構造化面接を行い、逐語記録を修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて分析した。その結果、対象児や学級、保護者に関する問題を認識した学級担任が、コーディネーターに相談し、支援を受けながら行動の調整を繰り返す中で問題が次第に改善し、最終的に特別支援教育に対する意識を変容させていくというプロセスが示された。また、学級担任の特別支援教育に対する意識の変容は、コーディネーターにさらなる支援を期待したり、自ら特別支援教育について学び、指導や対応を工夫したりするといった積極的な行動につながっていくと考えられた。
  • 本間 貴子, 米田 宏樹
    2014 年 52 巻 1 号 p. 25-38
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/11/19
    ジャーナル フリー
    本稿では、1910年代半ばから1930年代の社会適応を重視した時期におけるニューヨーク市公立学校固定式精神遅滞(欠陥)学級のカリキュラムの実態を明らかにした。当学級は、1910年代半ばから1930年代にかけて地域生活を教育目標とするカリキュラムを形成していった。当学級を出た後、地域で生活するために必要不可欠と考えられたのは適切な行動習慣であり、就労する力があることも望ましいとされた。教育実践や卒業後生活調査の中で精神薄弱児の行動が改善し、就労が可能な者がいることも明らかにされた。対象児は、従来より知能指数が高い行動問題のある怠惰児と社会適応が見込まれるIQ 50未満の精神遅滞児に拡大され、知能指数・精神年齢に行動問題を加味した学級編成がなされた。カリキュラムでは職業訓練の強化、性格教育の実施、地域資源を活用した「興味の中心」学習、道具教科としての読みが実施された。1910年代半ば以前からの運動機能訓練等は継続され、社会適応に傾注する中でも個々のニーズに応えるという理念を維持していた。
  • 竹尾 勇太, 伊藤 友彦
    2014 年 52 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/11/19
    ジャーナル フリー
    知的障害児は受動文のような複雑な文の理解に困難を示すことが従来から知られている。しかし、知的障害児の直接受動文と間接受動文の成績を比較した研究はない。そこで本研究では、直接受動文と間接受動文を用いて、知的障害児の言語知識の特徴を明らかにすることを目的とした。対象児は特別支援学校に在籍する知的障害児22名であった。受動文は直接受動文、動詞が自動詞の間接受動文、動詞が他動詞の間接受動文の3種類であった。文中の空欄に格助詞を挿入させる文完成法を用いた。本研究の結果、直接受動文の成績が、動詞が自動詞の間接受動文、動詞が他動詞の間接受動文の成績よりも有意に高かった。現在の言語理論の枠組み(同一深層構造説)に基づくと、直接受動文と間接受動文で統語的な複雑さに違いはないと考えられていることから、間接受動文の成績が低かったことは、間接受動文のもつ被害・迷惑という意味の理解の困難さが影響していることを示唆している。
研究時評
  • 宮内 久絵
    2014 年 52 巻 1 号 p. 47-56
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/11/19
    ジャーナル フリー
    本研究は、インクルーシブ環境下におけるイギリスの視覚障害教育に焦点を絞り、近年の研究動向を明らかにした。過去約10年間に発行された49本の論文は、(1)イギリス国内の視覚障害児の全体的現状に関する研究、(2)指導法や教材教具など教育上の具体的課題に関する研究、(3)専門家養成を含む支援システムに関する研究、(4)通常学校で学ぶ視覚障害児の交友関係などソーシャル・インクルージョンに関する研究、そして(5)イギリスの視覚障害教育に関する歴史研究の5つの群に分類することができた。実践的課題を取り扱ったものが最も多く、研究者の関心は、場の統合だけではなく、教育の質そのものに向かっていることが明らかとなった。また、研究内容は、学校教育の質や支援のあり方だけでなく、社会的経験・活動およびスキルや、学業と社会的経験や活動との相関性にまで及び、いずれの研究も、国内における大学機関、研究所、民間組織が一丸となって進められていた。
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