特殊教育学研究
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53 巻, 2 号
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原著
  • 武田 瑞穂, 熊谷 恵子
    2015 年 53 巻 2 号 p. 77-87
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    自閉症スペクトラム障害(以下、ASD)は社会性とコミュニケーションの障害を主徴とする発達障害である。ASDのある児童とそのきょうだいとの関係は、定型発達児どうしのきょうだい関係とは異なる様相を呈すると思われるが、その特徴を報告した研究は少ない。本稿では、ASDのある児童の行動問題と知的能力の有無がきょうだい関係に及ぼす影響を検討した。研究1では、日本版きょうだい関係質問紙(以下、日本版SRQ)の因子構造と妥当性を検証した。研究2では、日本語版SRQによる小学校低学年のASD児のきょうだい関係と、行動問題や知的障害の有無との関連を検討した。その結果、知的障害のあるASD児では、『温かさ・親密さ』『力関係』の程度が、知的障害のないASD児や定型発達児のきょうだいより低かった。また、ASDのある児童のきょうだい間の『温かさ・親密さ』の度合いが低いほど、『無気力・社会的引きこもり』の程度が強かった。
  • 迫野 詩乃, 伊藤 友彦
    2015 年 53 巻 2 号 p. 89-96
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    読みの障害および読みの獲得と非語の復唱能力との関係性が示唆されている。本研究では、定型発達における逐字読みをする幼児(逐字読み群)は流暢に読める幼児(流暢読み群)よりも、非語の復唱の成績が低いかどうか、誤用の特徴にも違いがみられるのか、を検討することを目的とした。対象は5~6歳の定型発達児34名であった。実験課題として、逐字読みと流暢読みを同定するための音読課題と非語の復唱課題を用いた。本研究の結果、逐字読み群のほうが流暢読み群に比べて、非語の復唱課題における得点が有意に低かった。また、音の誤り方について分析した結果、逐字読み群においては、子音の誤反応数が母音とその他の誤反応数に比べて有意に多いことが明らかになった。これらの結果は、日本語の読みの獲得過程において、逐字読み段階の幼児は流暢に読める幼児に比べて、非語の復唱に困難をもつことを示しており、音韻的側面が未熟であることが示唆された。
実践研究
  • 藤田 昌也, 小川 美香, 長澤 あゆみ, 富岡 郁子
    2015 年 53 巻 2 号 p. 97-105
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    国際生活機能分類(ICF)は、心身機能、身体構造、活動・参加からなる生活機能と個人因子、環境因子との相互作用から人の心身の健康を考える統一的で標準的な言語と概念的枠組みである。近年、臨床場面や教育場面におけるICFの活用が推奨されているが、その項目数の多さと評価の煩雑さから臨床ツールとして用いる難しさが指摘されている。本研究では、重度知的障害のある人を対象とした「ICFコアセット」を作成し、その実用性を検討した。本研究の結果、心身機能45項目、身体構造15項目、活動参加43項目、環境因子11項目の計114項目がICFコアセットとして選出された。また、モデルケース評価後の職員に対する調査から、利用者の全体像の評価や多職種での情報の共有に役立つという回答が得られ、ICFコアセットの実用性が示唆された。
研究時評
  • 猪狩 恵美子
    2015 年 53 巻 2 号 p. 107-115
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    本稿は、慢性疾患の子どもの8割以上が在籍している通常学級における病気療養児の教育保障をすすめるために、特別支援教育の展開以降の現状に関連する研究動向を明らかにすることを目的としている。在宅医療の推進により、入院期間の短縮化が急速に進む今日、通常学級における理解と支援の立ち後れは早急に解決すべき課題である。しかし、特別支援教育の中でも、通常学級における病気療養児の学校生活にはさまざまな理解不足や学習困難が生じている。そのため、さまざまな教育困難と子どもの健康問題の多様化が生じている通常学級の特性をふまえ、(1)入院中の教育と通常学級における特別な配慮、(2)不登校傾向を示す心身症等の行動障害への特別支援学校(病弱)での対応、(3)病気による長期欠席への理解と対策の現状、(4)通常学級における支援の要となる学校保健との連携、という4つの視点から検討した。
  • 川住 隆一
    2015 年 53 巻 2 号 p. 117-126
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/15
    ジャーナル フリー
    本稿では、2000年から2012年までに発表された訪問教育に関する研究論文を取り上げ、研究動向を把握するとともに今後の研究課題を明らかにすることを目的とした。動向の把握に当たっては、以下の5つの観点から研究内容を概観した。すなわち、(1)訪問教育実施状況等の把握、(2)重度・重複障害のある児童生徒の指導方法、(3)家族支援、(4)海外における訪問教育制度、(5)訪問教育制度の新たな展開である。本稿においてはさらに、今後の研究課題として、3つの観点からの指摘を行った。第1は、訪問教育対象児と特別支援学校通学籍の子どもや近隣通常学校の子どもたちとの直接的交流や、遠隔教育システムに基づく共同学習に関わる課題、第2は、最重度脳機能障害のため活動内容に加え活動の時間と空間も大きく制約されている子どもの指導と評価に関する課題、第3に、大学等の研究者との連携に関わる課題である。
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