特殊教育学研究
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58 巻, 3 号
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資料
  • 野澤 和恵, 藤野 博
    原稿種別: 資料
    2020 年 58 巻 3 号 p. 143-150
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2021/05/25
    ジャーナル フリー

    本研究は通級指導教室に通う発達に課題のある小学生を対象とし、明示的および潜在的な心の理論について、自閉スペクトラム症(ASD)の傾向のある児童とそうでない児童を比較し検討した。研究に参加した児童は、公立の1小学校の情緒障害通級指導に通級する小学生19名であった。明示的誤信念課題と潜在的誤信念課題を実施した。その結果、17名の児童が明示的誤信念課題を通過した。潜在的誤信念課題においては、ASD傾向児のほうが非ASD傾向児よりも不適切な箇所を長く見る傾向があった。しかし統計的な有意差はみられなかった。また、行為者の顔を見ない傾向があった。これらの結果より、通級指導教室に通う発達に課題のある児童は、Senju et al.(2009)と同様に、構造化された場面で言語を媒介として明示的誤信念課題に通過することができても、自発的には相手の心の状態を読み取らないことが多く、特にASD傾向のある児童ではその傾向がみられた。

  • 五十嵐 一徳, 宮木 秀雄
    原稿種別: 資料
    2020 年 58 巻 3 号 p. 151-163
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2021/05/25
    ジャーナル フリー

    本研究では、教員に対する質問紙調査を通して、①特別支援学校(小学部、中学部、高等部)に在籍する児童生徒の自傷行動の有無と表出言語および受容言語との関係性、②生活年齢群と自傷行動が果たす機能との関係性、③特別支援学校で行われている自傷行動に対する支援・指導、について検討することを目的とした。その結果、表出言語では「一語発話」、受容言語では非音声言語の指示理解において自傷行動の有無により有意な差がみられた。4つの生活年齢群において、「逃避」を代表とする自傷行動は期待値よりも有意に多かった。 自傷行動への対応・支援は「危険回避」が多く、「機能を基にした対応」は相対的に少ない現状であることが明らかとなった。今後、「逃避」機能に対応するコミュニケーション支援を早期から実施していく必要があることが示唆された。

  • 青木 真純, 佐々木 銀河, 中島 範子, 岡崎 慎治, 竹田 一則
    原稿種別: 資料
    2020 年 58 巻 3 号 p. 165-175
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2021/05/25
    ジャーナル フリー

    ASD、ADHDのある大学生に対してDN-CAS認知評価システムを年齢外適用し、知能のPASSモデルに基づく神経心理学的な認知特性ならびに「プランニング」の下位検査遂行中の使用方略の特徴を明らかとすることを目的とした。その結果、ADHD群は「注意」の得点が定型発達学生(TD)群と比べて低く、ADHD群の中核症状である注意制御の困難さを反映したものと考えられた。また、使用方略の特徴について、ADHD群、ASD群ともに「プランニング」の標準得点はTD群との差がみられなかったが、ADHD群では報告方略数が少なく、かつ方略得点が低いことから、方略を意識化して選択し、使用するようなセルフモニタリングの弱さが推察された。また、ASD群では、方略数には差がみられなかったものの、方略得点が低かったことから、TD群の多くが使用する方略とは異なる方略を使用した学生が多かったことを示すものと推察された。

実践研究
  • 荻野 昌秀
    原稿種別: 実践研究
    2020 年 58 巻 3 号 p. 177-186
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2021/05/25
    ジャーナル フリー

    近年、特別な支援を要する児への対応が求められているが、現場で活用できるリソースには限界があり、コンサルテーションのニーズは高まってきている。本研究では、保育所における行動コンサルテーションの効果を明らかにすることを目的とした。また、コンサルティ自身が機能的アセスメントを実施できるようになるためのコンサルテーションのあり方についても考察した。クライエントは4歳児クラス(特別な支援を要する幼児3名を含む)、コンサルティは担任保育士2名であった。対象クラスは20名であり、一部の児の離席、退室や攻撃行動、およびクラス全体の頻繁な私語がみられていた。7回のコンサルテーションにより、適応行動への注目や代替行動の強化など、児の行動の機能に応じた対応が可能となり、対象児の離席、退室や攻撃行動、クラス全体の私語が減少した。今後は保育士自身が機能的アセスメントを行うことが望まれる。

  • 西田 裕明, 山本 真也, 井澤 信三
    原稿種別: 実践研究
    2020 年 58 巻 3 号 p. 187-199
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2021/05/25
    ジャーナル フリー

    本研究では、知的能力障害を併せもつ ASDの生徒に対し、「玄関・ベランダの掃き掃除を一人で行うことができる」という行動連鎖の獲得・般化を目的として、アニメーションセルフモデリング(以下、ASM)を考案し、掃除の手本の観察とASMの視聴で比較検討を行った。対象生徒は、課題分析とアセスメントを通じて「四隅を掃く」「ごみを残さず掃く」などに課題があると推定された。それらの課題に対応した工夫をASM教材の中に取り入れ、映像を製作した。指導は、場面間多層ベースラインデザインを用い、対象生徒宅の玄関とベランダの環境をX大学附属研究機関にそれぞれ再現した。その結果、掃除の手本を直接観察する手続きより、ASMを視聴する手続きのほうが掃除スキルにおける行動連鎖の獲得に効果がみられた。また、家庭場面においても掃除スキルの般化がみられたことから、ASMは本研究の対象生徒に対して行動連鎖の獲得と般化の指導に有効であると示唆された。

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