ASD(自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害)への支援を充実させるためには適切なアセスメントが欠かせない。一方,個別知能検査K-ABC(Kaufman Assessment Battery for Children)はKABC-Ⅱとなり,Luriaの脳機能モデルに加えCHC理論に基づく解釈が可能となる等,多くの改訂が行われた。そこで,調査対象者に自閉スペクトラムをスクリーニングするための自己記入式質問紙AQ-J-16 調査を実施し,①カットオフポイント以上の者3 名, ②カットオフポイント未満の者4 名に分け,さらに③既にASDと診断を受けている者1 名を加えて,3 群に対してKABC-Ⅱを実施し,その得点を分析することによって,KABC-ⅡによるASDのアセスメントの有効性を検討する こととした。その結果,(1)群別の下位尺度得点の特定の優位・劣位傾向や,得点間の特徴的なディスクレパンシーは確認できなかった。(2)調査対象者の認知総合得点にはあまり差がなかった一方,習得総合得点には大きな差が認められ,個々の認知能力に応じた周囲からの働きかけによって潜在的な能力の発揮や知識の獲得には大きな差が出ることが示唆された。今後の課題として,クラスター分析等の新しい分析方法の導入や認知機能間の補完や関連を明らかにしていく必要性を指摘した。
抄録全体を表示