糖尿病
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22 巻, 10 号
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  • 木畑 正義, 宮原 潔, 正路 浩二郎, 佐野 清, 的場 邦和, 渕本 武文, 鴨井 正樹
    1979 年 22 巻 10 号 p. 1043-1050
    発行日: 1979/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    目的: 糖尿病における高比重リポ蛋白コレステロール (HDL-あるいはα-cholesterol) を対照と比較し, 更に糖尿病の病態との関連を追究した。
    方法: 寒天電気泳動で分離した各リポ蛋白分画から抽出したα及びβ-cholesterolをガス液体クロマトグラフィー (GLC) で測定した.対象は, 糖尿病199例, 対照103例である。
    結果: α-cholesterol (以下α-choとす) は, 対照55.2±16.1 (M±SD) mg/dl, 糖尿病45.9±15.5mg/dlであり, α-cho/β-choはそれぞれ0.46±0.20, 0.35±0.16で低下の傾向を認めた.この低下は各年令区分でみられた.70mg/dl以上を高α-cho血症とすると, その出現頻度は明らかに低率である.高脂血症を合併するコントロール不良糖尿病で低下傾向は強いが, 特に高トリグリセライド血症を伴うと, 低下が著しい.食事療法群, インスリン治療群でのコントロール不良例に低下がみられる.網膜症の進展例では, 低下している.又, 腎症 (蛋白尿) を有すると低下する.腎症にScott II度以上の網膜症を合併すると低下は著明となる.
    結論: 糖尿病では, α-cho及びα-cho/β-choは低下する.その要因として, コントロール不良, 肥満, 高トリグリセライド血症及び合併する腎症が考えられる.その結果, いわゆる粥状動脈硬化性疾患の発症, 進展を促す.細小血管障害の悪化例にも低下が著しいが, その病態の進行に寄与するか否かはなお明らかでなく, 今後に残された課題である.
  • 第XIII因子とAntithrombin IIIならびにFibrinogenとの関連について
    呉 光雄, 磯貝 庄, 浦山 功
    1979 年 22 巻 10 号 p. 1051-1055
    発行日: 1979/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病性網膜症 (網膜症) のうち, 増殖型では微小血管内凝固がその進展に関与している報告がある.私たちは, この凝固機作に飴ctorXIIIも関係していると考えられた成績を得, すでに報告した.Thrombinの作用はfactor XIIIのみならずantithrombin III (ATIII) やfibrinogen (Fbg) にもおよぶので, 今回はfactor XIIIとATIIIならびにFbgとの関連を調べ, 網膜症の進展におけるfactorXIIIの役割を明らかにせんとした。
    対象は網膜症をともなわない糖尿病5例を対照とし, Scott Ia, II, III, IV~Vむの各期よりatrandomに, 同様に5例を選んだ.これらの症例につき, 4週間隔で4回にわたり血漿factorXIII, ATIII, Fbgなどの濃度を測定し, 対照のそれらと比較検討した.さらに, factor XIIIとATIIIならびにFbgとの相関々係についても調べた。その結果, 初期増殖型のScott IIIではFbgは高値, factor XIIIは高値または低値を示すことがあり, ATIIIとの間には正の相関 (r=0.78) を認めた.中期増殖型のScott IV~Vbでは, 同様にFbgは高値であったがfactor XIIIは低値であり, かつ, ATIIIも低値を示した.
    このようなfibrinocagulopathyはchronic Iow grade disseminated intravascular coagulationに近似しているが, factor XIIIは, Scott IIIを示した糖尿病ではときに, ScottIV~Vbではほとんど常に, 活性化され, 消費されていると推察された.
  • 栗原 義夫, 中山 秀隆, 佐々木 嵩, 青木 伸, 織田 一昭, 佐藤 光男, 門田 悟, 黒田 義彦, 中川 昌一, 秋山 三郎, 奥山 ...
    1979 年 22 巻 10 号 p. 1057-1066
    発行日: 1979/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    インスリノーマの正確な術前部位診断は過度の手術侵襲を避ける上で重要である.現在インスリノーマの術前部位診断法として広く利用されているのは膵血管造影法であるが, 本法は腫瘍の大きさや血管の多寡により差がみられ, その確診率は50~60%とされ必ずしも満足すぺきものではない.
    今回, 我々は繰り返し施行した膵血管造影で腫瘍像が得られず, 各種の有効と報告されている薬物療法にも全く反応しなかったインスリノーマにおいて, 経皮経肝胆のう造影の技術を応用してカテーテルを膵周囲の静脈に挿入して各部位から採血し, その血中IRIおよびCPRを各々測定したところ膵頭部領域からの血中にIRI540μU/ml, CPR18.Ong/mlと明らかな高値を認め, 手術にて同部位に1xlxO.5cmの小さな埋没した腫瘤を発見し別出した.術後, 低血糖症状は全く消失し, 空腹時血糖値も正常化した.
    術前部位診断のできないインスリノーマでは術中に腫瘍が発見できない場合, しばしばblinddistalpartialpancTeatectomyが行われているが, その成功率は25~55%と高くなく再手術を必要とすることが多い.膵血管造影法にて部位診断のできないインスリノーマでは本カテテリゼーションにより部位診断を試みるべきと思われる.
  • Flying Spot Scannerによる螢光色素漏出動態の解析
    大森 成二
    1979 年 22 巻 10 号 p. 1067-1074
    発行日: 1979/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病性網膜症における螢光色素静注後の漏出現象を, コンピューターと連結したflying spotscannerのシステムを用いて動的に把握し, その臨床的意義を検討した.
    対象としてはScott IIIa, IIIb, およびIIcの糖尿病性網膜症を有する49例の一次性糖尿病患者を用い, fluorescein静注後300秒間にわたり連続的に螢光眼底撮影を行った.得られた螢光眼底フィルムを本システムにinputし, 漏出面積の自動計測を行うとともに, 漏出面積の経時的観察より漏出曲線を求めた.さらに患者の臨床検査所見13項目と漏出現象の成績との相関分析および漏出曲線の経年観察を行い, 以下の結果を得た.
    1) 螢光眼底写真の背景螢光および血管螢光を除去しうるプログラムを作成してコンピューターに組み込むことにより, 糖尿病性網膜症における漏出現象を客観的かつ定量的に把握することが可能となった。
    2) 螢光色素漏出の程度は罹病期間, 空腹時血糖と有意の正の相関, insulinogenic indexとは有意の負の相関を示し, これら諸因子が糖尿病性網膜症の進展に関与していることが示唆された.
    3) 連続撮影された螢光眼底写真の動的解析により漏出現象が網膜症の進行性および悪性化と関連することが認められた.
    以上, コンピューターと連結したflying spot scannerのシステムは糖尿病性網膜症における螢光色素漏出現象の解析に極めて有用であり, かつ漏出現象の動的解析が網膜症の予後予測に有用であることが示唆された.
  • 真山 享, 後藤 由夫, 阿部 祐五
    1979 年 22 巻 10 号 p. 1075-1082
    発行日: 1979/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病者におけるヘモグロビンのminorc0mponent (以下HbA1) の意義を知るために血糖コントロールとの関係, また50gブドウ糖負荷試験 (以下50gOGTT) 時の血糖値, 血清インスリン値 (以下IRI) との関係についてFastHbTestSystemを用いて検討した.
    糖尿病者25名のHbA1をTrivelliらの方法とFastHbTestSystemで二重検定した結果, 相関係数 (以下r) =0.90 (P<0.001) で正の相関を認めた.
    健常者20名のHbA1は8.4土1.1%(M±SD), 糖尿病者103名では13.1±3.4%となり有意の差を認めた (P<0.001).
    70名の成人型糖尿病者についてHbA1と採血当日の早朝空腹時血糖値 (以下FBS) の間にはr=0.57 (P<0.001) で正の相関を認めた.HbA1と1ヵ月前のFBSの間にはr=0.66 (P<0.001), 3ヵ月前のFBSの間にはr=0.60 (P<0.001) でいずれも正の相関を認めた.HbA1と5ヵ月前のFBSの間にもr=0。49 (P<0.02) で正の相関を認めたが相関度は悪い.
    31名の未治療患者においてHbA1と血糖日内変動の総漁の間にr=0.86 (P<0.001) で正の相関を認めた.
    33名の糖尿病者に施行した50gOGTTにおいて, 5時点における血糖値和とHbA1の間にはr=0.87 (P<0.001), 最高血糖値との間にはr;0.88 (P<0.001) で正の相関を認めた.HbA1と5時点のIRI和との間にはr=-0.59 (Pく0.01) で負の相関が認められ, IRI前値ともr=-0.36 (P<0.05) でやはり負の相関がみられた.
    以上の結果からHbA1は糖尿病者の血糖コントロール及び耐糖能異常の指標として有用であることが示唆された.
  • 中井 利昭, 新井 仁, 山田 律爾
    1979 年 22 巻 10 号 p. 1083-1090
    発行日: 1979/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者では細小血管障害や血栓症, 動脈硬化などさまざまな血管障害がおこり易いが, これには血小板, 線溶系を含めた広義の凝固異常, とくに血栓形成が重要な役割を果たしていると推定される.この血栓形成に重要な血小板機能について血小板凝集能や粘着能が亢進しているという報告がみられるが, なお一致を得ていない.今回血小板放出反応の際に循環血中に放出される血小板特異性蛋白であるβ-の測定を施行した.まず基礎的検討として感度, 精度ともすぐれ, 回収率も良好であることを示したが, 採血条件が厳格でなけれぽならないことを明らかにした.健常成人のβ-レベルは24±12ng/ml (n=36) であった.網膜症のみを合併した糖尿病患者ではそのβ-thromboglobulinレベルは56.2±33.5ng/ml (n=18) であり, 健常成人に比ぺ有意に高値を示した.網膜症など血管障害を有さない糖尿病患者では, そのβ-thromboglobulinレベルは30.5土15.7ng/ml (n=23) であり, 健常成人と有意差はみられなかった。糖尿病患者で新鮮な脳血栓症例ではβ-thromboglobulin値の非常な高値を示したが, 陳旧性の脳血栓症例では高値を示さなかった.これらβ-thromboglobulinの高値が血小板自体の異常によるものか, 糖尿病性血管障害による二次的なものかはなお今後の検索が必要であるが, いずれにしてもβ-thromboglobulin測定は糖尿病性血管障害の指標として意義のある測定といえよう.
  • 三輪 梅夫, 小野江 為久, 坂戸 俊一, 森 清男, 長谷田 祐一, 吉野 公明, 佐藤 隆, 山本 英樹, 大家 他喜雄, 木下 弥栄
    1979 年 22 巻 10 号 p. 1091-1099
    発行日: 1979/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病の合併症の中で, 自律神経障害は多彩な臨床像を伴って発現するが, 近年, 心臓血管系の神経調節機構の異常についても多くの研究が報告されている.心臓支配自律神経の著しい調節失調は, まれに重篤な心呼吸停止を惹き起こすことが知られている.
    著者らは, 14年の罹病歴を有する31歳女子の若年型糖尿病患者で, 自律神経障害が直接主因と考えられる心呼吸停止発作を6回にわたり繰り返し観察したので報告した.
    本例の心呼吸停止発作の誘因としては, diazepam, インスリンなどが考えられ, 基本に存在する自律神経障害を支持する証拠として次の事実があげられた.
    すなわち, 本例では心拍のR-R間隔が深呼吸, Valsalva手技, 立位転換に際しても全く不変で, propranolol, 硫酸atropineなどの薬物にきわめて軽微な反応しか示さなかった.立位直後の血圧下降は, 起立性低血圧による失神発作の原因と考えられたが, その際著明な心拍出量の低下を認めた.
    そのほか, 消化管に関する運動および反射異常, 神経因性膀胱など多彩な自律神経障害が認められた.また, 進行増悪型の網膜症および腎症を合併している点から, 予後不良と推測される.本例は糖尿病性自律神経障害に基づく心呼吸停止の本邦最初の報告とみなされる。
  • 武田 偉, 徳盛 豊, 安東 良博, 真柴 裕人, 市原 冏一, 伊藤 本, 宮田 誠, 都田 潤一郎
    1979 年 22 巻 10 号 p. 1101-1105
    発行日: 1979/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    若年糖尿病者における手の変化は従来あまり注目されていなかったが, 1974年にRosenbloomとFrias, 1976年にはBenedettiがそれぞれ長期罹病若年糖尿病者で発育障害と指節間関節の障害を指摘し, 特に後者はjuvenilediabeticcheiroarthropathyとして報告した.
    私たちは長期罹病小児糖尿病者で指節間関節の著しい屈曲拘縮による手の可動制限を認める症例を経験した.
    患者は22歳女性で, 6歳の時に糖尿病昏睡にて糖尿病を発見されて以後17年間インスリン治療をうけていた.しかし血糖のコントロールは不良であり, 末梢神経障害, 網膜症そして腎症を認めた.関節障害は指節間関節に限局されて炎症所見はなく, 足やその他の関節には異常を認めなかった.Dupuytren拘縮は認めなかった.身長は141cmと非家族性の低身長で肝は1横指触知した.手のX線写真では骨に軽度の萎縮性変化を認める以外には変化を認めなかった.24歳で糖尿病性腎症による尿毒症で死亡した.
  • 町田 周治, 河西 浩一, 武田 和久, 三宅 周, 泉 正樹, 仁科 喜章, 柳生 史登, 久保田 正幸, 大藤 真
    1979 年 22 巻 10 号 p. 1107-1114
    発行日: 1979/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    血清の小腸性アルカリフォスファターゼ (ALP) は血液型O, Bの分泌型に高頻度に見出され, 脂肪の経口負荷によりその活性が増強する.その出現頻度は肝硬変で最も高く, 糖尿病でも健常例に比し有意に高いことが明らかにされている.しかし, 小腸性ALPの活性増加が糖尿病自体によるものか, 随伴する肝障害によるものかは明らかでない.今回われわれは小腸性ALPの著明な活性増加を認めた若年性糖尿病の1例を経験し, 上記の点につき詳細な検討を加えた.症例は21才の男性で血液型はB型の分泌型.当初, 空腹時血糖は240mg/dlで尿糖強陽性, 尿ケトン体陽性, 血清ALPは17.2B-Luと著増していたが, GOTは88u, GPTは100uと軽度の上昇に留まった.血清ALPは寒天ゲル電気泳動でβ位の移動度を示す小腸性ALPが主で, 5mML-フェェルアラニンにより50%以上阻害され, 脂肪の経口負荷で活性が著明に増加した.インスリン治療の開始とともにALP活性は低下したが, 中止により再び増加し, 両者の間に密接な関連性のあることが示された.なお, ALP活性と血糖値およびGOT, GPT活性の変動との問には明らかな関係はみられず, 肝には腹腔鏡検査と肝生検により門脈域の軽度の線維化がみられたのみで, 肝硬変あるいは著明な肝実質障害の存在は否定された.以上のごとく, 小腸性ALPの活性増加とインスリンの直接的な関連性を示唆する興味ある症例として報告した.
  • 冨長 将人, 西谷 昭夫, 浜崎 尚文, 徳盛 豊, 白石 正晴, 池田 匡, 武田 偉, 安東 良博, 真柴 裕人
    1979 年 22 巻 10 号 p. 1115-1120
    発行日: 1979/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    insulin lipoatrophyの成因は明らかでないが, 最近, 精製インスリン製剤であるMonocomponent Insulin治療に変更することによりlipoatrophyが改善するという報告が相次いでなされている。本症例はMonocomponent Insulin治療で著明なインスリン抗体の産生をみたが, その後, insulin lipoatrophyをも認めるようになった.血中インスリン抗体およびa-component抗体を経時的に測定し, lipoatrophyの消長との関係をみると, インスリン抗体価が最大のとき, わずかな皮膚の陥凹を認めた.その後インスリン抗体価は漸次低下傾向を示したが, Iipoatrophyはむしろ著明になってきた.また, lipoatrophyが著明となってきた頃に血中にa-component抗体の産生が認められた.本症例はMonocomponent Insulin治療でもinsulin lipoatrophyが生じ得るという事実を実証し, lipoatrophyの成因としてa-component等の爽雑物が関与している可能性を示唆した症例といえる.
  • 久保田 正幸, 河西 浩一, 柳生 史登, 仁科 喜章, 町田 周治, 大藤 真
    1979 年 22 巻 10 号 p. 1121-1126
    発行日: 1979/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    私たちはdiabetic triopathyを合併し, 胃レ線像で十二指腸ループに及ぶ巨大十二指腸を認めた若年発症糖尿病の1例を6年有余経過観察してきた.本症例では, 便秘, 夜間下痢, 頻回の嘔吐発作など多彩な糖尿病性胃腸症状を認めた.神経学的には四肢腱反射の減弱, 振動覚の低下がみられ, 施行した神経伝導速度とECG R-R interval requisionの結果などより, 本症例に糖尿病性末梢神経症状と自律神経障害の合併を認めた.胃レ線上, まず胃蠕動運動の低下, 胃内容物の停滞, ついで巨大十二指腸球部がみられ, さらに1年半後には十二指腸ループに及ぶ巨大十二指腸がみられた.糖尿病性胃腸症状の成因は現在なお不明であるが, その主成因は糖尿病性神経症や胃壁内神経叢の変性とされており, ストレスなどが発症誘因とされている。本症例の経過からみて.胃蠕動運動の低下が胃内容物の停滞をひき起こし, 頻回の嘔吐を起こしたものであると考えられる.塩化アンベノニウム1日10mgの投与により, 自覚症状の改善には効果があったが, 胃レ線上の改善はみられなかった.巨大十二指腸を呈した報告は今までになく, 興味ある症例と考え報告するとともにさらにひき続き経過観察を行っていく予定である.
  • 松田 文子, 武田 和司, 坂本 美一, 葛谷 健, 吉田 尚
    1979 年 22 巻 10 号 p. 1127-1132
    発行日: 1979/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    アルコール大量飲用と肺炎により乳酸アシドーシスを来したが救命し得たインスリン依存性不安定型糖尿病の1例を報告する.症例は41歳女性, 5年前にケトアシドーシス昏睡で糖尿病と診断され以来インスリン注射を継続していた.旅行中大量のウイスキーをのみ嘔吐につづき, せん妄状態となって緊急入院した.入院時血糖340mg/dl, PaO2 56.8, PaCO2 14.2mmHg, Base Excess -21.9 mEq/l, pH7.182, 尿ケトン陰性であった.全肺野に湿性ラ音, 胸X-Pで広範な肺炎像を認めた.血中乳酸5.27mM, 乳酸/ピルビン酸比42.6と上昇, 乳酸アシドーシスと診断した.インスリン, NaHCO3, トリスバッファ, 抗生物質, ステロイドの投与とともに持続性陽性呼吸で呼吸を管理した.意識障害はその後も進行し血液pH, 血液ガスの改善にもかかわらず昏睡に進んだ.しかし大量アルカリ剤と呼吸管理により4日後肺含気量が増すとともに意識障害は軽快した.昏睡進行とともに1全身の出血傾向, 心不全が進行しLDH, 素窒素, クレアチニンが上昇したが, 約3週間後には改善した.患者はbiguanide剤を服用していなかった.急性期経過後, 肝腎機能はほぼ正常となったが糖尿病のコントロールは困難で, 不安定型糖尿病像を示した.血中CPR反応, 尿中CPRはともに著減していた.糖尿病に乳酸アシドーシスを生じるのは主としてbiguanide剤服用によるが, 本例はアルコール飲用による肝NADの低下, 肺炎による低酸素血症などが原因となって乳酸アシドーシスを来したと思われる.
  • 1979 年 22 巻 10 号 p. 1133-1139
    発行日: 1979/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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