糖尿病性網膜症 (網膜症) のうち, 増殖型では微小血管内凝固がその進展に関与している報告がある.私たちは, この凝固機作に飴ctorXIIIも関係していると考えられた成績を得, すでに報告した.Thrombinの作用はfactor XIIIのみならずantithrombin III (ATIII) やfibrinogen (Fbg) にもおよぶので, 今回はfactor XIIIとATIIIならびにFbgとの関連を調べ, 網膜症の進展におけるfactorXIIIの役割を明らかにせんとした。
対象は網膜症をともなわない糖尿病5例を対照とし, Scott Ia, II, III, IV~Vむの各期よりatrandomに, 同様に5例を選んだ.これらの症例につき, 4週間隔で4回にわたり血漿factorXIII, ATIII, Fbgなどの濃度を測定し, 対照のそれらと比較検討した.さらに, factor XIIIとATIIIならびにFbgとの相関々係についても調べた。その結果, 初期増殖型のScott IIIではFbgは高値, factor XIIIは高値または低値を示すことがあり, ATIIIとの間には正の相関 (r=0.78) を認めた.中期増殖型のScott IV~V
bでは, 同様にFbgは高値であったがfactor XIIIは低値であり, かつ, ATIIIも低値を示した.
このようなfibrinocagulopathyはchronic Iow grade disseminated intravascular coagulationに近似しているが, factor XIIIは, Scott IIIを示した糖尿病ではときに, ScottIV~V
bではほとんど常に, 活性化され, 消費されていると推察された.
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