糖尿病
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22 巻, 4 号
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  • 培養ヒト皮膚線維芽細胞を用いた検討
    井藤 英喜
    1979 年 22 巻 4 号 p. 517-526
    発行日: 1979/04/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    培養系に維持したヒト皮膚線維芽細胞を用い, 老化に伴うインスリン応答性およびインスリン結合部位の変化の有無につき検討を加えた. 皮膚片提供者の年齢は1歳から82歳に分布し, 1歳から32歳の4例 (平均年齢19歳) より得た細胞を若年群, 68歳から82歳の5例 (平均年齢75歳) より得た細胞を老年群とした. 実験には原則として, インスリン応答性が単層合流期の細胞に比し高い増殖期の細胞を用い, 以下に示すような結果を得た.
    1) 老年者より得た細胞における, インスリンによるグルコース摂取量およびグルコース酸化の増加量は, 老年者より得た細胞のそれに比し有意に低値であった.
    2) 最大特異的125I-インスリン結合量は老年者より得た細胞では, 若年者より得た細胞に比し有意に低値であった.
    3) 125I-インスリンの細胞への結合におよぼすインスリン, 温度, 時間およびpHの影響については両群の細胞間に差異を認めなかった。
    以上の結果から老化に伴い細胞のインスリン応答性は低下し, その低下の機序の一つとして老化に伴うインスリン結合部位の数の減少が関与すると結論した.
  • 北沢 幸夫, 内田 哲也, 後藤 由夫
    1979 年 22 巻 4 号 p. 527-533
    発行日: 1979/04/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    日本人の血糖値が上昇しているか否かを検討する目的で社会保険第一検査センターの成人病検診に含まれる空腹時血糖値 (FBS) の年次推移を調査した.
    同センターでは1964年以来Hoffman法で静脈全血のFBSを測定, 1969年以後これをコンピューターに記憶させているので, 平均値, 標準偏差, 度数分布曲線を男女別, 年齢階層別に求めた. 1971年~1973年は人手不足で透析膜の取り替えを怠ったため測定値の低下を招いたので, この期間は除外した. 1969年~1970年を前期, 1974年~1977年を後期とした
    。年齢階層別に男性のFBSの平均値と標準偏差をみると20代では増加せず30代では後期は次第に増加し, 1977年は1969年より3.7~3.9mg/dl高い. 女性でも20代は増加せず, 30代, 40代, 50代ではそれぞれ1.0mg/dl 2.6mg/dl 2.4mg/dl高い. 後期におけるFBS 110mg/dl以上の頻度は前期の2倍である. 又受診者の多い男性について年齢階層別にFBSの度数分布曲線を比較した。各年代とも正規分布曲線で20代では前期と後期の曲線はかさなるが, 30代以上の後期の曲線は高い血糖の方へ全体にずれ, 年代がすすむにつれ, ずれが大きい.
    FBSの平均値の増加は高血糖の増加とFBS自身全体の高騰に基づくものである。これは食生活の変化および経済状態の急速な成長によるものと思われる。
  • 稲田 満夫, 西川 光重, 井村 裕夫, 蔵田 駿一郎, 大石 まり子
    1979 年 22 巻 4 号 p. 535-542
    発行日: 1979/04/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    Overt diabeyesを合併したバセドウ病患者を臨床的に検討した. 外来通院したバセドウ病患者270例中, Overt diabetesを合併したものは, 7例 (2.6%) であった.
    これら7症例の年齢は, 45歳以上の年長者に多い傾向を示し, 全例女性であった.4例に, 糖尿病の遺伝歴がみられた. また, 大部分が, インスリン依存性糖尿病であった. 血中抗甲状腺抗体の出現頻度は高く, とくに, マイクロゾーム試験が, 高抗体価であった. 次に, 3例でバセドウ病の治療前に行われた甲状腺生検の病理組織学的所見で, リンパ球浸潤と炉胞上皮の変性像を示す橋本病の像と, バセドウ病に特徴的な増殖像を示す部分が共存する, いわゆる, Hashitoxicosisであった. 更に, 糖尿病性網膜症の合併は, 検査した6例で, いずれもみられず, また, 蛋白尿も, 全例でみとあられなかった。バセドウ病と糖尿病の発症時期についてみるに, 2症例で, バセドウ病の治療経過中に, 糖尿病が発症した。とくに, 1症例では, Hashitoxicosisの経過中に, 約10ヵ月間で, 50g OGTTにおける血糖曲線は, 著明な糖尿病型を呈し, IRI反応も, ほぼ正常から無反応へ変化し, 重症糖尿病へ急激に移行した. 本症例は, 糖尿病の遺伝歴を有し, 甲状腺ホルモンの過剰が誘因となった, Metathyroid diabetesの臨床例とも考えられるが, その糖尿病の成因に, 甲状腺ホルモンの催糖尿病作用以外の因子の関与も, 否定できなかった。
  • 呉 光雄, 磯貝 庄, 浦山 功
    1979 年 22 巻 4 号 p. 543-549
    発行日: 1979/04/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病性微小血管障害においては, 血液凝固第I, V, VII, 粗因子などが血中に増量していることが知られている. しかし, 第XIII因子 (factor XIII) についての報告はみられない. 活性化されたfactor XIIIは, すでに, 血管障害をおこす可能性を示唆した実験的研究の報告がある. 私たちは糖尿病性網膜症 (DR) とfactor XIIIの血漿濃度との関連の有無を明らかにすることを目的とした. 対象はDR35例, 網膜症を伴わない糖尿病 (D) 23例, 健常者 (ND) 62例である. factor XIIIは, 早朝空腹時に採血し, その値を実量的に表わせる螢光スポット法により測定し, 35~64歳を1群, 65~80歳を丑群とし, 検討した. その結果, 1群のDはNDに比較しやや高値を示し, I, II群ともDRの標準偏差値は大きい傾向にあり, Scott II以上の症例でfactor XIIIが高値であったものが多かった. さらに, DRにおけるfactor XIIIは早朝空腹時血糖とは相関しなかったが, 過去の血糖のコントロールがpoorであったものでは有意に高かった. また, 糖尿病状態では, 同一症例の経時的観察で, 早朝空腹時血糖の偏差率が大きい場合, factor XIIIのそれも大きく (r=+0.725), 時により高値または低値を示すことを知った.
    以上より, 糖尿病におけるfactor XIIIの血漿濃度の変化は過去の血糖のコントロール状況, 早朝空腹時血糖の変動ならびにDRの進展と関係が深いと考えられた.
  • 七里 元亮, 河盛 隆造, 鮴谷 佳和, 村田 貞史, 菊池 幹雄, 山崎 義光, 森島 豊彦, 野村 誠, 東堂 龍平, 清水 靖久, 繁 ...
    1979 年 22 巻 4 号 p. 551-558
    発行日: 1979/04/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    血糖連続測定装置, インスリン注入率決定のためのマイクロコンピュータ, インスリン注入ポンプよりなる完全自動制御システムであるベッドサイド型人工β膵細胞を開発した. インスリン注入プログラムは, ブドウ糖刺激に対するインスリン分泌の動特性が, ブドウ糖濃度に対する比例 (ブドウ糖濃度自体) 微分 (ブドウ糖濃度の変化率) 動作として表わしえることを制御理論を用いて証明し, 利用した.
    高血糖の是正, ヶト・一シスの治療, 食後高血糖の抑制などの臨床応用より導かれた本システムの特徴は, 1) インスリン注入率は, 正常人にみられると同様の血漿インスリン濃度をシミュレートするべく規制されており, その結果, インスリン需要量は皮下注射時の約1/2に節約された. 2) 血糖降下時には負の微分動作によりインスリン注入率が制動され, その結果, 低壷糖の発現をみることがない, などであり, 糖尿病患者の血糖計測と, その治療をon-lineで, しかもreal-timeで生理的に制御しえた.
    人工膵β細胞は膵β細胞のインスリン分泌特性を糖尿病患者において再現するものであり, その追求はβ細胞の本質的な機能や病態生理の解明にも役立つものと考えられる.
  • 勝又 一夫, 小林 正直, 下村 吉治, 田中 雅嗣, 勝又 義直, Harold Baum, 小沢 高将
    1979 年 22 巻 4 号 p. 559-563
    発行日: 1979/04/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    tolbutamidcは一定の条件下で肝ミトコンドリアに対して2.4-ジニトロフェノールとよく似た脱共役作用を示すが, 異なっている点も多く, その本態は不明である. われわれは, その機構を解明するために実験を行い以下の結果を得た.
    1) 微量のEGTA (0.1mM) を加え, あらかじめ存在するCa2+の影響を除去した系で, 1mM tolbutamide及び0.3mM Ca2+はそれぞれ単独では, 白ネズミ肝ミトコンドリアの制御呼吸に全く影響を及ぼさないが, 両者の共存によって呼吸は解放され, 脱共役状態となる。
    2) 同様の系で, tolbutamideはCa2+存在下で著明な膨化を引き起こすことが分光分析によって明らかになった.3) tolbutamideを3.8mMとした系では, Ca2+添加なしに脱共役作用を示すが, この系に0.2mMのEGTAを添加すると, tolbutamideの脱共役作用は弱められ, さらに0.4mMのCa2+を添加すると強められた. 一方, 1mM tolbutamideによって見られる呼吸調節比の低下は, EGTAおよびCa2+の添加によってはほとんど影響を受けなかった.
    以上の事実から, tolbutamideは肝ミトコンドリアのCa2+に対する膜透過性を変え, 遊離のCa2+がある程度存在するとCa2+のrecyclingをミトコンドリアの膜で起こすものと推定された.
  • 野中 共平, 工藤 美那子, 鷲見 誠一, 森下 寿々枝, 垂井 清一郎
    1979 年 22 巻 4 号 p. 565-572
    発行日: 1979/04/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    放射標識免疫測定法 (RIA) は, 血中インスリン定量を可能にしたが放射性同位元素を使用するため, 限られた医療研究機関でのみ実施可能であった. 酵素標識免疫測定法 (EIA) は同位元素の代わりに酵素を用いているので, 分光光度計さえあれば, どこの施設でも簡便, 安全, 迅速に実施できる点で優れた方法である.
    私どもはいわゆるサンドウィッチ法によるインスリンEIAキットにつき, 感度, 再現性, 回収率などの諸点を検討した結果, ほぼRIAに匹敵する成績を得た. すなわちヒトィンスリン0~160μU/mlの範囲でインスリン濃度とhorseradish peroxidase反応生成化合物の間に直線関係が成立し, 最低検出濃度は5μU/ml, 0~80μU/mlの範囲で検体血清に添加したインスリンの回収率は平均95%, 検体の2~8倍希釈試験も実測値と期待値がよく一致し, アツセィ内・アツセィ間の変動係数もそれぞれ5および9%であった. 経口糖負荷試験のさい得られた323検体血清につき一抗体法によるRIA値 (X) とEIA値 (Y) の相関を検討し, Y (μU/ml) =7.67+1.22X (μU/ml), 相関係数0.803 (P<0.001) の正相関を認めた. また二抗体法によるRIA値 (X2) とEIA値の間にはY (μU/ml) =0.24+1.01X2, 相関係数0.952 (P<0.001) のきわめて良好な正相関が得られた. 本法の実用上, 検体としては血清を用い, 検体希釈を要するときはインスリン濃度既知のヒト血清を用いる, EIA測定試験管内の血清量を均一化する, の3点が特に重要と思われる.
  • 河盛 隆造, 東堂 龍平, 窪田 耕輔, 森島 豊彦, 山崎 義光, 清水 靖久, 七里 元亮, 阿部 裕
    1979 年 22 巻 4 号 p. 573-576
    発行日: 1979/04/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    We have reported the successful clinical applications of a bedside-type artificial beta cell system in diabetics. However, the ultimate goal of the system is to control the patients' blood glucose over long periods of time. In view of the difficulties in developing a of portable glucose sensor, a small and light pre-programmable insulin infusion pump was devised for clinical use. The time pattern of insulin infusion rate for 24 hr obtained with the aid of an artificial beta cell was pre-programmed in to in the computer, which controlled the pump. The general insulin infusion regimen was as follows: the rate of intravenous insulin infusion for 2 to 3 hr after each meal was about 5 to 8 times B (B=225 μU/kg · min), and the constant rate B was maintained for the rest period.
    It was found that small amounts of intravenous insulin produced adequate glucose homeostasis, far superior to the states induced by much larger doses of subcutaneous insulin. The quality of control was consistent in all the cases studied.
    Thus, as an alternative to the artificial beta cell alone, a combination of the artificial beta cell with a pre-programmable insulin infusion pump was shown to be capable of restoring the circadian blood glucose profiles of diabetics to within the physiological range. This combination is thought to be useful for the long-term treatment of ambulant diabetic patients.
  • 1979 年 22 巻 4 号 p. 577-593
    発行日: 1979/04/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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