Overt diabeyesを合併したバセドウ病患者を臨床的に検討した. 外来通院したバセドウ病患者270例中, Overt diabetesを合併したものは, 7例 (2.6%) であった.
これら7症例の年齢は, 45歳以上の年長者に多い傾向を示し, 全例女性であった.4例に, 糖尿病の遺伝歴がみられた. また, 大部分が, インスリン依存性糖尿病であった. 血中抗甲状腺抗体の出現頻度は高く, とくに, マイクロゾーム試験が, 高抗体価であった. 次に, 3例でバセドウ病の治療前に行われた甲状腺生検の病理組織学的所見で, リンパ球浸潤と炉胞上皮の変性像を示す橋本病の像と, バセドウ病に特徴的な増殖像を示す部分が共存する, いわゆる, Hashitoxicosisであった. 更に, 糖尿病性網膜症の合併は, 検査した6例で, いずれもみられず, また, 蛋白尿も, 全例でみとあられなかった。バセドウ病と糖尿病の発症時期についてみるに, 2症例で, バセドウ病の治療経過中に, 糖尿病が発症した。とくに, 1症例では, Hashitoxicosisの経過中に, 約10ヵ月間で, 50g OGTTにおける血糖曲線は, 著明な糖尿病型を呈し, IRI反応も, ほぼ正常から無反応へ変化し, 重症糖尿病へ急激に移行した. 本症例は, 糖尿病の遺伝歴を有し, 甲状腺ホルモンの過剰が誘因となった, Metathyroid diabetesの臨床例とも考えられるが, その糖尿病の成因に, 甲状腺ホルモンの催糖尿病作用以外の因子の関与も, 否定できなかった。
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