近年, 絶食時の“low T
3 syndrome”の成立には, 食餌性の因子, 特に糖質の重要性とT
4からT
3への転換異常の関与とが指摘されている。そこで著者らは, 絶対的インスリン欠乏によって生体が極端な “糖質飢餓状態” に陥っていると考えられる糖尿病性ケトアシドーシス (以下糖尿病性KA) に注国し, その3女性症例 (21歳, 27歳, 18歳, 共にインスリン依存型糖尿病患者) につき, 甲状腺一下垂体系機能の, 治療による推移を検討した.
(1) KA時, 血中T
3濃度は第1.2, 3症例においてそれぞれ, 34~35, 19~38, 56~64ng/dJと正常域89~177ng/dlに比し著しい低値を示し, T
4濃度もそれぞれ3.5~4.0, 2.3~4.2, 4.7~a9μ9/d1と正常域5.4~12.6μg/dlに比し低値であり, rT
3濃度はそれぞれ, 2q5~22.8, 48.0~54.7, 45.6~48.5ng/dlと正常域15.4~38.2ng/dJに比し高値傾向を示した.KA回復直後には, T
3, T
4は依然としてKA時に近い低値を示した. (2) 良好な斑糖コントロール (GC) が持続した治療開始3~7週後には, これら異常T
3, T
4, rT
3値はすべて正常化した. (3) 血中TSHの, 基礎値は経過中終始正常域にあり, GC時に施行したTRH刺激時の反応性も正常であった.
以上の結果は, KA時及びその回復直後には末梢血中T
3, T
4濃度が低下することを示し, 又, この現象の機序として, 少なくとも末槍組織でのT
4からT
3への転換異常のみが主要因でなく, 視床下部ー下垂体系機能的異常を伴う, 甲状腺自体におけるホルモン合成あるいは分泌が低下している可能性が想定された.
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