糖尿病
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24 巻, 10 号
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  • 岩谷 征子, 田坂 仁正, 平田 幸正, 竹内 正
    1981 年 24 巻 10 号 p. 963-969
    発行日: 1981/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者の膵外分泌機能をみる目的で, 糖尿病患者74名にPFD試験 (BT-PABA速崩錠投与) を施行した。糖尿病のコントロールの良, 不良, 罹病期間, 治療別, 網膜症の重症度に分けて膵外分泌を検討した.
    その結果
    1.正常者の%PABArecovery値は74.9±9.7%であるのに比べ, 糖尿病者は52.9±22.6%と有意に低値であった (p<0.001).
    2.糖尿病推定罹病期間別では5年以上群で%PABArecovery値は42.5±20.3%ともっとも低い値を示した (p<0.001).
    3.PFD試験時の空腹時血糖値別にみた%PABArecovery値はコントロール良群 (空腹時血糖140mg/dl 未満) では53.5±23.6%, 不良群 (空腹時血糖値140mg/d1以上) では50.0±21.5%で後者でわずかに低値であったが, 明らかな差は認めなかった.
    4.糖尿病の治療別の%PABArecovery値は, 食事療法群58.8±21.7%, 経口血糖降下剤投与群55.1±29.6%, インスリン治療群41.9±21.0%とインスリン治療群で最も低値であった (p<0.001).
    5.糖尿病性網膜症の進展度が進むにつれて%PABArecovery値は低値を示す傾向があった.
    以上, 糖尿病の罹病期間, 重症度がすすむほどPFD試験による膵外分泌機能も低下した.
    PFD試験は, 糖尿病患者の膵外分泌機能検査のスクリーニングテストとして応用しうる検査と考えられる.
  • インスリン需要量の日内変動と血漿コルチゾール, 成長ホルモンの推移
    伊藤 景樹, 大野 誠, 斎藤 茂, 景山 茂, 池田 義雄, 種瀬 富男, 阿部 正和
    1981 年 24 巻 10 号 p. 971-977
    発行日: 1981/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病のインスリン治療にさいして, その需要量に及ぼす抗インスリンホルモンの影響については, まだ十分に明らかにされていない.そこで人工膵島 (Biostator ®) を用いて糖尿病者における血糖の日内変動を正常範囲に維持し, 朝食, 昼食および夕食後の高血糖制御に要するインスリン量を算出し, この量と各食前における抗インスリンホルモン (コルチゾール, 成長ホルモン) との関係を検討した.対象は18例の糖尿病者で, 各食事内容を同一とし, 体重1kg当り25~30kcalとした.得られた成績は次のようである.
    (1) 朝食時におけるインスリン需要量は昼食および夕食時のそれを有意に上廻った (P<0.01).
    (2) 朝食前のコルチゾール値は, 昼食前および夕食前の値に比べ有意に増加していた (それぞれP<0.02'P<0.001) が, 各食前の成長ホルモンの値には, とくに有意差を認めなかった.
    朝食前のコルチゾール値の増加と朝食時におけるインスリン量の増加との間に関連性の存在することが示されたことから, インスリン治療にさいしてはコルチゾールの動態にも注目し, 1日の摂取エネルギーに占める朝食の比率, および1日におけるインスリン注射の量的配分に適切な配慮の必要なことが示唆された.
  • 石田 正矩, 小川 正, 水野 信彦, 馬場 茂明
    1981 年 24 巻 10 号 p. 979-988
    発行日: 1981/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    若年発症糖尿病患者 (JOD) 21例 (発症初期で, ケトージスを示し, かつ, インスリン使用前のインスリン依存性糖尿病症例8例, 発症後2年以上経過したインスリン治療症例13例), 成人発症糖尿病患者 (MOD) 21例 (非インスリン治療例12例, インスリン治療例9例), 対照として同年代健常者25例 (若年者17例, 高齢者8例) に試験食摂取後の血糖, IRI, 血漿hPP値を測定した.
    1.健常者におけるhPP分泌反応は摂食直後と60分以後に頂値を示す二相性反応がみられ, これらは加齢に伴って有意の高反応を示した.2.糖尿病患者においては病態別にそれぞれ特有のhPP分泌パターンがみられた.すなわち, JOD発症初期例では健常者に類似した分泌パターンを示したが, 有意に高反応であった。また, JODインスリン治療中の経過例ではhPP分泌量は発症初期例に比べて有意に低下し, 分泌パターンは一相性反応を示した。さらに, 長期経過した不安定糖尿病症例3例はほとんど無反応であった.MODにおいては, 非インスリン治療例では健常者にほぼ類似した分泌パターンを示したが, 糖尿病性神経症を合併した症例では第一相反応が有意に遅延する一相性分泌反応を示した.
    このように糖尿病患者におけるhPP分泌反応は糖尿病性神経障害やPP細胞機能状態を反映し, JODとMODでは臨床経過により, それぞれ異なった分泌動態を示すことは, それらの発症機序や病態の相違によるものと考えられる.
  • 老籾 宗忠, 石川 和夫, 川崎 富泰, 窪田 伸三, 高木 潔, 丹家 元陽, 吉村 幸男, 馬場 茂明
    1981 年 24 巻 10 号 p. 989-994
    発行日: 1981/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    Hemoglobin AI (HbAI) の分画測定を高速液体クロマトグラフィーを用いて行った.特に溶媒中のKCNを除去して測定しうるようにpHを調整し, HbAIをHbAIa+bおよびHbAICとして分画測定した.
    健常老に比較して, 糖尿病患者では, HbAI中に占めるHbAIC分画が多く, 腎不全患者ではHbAIa+bおよびHbAIC分画が共に増量することにより, HbAI分画比としては健常者と同様なパターンを示した.
    老若赤血球のHbAI分画をみると, 老化赤血球ではHbAIa+b分画に比較してHbAIc分画が多くみられた.
    急速なグルコース濃度の変化によって変動するHbAIは主としてHbAICであることが判明した.
    以上種々な病態で, HbAIの分画測定の必要な場合があることを指摘した.
  • 川東 正範, 中林 肇, 柳瀬 英明, 宮元 進, 今村 順記, 瀬田 孝, 坂戸 俊一, 吉光 康平, 竹田 亮祐
    1981 年 24 巻 10 号 p. 995-1002
    発行日: 1981/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    近年, 絶食時の“low T3 syndrome”の成立には, 食餌性の因子, 特に糖質の重要性とT4からT3への転換異常の関与とが指摘されている。そこで著者らは, 絶対的インスリン欠乏によって生体が極端な “糖質飢餓状態” に陥っていると考えられる糖尿病性ケトアシドーシス (以下糖尿病性KA) に注国し, その3女性症例 (21歳, 27歳, 18歳, 共にインスリン依存型糖尿病患者) につき, 甲状腺一下垂体系機能の, 治療による推移を検討した.
    (1) KA時, 血中T3濃度は第1.2, 3症例においてそれぞれ, 34~35, 19~38, 56~64ng/dJと正常域89~177ng/dlに比し著しい低値を示し, T4濃度もそれぞれ3.5~4.0, 2.3~4.2, 4.7~a9μ9/d1と正常域5.4~12.6μg/dlに比し低値であり, rT3濃度はそれぞれ, 2q5~22.8, 48.0~54.7, 45.6~48.5ng/dlと正常域15.4~38.2ng/dJに比し高値傾向を示した.KA回復直後には, T3, T4は依然としてKA時に近い低値を示した. (2) 良好な斑糖コントロール (GC) が持続した治療開始3~7週後には, これら異常T3, T4, rT3値はすべて正常化した. (3) 血中TSHの, 基礎値は経過中終始正常域にあり, GC時に施行したTRH刺激時の反応性も正常であった.
    以上の結果は, KA時及びその回復直後には末梢血中T3, T4濃度が低下することを示し, 又, この現象の機序として, 少なくとも末槍組織でのT4からT3への転換異常のみが主要因でなく, 視床下部ー下垂体系機能的異常を伴う, 甲状腺自体におけるホルモン合成あるいは分泌が低下している可能性が想定された.
  • 栗原 義夫, 黒田 義彦, 皆上 宏俊, 小森 克俊, 熊野 博之, 中山 秀隆, 中川 昌一
    1981 年 24 巻 10 号 p. 1003-1007
    発行日: 1981/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    インスリノーマの診断には従来分泌刺激試験が多く用いられてきたが, 偽陽性や偽陰性を示す例が少なくなく, しかも極めて強い低血糖発作を惹起する危険性もあり必ずしも満足できる検査法とはいいがたい.インスリノーマ診断の基本は腫瘍細胞の自律的なインスリン分泌状態を発見することにあると考えられる.この目的にはインスリン分泌刺激試験よりインスリン分泌抑制試験の方が適していると思われる.
    そこで著者らはインスリン負荷による低血糖に対するインスリノーマの内因性インスリン分泌抑制能をみる目的で, 4名のインスリノーマと8名の健常者でactrapid insulinを筋注し血糖を下げつつ, その血糖値と内因性インスリン分泌の1つの指標である血清CPRを測定した。健常者では血糖値の低下にともなってCPRの分泌抑制がはっきり認められたが, 4名のインスリノーマではいずれもその血糖値に比しCPRは高値を示し, 健常者に比べ明らかに分泌抑制が認められなかった.しかし腫瘍摘出後には4名とも健常者と同様な著明な分泌抑制が認められた.また本検査法は一定量のインスリンにより血糖を緩徐に低下させるため刺激試験のような急激な大量のインスリン分泌による強度の低血糖を惹起する危険性がない.
    以上より本検査法は安全で, より特異性の高いインスリノーマの確定診断法の1つとして有用と思われる.
  • 冠動脈造影所見からみた冠硬化の病型に及ぼす耐糖能異常と冠危険因子の関連について
    市原 利勝
    1981 年 24 巻 10 号 p. 1009-1017
    発行日: 1981/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    糖尿病が冠硬化の危険因子であることは既に知られているが, 冠動脈造影からみた冠硬化の病型と耐糖能異常や他の冠危険因子の関連については十分明らかにされていない.今回著者は, 虚血性心疾患の代表である心筋梗塞症患者を対象にこれらの関係を検討した.
    (1) 対象は診断が確立し, 冠動脈造影上有意病変を有する心筋梗塞症56例 (平均年令54才) とし, 冠危険因子の比較には人間ドック受診者90例を用いた.
    (2) 対象を障害血管数別に3群に分け, OGTTにおける血糖値で比較すると各群で差がなく, 境界型55%, 糖尿病型27%と耐糖能異常者は高率であった.各群共平均10%が臨床的糖尿病であったがいずれも軽症例であった.糖尿病型の占める頻度は50才以上で対象群より有意に多く, しかも加令とともに増加した.冠狭窄の様式を限局型, びまん型に分け比較しても耐糖能異常の内訳に差異はない。冠危険因子の保有率は, 喫煙 (62%), 高血圧症 (49%), 高コレステロール血症 (32%), 肥満 (29%), OGTTの糖尿病型 (28%) の順にいずれも対照より有意に高く, 多枝障害例でより高率であった.
    (3) 冠危険因子の相互の関連についての定性回帰分析では, 1枝障害群においてのみ耐糖能異常が独立して冠狭窄に影響していた.
  • 松永 浩, 山東 博之, 布川 朝雄, 村上 徹, 宮川 侑三, 小坂 樹徳
    1981 年 24 巻 10 号 p. 1019-1025
    発行日: 1981/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    我々は造影剤を用いた頭部CTスキャン実施後, 急性腎不全を生じた糖尿病性腎症の2症例を経験した.症例1は62才男, 25年間インスリン治療を受けていたが, 意識消失痙攣発作を主訴として入院.入院時糖尿病性網膜症ScottIIIbを認め, 血中BUN37mg/dl, Creatinine4.1mg/dlと高値を示した.頭部CTスキャン実施後乏尿を来し, 血中BUN106mg/dl, Creatinine7.7mg/dlと上昇, 急性腎不全に至った.
    症例2は49才男, 15年間糖尿病に罹患していたが労作時呼吸困難を主訴に入院.入院時肺野湿性ラ音・糖尿病性網膜症Scott IV及びIIbが認められ, 血中BUN32mg/dl, Creatinine2.3mg/dlであった.頭部CTスキャン実施後乏尿が出現し, BUN112mg/dl Creatinine 7.5mg/dlと上昇した.2例共, 3日後には尿量回復し, 血中BUN, Creatinineも徐々に元の値に回復したが, 急性腎不全の原因として, 陰影増強のために用いられた造影剤が考えられた.CTスキャン後に生じた急性腎不全は諸外国に11報告例を数えるのみであるが, 経静脈腎盂造影の約2~6倍のヨード造影剤が陰影増強剤として用いられる事を考えると実際はもっと多くの急性腎不全発生があると思われる.我々の2症例を含めると13例のうち糖尿病患者は8例にのぼった.したがって, 糖尿病性腎症の患者にCTスキャン等の造影剤を用いる検査を実施する際, 造影剤の使用に注意する必要がある.
  • 1981 年 24 巻 10 号 p. 1027-1045
    発行日: 1981/10/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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