糖尿病患者における血管障害, 特に動脈硬化性血管障害の成因について, 名古屋大学医学部第三内科糖尿病外来にて, 5年以上経過を追跡し得た526名を対象とし, 臨床的観点から, 種々検索を加えた.
1) 心電図異常, 網膜症共に, 非肥満群に比し, 肥満群で出現頻度が高かった (p<0.02). 前者は, 加齢に, 後者は, 罹病年数に相関したので, 年齢を41-60歳, 罹病年数は11-15年に限定した症例で比較すると, 網膜症は, 肥満, 非肥満両群で差を認めなかったが, 心電図異常は, 肥満群に頻度が高かった. また, コレステロール正常, 血圧正常の者のみで比較しても, 同様の傾向がみられた. 2) 治療方法別の検討では, 心電図異常は, 肥満群で, 薬物療法群 (経口剤もしくは, インスリン治療群) に高頻度であり, 非肥満群では, 食事療法群との差は, 認めなかった. 網膜症は, 肥満, 非肥満両群共, 食事療法群よりも薬物療法群で高頻度であった. 3) 心電図異常は, コントロールの良否で差はないが, 網膜症は, 肥満, 非肥満両群共, コントロール不良の者に頻度が高かった.
以上の事実は, 糖尿病患者における動脈硬化性血管障害の成因には, 肥満, すなわち, hyperinsulinismさらに内因性, 外因性高インスリン血症を助長するような因子が, 深く関与している可能性を示唆している.
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