我々は, SH基を有す薬剤を服用した患者に発症したインスリン自己免疫症候群の2例を経験した.症例1は, 52歳女性で昭和55年6月α-mercaptopropionyl glycineを4日間服用後, 約3週間で低血糖昏睡が頻発するようになった.8月の入院時100gGTTでは糖尿病型であった.total IRIは800~3,760μU/ml, freeIRIは14~96μU/ml, freeCPRは0~22.5ng/mlの間を変動し,
125I-IBCは75%と高値であった.10月からプレドニゾロン30mg投与を開始したところ, 低血糖発作は消失し, total IRI, total CPRの低下も同時にみられ, 著効を示した.症例2は昭和54年2月胃癌で胃全摘後, glutathioneを服用していたが, 経過は順調であった.昭和55年10月, 意識消失発作が頻発した.100gGTTは糖尿病型からoxyhyperglycemia型へ変化し, その時, total IRIは140~1,065μU/ml, freeIRIは2~72μU/ml, freeCPRは0.9~10.7ng/mlの間で変動し,
125I-IBCは80%と高値であった.対症療法で12月には自然緩解した.specific precipitation methodによるインスリン抗体の分析では, 症例1はIgG, KapPa型, 症例2はIgG, KapPa, Lambda両型といえた.HLAは, A11, B15, Cw3, Cw4が共通していた.freeCPRの成績から, 本疾患発症には, インスリン抗体の存在と, 膵B細胞機能充進が必須条件と考えられた.
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