糖尿病患者80名を治療法別に食事療法群27名, 経口血糖降下剤群29名, インスリン群24名に分け, HDL亜分画コレステロールに影響を及ぼす因子としで性, 年齢, 治療法, 肥満度, 空腹時血糖, 心電図, 喫煙量, 飲酒量, LDL・C, VLDL・C, VLDL・TGの11項目につきStepwise法による重回帰分析を行い以下の成績を得た.HDL
2・Cは食事療法群では健常者に比してまた, 経口剤群ではインスリン群に比して有意に低下しており, 一方HDL
3・Cは食事療法群, 経口剤群ともインスリン群に比して有意に上昇していた.HDL
2・Cには性 (すなわち女性が男性に比して高値) は有意の正の, 肥満度は有意の負の相関を示し, HDL
3・Cには飲酒量, LDL・Cが有意の正の相関を, また治療法 (すなわちインスリン群く経口剤群く食事療法群の順に高値), VLDL・Cが有意の負の相関を示した.そこで性, 年齢, 肥満度, 全血清, VLDL, LDL分画中の各脂質をマッチさせて検討すると男女とも経口剤群はインスリン群に比してHDL
2・Cは有意に低値であった.糖尿病患者ではリポタンパク代謝の停滞 (中間比重リポタンパクの増加) がありその結果としてHDL (特にHDL
2) コレステロールの低下がおこると考えられるが経口剤のHDL代謝への直接的な作用やアポタンパクへの影響も検討が必要と考えられる.
抄録全体を表示